ゴミの話でベストセラー!その裏には有吉が? “ゴミ清掃”芸人ことマシンガンズ・滝沢秀一さん

公開: 更新: テレ東プラス

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ゴミ清掃員のあるあるネタで注目されている芸人をご存知だろうか?お笑いコンビ マシンガンズ滝沢秀一さんは、芸人としての苦しい生活を打破するため、ゴミ収集会社に就職。その体験や気づきを綴ったツイッターが話題を呼んでいる。

著書『このゴミは収集できません ~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』(白夜書房)がベストセラーになると、5月30日に発売された漫画『ゴミ清掃員の日常』(講談社)は発売前から予約が殺到。取材や出演のオファーが相次ぎ、かつての人気を上回るほどの快進撃を続けている。

そこで今回は滝沢さんが、どうやって"ゴミ清掃芸人"として再ブレイクしたのか。そのいきさつを伺ってきた。

人気が低迷し生活苦へ。9社でアルバイト不採用

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――マシンガンズとして色々な番組で漫才を披露されていましたが、一番売れていると感じたのはどんな時ですか?

「色々なネタ番組に出してもらって営業へ行った時に、自分たちしか出ないのにたくさんの人が集まってくれたり、子どもたちが『MAXめんどくせーの人だ!』と言ってくれたり。そういう時には、『やっとお笑い1本で食えるようになったんだ』と本当に嬉しかったですね」

――マシンガンズの漫才は、二人ともボヤいてツッコんでいくスタイルが斬新ですよね。

「たまにウケたりするんですよ、神様って残酷ですね(笑)。でも一時期人気があっても、出ていた番組が終わったりすると、自分たちを知っている人が段々と少なくなっていくんですよ。しかも、いきなりじゃなくて徐々になくなっていくから辛いんです。何となく気付いていても、知らないふりをしたりして。ゆっくりと真綿で首を絞め上げられるように、『やばいぞ、やばいぞ』と思っているうちに、気がつくと息もできなくなる感じです」

takizawashuichi_20190618_02.jpg▲『ゴミ清掃員の日常』より

――芸能界の厳しさを感じます。その頃は生活的にかなり苦しかったのでしょうか?

「自分たちだけならまだ良かったんですけど、36歳のときに奥さんが妊娠したんですよ。その前に妊活をしていたので、『ヤッター! 子どもができたー!......でもお金がない』という感じでした。お金の無さでいったら、そのときが一番なかったと思います。それで芸人以外の仕事を必死に探しました」

――どんな仕事をしようと思ったのですか?

「工場、カラオケ、コンビニ、居酒屋など、年齢不問と書いてあるところ9社ぐらいに『アルバイトをさせてください』と電話をかけました。でもその時の年齢が36歳だったんです。なので35歳までの年齢制限にことごとく引っかかってしまって......。この年になるとアルバイトも受からないんだとショックでしたね」

――そこからゴミ清掃員として働くようになったのは、どのようないきさつで?

「仕事がなくて困っていた時に、ふと思い出したのはお笑いをやめた知り合いのことです。就職している仲間の紹介でアルバイトをできないかなと思って。それで最初に電話したのが、たまたまゴミ清掃員だったんです。働けるのか確認したら、すぐに働けるということでお願いしました」

ゴミ清掃員の仕事がスタート! 目の毛細血管がブチ切れる

takizawashuichi_20190618_03.jpg▲『ゴミ清掃員の日常』より

――今まで芸人としてやってきて、いきなりゴミ清掃の仕事を始めるのはすごいですね。

「その頃はまだまだ芸人が本業だったので、『これで芸人が続けられる!ラッキー!』みたいに思っていましたね。そこまで15、16年やっているので、お笑いの仕事以外は分からないんですよ。お笑いで一発当てようではなくて、『お金があればお笑いができる』というよく分からない感覚になっていました」

――ゴミ清掃員の仕事を始めて、マシンガンズの相方・西堀さんの反応は?

