ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。
今回番組が訪れたのは、ポーランドの首都・ワルシャワにあるラーメン店「ヤッタラーメン」。味噌ラーメンが人気で、ワインと共に楽しむオシャレな食べ物として親しまれています。
笑顔で迎えてくれたのは、整った顔立ちが印象的な「ヤッタラーメン」の経営者・マルチンさん(47歳)。
ニッポンのラーメンがお好きなのかと思いきや、実はラーメン以上に夢中になっているものが...。それは、「炊き込みご飯」。マルチンさんは、独学で炊き込みご飯を作っています。
使う具材の一つはドイツ産のごぼう。今回は見た目が太いものと細いものが手に入りました。
さらに手作りの豆腐を買い、自宅で油揚げを作って具材にします。マルチンさんがお友達を招いて炊き込みご飯作りを始めると、スタッフは、ごぼうがニッポンのごぼうと違うことに気付きます。皮を剥いているうちにネバネバ。すりおろすとやはり山芋のような粘り気が...(笑)。
実はこれ、西洋黒ゴボウといってニッポンのごぼうとは違うもの。そのことを知り、ショックを受けるマルチンさんですが、今回はそのまま作り続けることに。だしも煮干しと昆布で取り、油揚げは豆腐をフライパンで焼いて、お湯でしっかり油抜きしてから刻みます。そして完成した炊き込みご飯がこちら!
なかなかの出来栄えで、味もお友達には好評。そこで、「ニッポンでイチから作り方を学び、炊き込みご飯のお店を出してポーランドの人に食べて欲しいです!」と夢を語るマルチンさんをニッポンにご招待!
目利き・白洲正子も愛用した黒鍋
ニッポンに到着したマルチンさんは「炊き込みご飯は土鍋で炊くと美味しくなると聞いたので、一度味わってみたい」とコメント。早速土鍋の産地・三重県伊賀市に向かいます。江戸時代から土鍋の生産が始まり、今や日本屈指の土鍋の里として知られている伊賀市。
マルチンさんの熱意を伝えたところ、伊賀焼の窯元で、江戸時代から300年も続く圡楽窯(どらくがま)の八代目・福森道歩さんが快く受け入れてくださいました。
圡楽の土鍋は多種多様で、使う用途によって形が異なります。
福森さん曰く、ご飯を炊くには、対流が起こりやすい底の丸い土鍋が米をむらなく炊き上げる効果があり最適とのこと。
圡楽の代表作は40年のロングセラーを誇る「黒鍋」。耐熱性に優れ、ステーキも焼ける土鍋です。すべて手作りのため、時には2年待ちも当たり前! 道歩さんの父・七代目の福森雅武さんが黒鍋の生みの親で、目利きとして知られる随筆家・白洲正子さんも愛用していたそうです。
ごはんを最高の炊き上がりにする土鍋の秘密
伊賀の土は、400万年前、琵琶湖の底にあったもので、木くずや微生物などの有機物を多く含有。この土で土鍋を焼くと有機物が燃え尽き、中に無数の空洞ができます。火にかけると、空洞の空気が温まって熱を蓄えるため、食材にゆっくりと火が通り、旨味が引き出されるのです。
土鍋作りで欠かせないのが、「菊練り」という粘土の空気を抜く作業。中に空気が残っていると焼いた時に膨張して割れてしまうそう。菊練りは熟練の職人技ですが、今回はマルチンさんも挑戦してみることに。
しかしマルチンさん、なかなかうまく練ることができず、粘土はいびつな塊になってしまいました。
その日の午後、福森さんの自宅の台所へ。そこにはごぼうが置いてあり、福森さんがご飯を作る準備をしていました。早速ごぼうを手に取るマルチンさん。「ニッポンのごぼうは真っ直ぐなんですね!」と、とても驚いた様子。
実は福森さん、土鍋を使った料理本を手掛けるプロの料理人でもあるのです! 陶芸家でありながら土鍋料理を熟知した福森さんが、炊き込みご飯の極意をマルチンさんに伝授してくださることに。
素材を重視!土鍋で作る究極の炊き込みご飯
調味料が入るとお米は水を吸わないので、2時間以上浸水させないといけないそう。今回使うお米は、自家製。福森さんは、自分の田んぼでお米を育てています。「半農半陶」と言う言葉があり、昔は陶芸家でも「半分は農業をやる」という時代がありました。
まずは基本の「五目炊き込みご飯」から。お米に昆布だし、塩、酒、みりん、醤油を加えます。さらに具材の鶏肉、ニンジン、油揚げ、ごぼうを加えますが、真ん中は火が通りにくいので、窪みを作ることが必須。
そして一番大切なのが火加減。最初は弱火に5分ほどかけ、土鍋全体を温めます。フタが軽い場合は上からバットなどを置いて重しにし、5分経ったら一気に強火にします。「土鍋を使うとなぜ料理が美味しくなるんですか?」と素朴な疑問をぶつけるマルチンさん。
これに対して福森さんは、「食材が美味しくなるのは60℃で、土鍋はその温度を保つ時間がすごく長いんです。だから、旨味を引き出しながら炊くことができるんです」と教えてくださいました。旨味成分であるアミノ酸やイノシン酸がよく出るのは50~60℃。土鍋はその温度をキープしやすいので、旨味を十分引き出せるのです。これを聞き「絶対土鍋を買って帰ります!」と意気込むマルチンさん。
しばらくして土鍋から蒸気が上がったら、今度はごく弱火にして13分。最後に10秒だけ強火にし、余分な水分を飛ばすことでおこげを作ります。
5分間蒸らせば、土鍋の五目炊き込みご飯の完成です!
