残業ゼロなのに年収600万円?”幸せ食堂”の秘密:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(毎週火曜夜10時)。6月25日(火)の放送では、シリーズ「人生が変わる働き方」第1弾として、"ブラック"と言われる飲食業界にスポットを当て、「長時間労働」や「低賃金」に抗う1人の女性を追う。

残業ゼロでも行列ができる仕組み

京都に、1日限定100食を昼前に売り切る食堂がある。店名は「佰食屋(ひゃくしょくや)」。7年前にオーナーの中村朱美さん(34)が開店した。

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客の目当ては、分厚い上質な国産牛肉とフライドオニオンなどをご飯にのせた「国産牛ステーキ丼」(税込1080円)だ。お客の満足度が高く、店の前には開店2時間前から行列ができる。

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なぜ高品質で低価格が実現できるのか。秘訣は大量購入と廃棄率の低さにある。肉は一括して仕入れることで価格を抑え、繊維が固い部分はひき肉にして「ハンバーグ定食」(税込1080円)にするなど、無駄を出さない。

一般的に飲食店の原価率は約30%と言われているが、同店はそれを大きく上回る48%。100食を売り切れば食品の廃棄はほぼゼロに...だからこそ実現できる数字だ。中村さんは「佰食屋 肉寿司専科」(京都市)など、100食限定の店を3店舗まで拡大し、仕入れ価格をさらに下げる仕組みも怠らない。

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このやり方は、従業員の意識にも大きく影響している。「100食を売り切れば営業は終了」とゴールが明確なため、集中して労働に臨むことができるという。従業員の出社時間は朝9時で、毎日夕方6時前には退社。残業はゼロだ。中村さんの取り組みは大きな注目を浴び、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019大賞」(日経ウーマン)など数々の賞を受賞している。

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100食限定の店の一つ「肉寿司専科」の店長・廣瀬健太郎さんは、以前は大手ビデオレンタルチェーンで働き、残業続きだった。しかし現在は育児にも積極的に協力するなど、家族団らんの時間を持つことができている。

残業ゼロは、オーナーである中村さん自身にも影響を与えた。脳性まひで右半身をうまく使えない3歳の長男を京都の医療福祉センターへ連れて行き、リハビリに立ち会う時間も作ることができている。「きちんと向き合える時間と肌で触れ合える時間があるのは、子どもが幼いときには良かったかなと思う」と中村さんは話す。

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「飲食店は絶対やったらあかん」両親の教え

中村さんはレストランに勤務する両親のもとに生まれた。残業で遅く帰宅する父親は、中村さんに「飲食店とかサービス業は絶対やったらあかん」と強く忠告したという。大学卒業後は学校法人で広報の仕事を担当し、2011年に不動産会社に勤める剛之さんと結婚。子どもの頃から料理人になるのが夢だったという剛之さんの作ったステーキ丼を食べた中村さんは「こんなおいしいものが世の中にあるのか!」と衝撃を受け、親から反対された飲食業への転身を決意。

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「どうせやるなら、自分で働きたいと思えるシステムの店にしたい」と、2012年11月に同店を開店。失敗したら中村さんは塾講師、剛之さんはタクシー運転手として働き、1年後にはサラリーマンに戻ろうと決めていた。「100食限定」のユニークなコンセプトも「それだけ売れたらいいよね!」と"適当に決めた"という。

最初は苦戦が続き、500万円の資金はあっという間に底をついてしまう。預金通帳の残高が1000円台になったことも。

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そんな苦しい日々の中、ふと思い立ってステーキ丼の盛り付けを変えてみたところ、ネットで話題を呼び、客が殺到。行列ができる人気店となった。

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新たな挑戦は「残業ゼロで年収600万円」

中村さんの夢は、この会社をできるだけ続けていくこと。そのために、新たなコンセプトの飲食店を考案している。そのコンセプトとは、なんと「1日6時間働いて年収600万円を稼ぐ」という大胆なもの。

新たな店の名前は「佰食屋1/2」。これまでの100食の半分、50食限定の店を夫婦が運営するプランだ。中村さんは、このスタイルの店を「働き方のフランチャイズ」として、全国展開したいと考えていた。

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「忙しくて家族の時間が持てない子育て中の夫婦にこそ残業ゼロの店を経営してほしい」。中村さんの熱意に動かされ、興味を持つ人たちが現れた。岩手県花巻市の地元スーパーに勤める2児の父・小山秀人さんもその1人だ。子どもは3歳と1歳。小山さんは「お金よりも(子どもと)一緒にいる時間が必要」と考え、フランチャイズに参加することを検討。小山さんの妻は「朱美さんが1つの道を示してくれた。その波に乗りたい」と期待を寄せる。年収600万円を確実に稼ぐためにも、家賃やメニュー開発など、課題は目白押し。これまでにないコンセプト店「佰食屋1/2」の1号店を開くための挑戦が始まった。

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苛烈な労働環境が表面化し、"ブラック"と言われることもある飲食業界。「売り上げ第一主義」とは異なる令和時代のあり方を伝える「ガイアの夜明け」は、今晩10時から放送。どうぞお見逃しなく!

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