「最初はお笑いに集中して欲しいということで、内心嫌がっていたかもしれませんが、家族のこともあるので、そんなに言われなかったような気がします。働き始めてからは、ハードワークなので、目を真っ赤にしてライブに行っていました。あまりに赤いので、何かの病気かなと不安になって調べたら、体じゅうの毛細血管が切れて、最後に切れたのが目だったみたいなんです!何かの病気の初期症状じゃないかと心配していたんで、『あ〜助かった〜』という感じですね」

――重症に至らなくて本当に良かったです!

「それまでが本当に自堕落な生活だったので、今までのツケが一気に来ちゃったんだと思います。清掃員の仕事は、始業前にアルコールチェックがあるので、酒も飲まなくなりました。健康になって人間まるごと変わった感じです」

――働き始めていかがでしたか? 臭いなどが気になったりするのでしょうか?

「『ゴミって臭いでしょ?』とよく聞かれるんですが、30分くらいで慣れます。人間の適応能力はすごいですよ、臭いに耐えられなくなると人間の鼻は適応していくんです。だから作業中はそんなに臭いとは感じないんですけど、清掃会社に戻ってほかの可燃の清掃車とすれ違うと『くせっ!』と思います。しばらくすると慣れるっていう意味では、親戚の家や友達の家の匂いのようなものなのかもしれませんね」

takizawashuichi_20190618_04.jpg▲『ゴミ清掃員の日常』より

――なるほど、その感覚はなんとなく分かります。あと夏は暑くて大変じゃないですか?

「そうですね、夏はペットボトルが多いので大変です。朝8時から回収を始めて、18時を過ぎて終わらないこともありますし。その地域のゴミを全部回収しないと帰れないので。真っ暗になって何にも見えないなかで回収をするのは、なかなか骨が折れます。あと大変さで言えば、雨の日の濡れたダンボールですね。朝から降っていれば、皆さんがダンボールを出さないので問題ないんです。でもきついのは、皆さんが出してから雨が降ってきたとき。かなりの量がありますし、たっぷり水を含んでいて重いですから」

有吉弘行さん&伊集院光さんのバックアップで再ブレイク!?

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――2018年には著書『このゴミは収集できません ~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』を出されていますが、そのきっかけは?

「以前からTwitterをやっていて、『雨の日のダンボールは重い』みたいにゴミ清掃のことを何気なく呟いたことがあったんです。そうしたら有吉さんがリツイートしてくれて。嬉しくて次の日もゴミ清掃のことを書き込んだら、またリツイートしてくれたんです。『有吉さんが喜んでくれるなら』と思って続けているうちに、どんどんたくさんの方に読んでいただけるようになって。1ヶ月ぐらい経ったときに、出版社の担当の方からTwitterにダイレクトメールで出版のお話をいただきました」

――今まで知らなかったゴミのことを詳しく知ることができて面白かったです! 出版には有吉さんの影響も大きかったんですね。

「それはもちろん! この間、有吉さんに本のことなどを話したら、『まだ俺の名前が足りない。一つの取材につき5回出せ』と言われました。なので、ここから有吉さんの名前を5回ぐらい書いておいてください(笑)」

takizawashuichi_20190618_06.jpg▲『ゴミ清掃員の日常』より

――有吉さんからもらったアドバイスは他にもありますか?

「そうですね、最初は『ゴミ清掃員あるある』ということでTwitterを始めたのですが、『あるあるっていうのはちょっと弱いな。なんかオリジナルのタイトル考えろよ』とか。他にも『こっちの方向はみんな興味持ってないな、別の方向でもっと書けよ』などのアドバイスもいただきました。実はこの本の帯を書いてくださるようにお願いしたのですが、『俺が書いてもいいけど、芸人の先輩と後輩でやってるような印象になっちゃうから』と、ちゃんと書いてもらえる別の人を探すように言われたんです。そのおかげもあって、たくさんの人に読んでいただけて嬉しいです」

――ゴミの話でベストセラーはすごいですよね。本の帯は伊集院光さんが書いていますが、普段から交流があったんですか?

「いえ、全く。たまたま伊集院さんのラジオにリスナーが『滝沢のTwitterが面白かった』というメッセージを送ってくれて、伊集院さんがその場で調べて見てくれたんです。そこで『これは面白いわ!』と気に入ってもらえて。なので、ほとんど面識は無かったんですが、ダメもとで『帯をお願いできませんか?』とお願いしてみたんです。そうしたら『滝沢くんならいいよ』とOKをいただけて。伊集院さんのおかげで、年輩の方にも読んでもらえるようになりました」

チャレンジに年齢は関係ない! 夫婦で作り上げた漫画作品

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――ゴミ清掃の仕事を始めて、一番良かったと思うことはどんなことですか?

「僕にとっての居場所を作ってくれたことが、何よりありがたいですね。お笑いの世界はいろんな人が切磋琢磨して、何とか上に行こうとするので、なかなか落ち着いていられないんです。みんな自分のポジションを探すけど、ライバルは多いし、才能のある人はたくさんいるし。その点、ゴミ清掃を始めてからは、ライブで滑っても『明日ゴミ回収あるからいいや』と余裕が出てきました。逆にゴミ清掃で嫌なことがあったら、『ライブのフリートークで喋ろうかな』と思えますし、良いバランスですね」

――5月30日に出版された漫画『ゴミ清掃員の日常』は、夫婦での共同作品とお聞きしましたが。

「僕が構成とネームを担当して、奥さんが絵を書いています。最初は僕が絵も書くように言われていたんですが、あまりの下手さに無理だとなりまして(笑)。そのときに思い出したのが、ウチの奥さん。家の中で『これをチンして食べてね』みたいにメモを置くのですが、そこに書いてあった猫の絵などのイラストが可愛かったんです。なので、もしかしたら描けるんじゃないかと。とはいえ、イラストも漫画もやったことのない素人なので断ると思っていたんですけど、やるかどうか聞いてみたら『やる!』と即答(笑)。そこから絵の勉強をしながら、一年くらいかけて今のイラストを書き上げました」

takizawashuichi_20190618_08.jpg▲『ゴミ清掃員の日常』より

――すごい! 素人の絵には、とても思えません!

「僕はそこまで上手さは求めていなかったんですが、本人の中でどんどん求めるようになって。奥さんは僕の6歳上なんですけど、全くの素人が1年ぐらいで120ページの漫画を書き上げました。何を始めるにも遅すぎることはないと思いますね。それにありがたいことに、夫婦の会話が増えました。奥さんの機嫌を損ねて漫画の進行が遅くならないように皿洗いをしたり、色々と気をつけていたりしましたけど(笑)」

――テーマとしてはどんなことを考えていたのですか?

「最初なので『ゴミ清掃員はこんな仕事なんだよ』ということを分かりやすく紹介しています。読んでくれた人が少しでもゴミのことを考えるようになってくれたら、一番嬉しいですね。今までゴミについて何も考えてなかった人が、例えば僕のことを思い出してくれて、『あの人が困るかもしれないから、(ゴミのことを)ちょっと気をつけてみようかな』と思ってくれたら最高ですね」

――この本を読んでもっとゴミのことを知りたいと思いました! 続編も楽しみです!

「次はもっとゴミの分別のことなども書いてみたいと思います。それに、ウチの奥さんはかなり面白い人生を歩んできているので、それを書いても面白いのではないかと。シングルファザーの家庭で育ったのですが、ある日突然父親がフィリピンに行って自分たちが取り残されてしまったり、なかなかすごい人生を送っていて。今回の本が売れたら、漫画というかたちで出すのもありかなと思います」

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【プロフィール】
滝沢秀一
1976年、東京都生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2012年、定収入を得るために、お笑い芸人の仕事を続けながらもゴミ収集会社に就職。ゴミ収集中の体験や気づきを発信したツイッターが人気を集め、話題を呼んでいる。
Twitter : @takizawa0914

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