何度も大きく息を吸い込んで香りをたしかめるマルチンさん。香りを胸いっぱいに吸い込んでから食べ始めます。
黙々と食べ続けるマルチンさんから、やっと「作り方は簡単なのに最高の味です。一粒一粒が立っているのにまとまっています!」との感想が。
福森さんも「そうなんです! やっぱりすごいですね! (お米が)潰れないんですよ。弾力があってべちゃっとならない」と嬉しそう。その後も、マルチンさんの食べる勢いが止まりません!(笑)
続いては「ごぼうの炊き込みご飯」をいただきます。具材はごぼうだけですが、その上に揚げたごぼうをつけ合わせとしてのせるので、香りが倍増。
「素晴らしい!」とつぶやき、あとはひたすら黙々と食べるのがマルチン流(笑)。箸が止まることはなく、何度も揚げたごぼうを追加しては完食していきます。
ごぼうの味を堪能したマルチンさんは「土鍋が素材の味を最大限に引き出す。そのことを実感しました」とすっかり虜になったよう。
お次は、「たけのこの炊き込みご飯」。具材はたけのこのみですが、生の花山椒を添え、爽やかな香りと辛味をプラス。「花山椒の刺激で味に変化が生まれ、食欲が湧いてきます」と美味しそうに味わいます。花山椒は時期しか食べられないもので、3日もするとダメになってしまうそう。
ニッポンでは旬の食材を食べることを大事にしており、一番先に出たものを食べると長生きするといわれている、と福森さんから教えていただきました。
三つ葉と相性抜群!土鍋で作った地鶏のすき焼き
夕食は、福森さんの窯で働く職人さんといろりを囲んでいただきます。土鍋で作った地鶏のすき焼きは、炒めた地鶏に三つ葉をたっぷり加えてひと煮立ちさせたもの。
「噛むたびに旨味が溢れ出してきます」というマルチンさんの感想は的を射ていて、福森さんは感心するばかり。
〆は残ったすき焼きに鶏がらスープを加え、乾麺とたっぷりのニラを入れた福森さん特製ラーメン!
「1つの鍋で色んな料理ができるなんて、土鍋が欲しくなりますね」とより想いが強くなったマルチンさん。
福森さんからも「ポーランドへ行こうかしら。商売しようかしら」と冗談が飛び出します。
翌日は土鍋選び。マルチンさんが選んだ土鍋は小さめの2合炊き。すると福森さんは「あの食べっぷりなら、もう少し大きめのでもいいのかな~と思いますけど」と3合炊きの土鍋を勧めます。前日と同じサイズと知り、マルチンさんは大きいサイズの方をお買い上げ! フタ付きで1万円の土鍋(織部釜)に、福森さんが木製の台をプレゼントしてくださいました。
別れの時。マルチンさんからポーランドのお菓子を受け取った福森さんは、土鍋の台のほか、自家製のお米、前日の炊き込みご飯をおにぎりにしたものをプレゼント。道歩さん、圡楽窯のみなさん、本当にありがとうございました!
家庭料理「さかなご飯」とは?
次にマルチンさんが向かったのは、三重県尾鷲市。人口約430人の港町・九鬼町(くきちょう)へ。ここでは、家庭料理の「さかなご飯」を教えていただきます。さかなご飯を教えてくださるのは、田﨑ますみさん(85歳)。
ご近所の川上則之さん(85歳)と田﨑祐一さん(75歳)もお手伝いに来てくださいました。ますみさんは「マルチーズさん(名前を勘違い(笑))ハンサムですね...」とメロメロ。
ここでスタッフが名前の間違いを指摘すると、照れ笑いするなんともキュートなますみさん。そんなますみさんに、いよいよ「さかなご飯」を教えていただきます。具材はブリを使いますが、これは家庭ごとに違うそう。
まずはブリを一口大に切ってから酒を加え、臭みを取ります。家庭料理なので普段は目分量で作るますみさんですが、今回はマルチンさんに教えるため、事前にお友達と集まって分量を量り、レシピを準備してくださいました。
調味料を入れた後にブリを加え、輪切りにしたゴボウやニンジンもたっぷり加えて炊き込み開始。
炊き上がるのを待つ間、ますみさんはブリの握り寿司やちらし寿司を用意してくれました。
すっかり意気投合した2人は記念撮影!
2人が交流を深めている間に「さかなご飯」が出来上がりました。炊飯器のふたを開けたマルチンさんは、ひとしきり香りを楽しみます。最後に刻んだネギを入れたら「ブリのさかなご飯」の完成。
田﨑家に代々伝わる家庭の味。またもや無言で黙々と頬張るマルチンさんは、「美味しいさかなご飯が食べられて、九鬼に来て良かったです」と感想を。
ますみさんは、おかわりを完食するマルチンさんの姿を見て、嬉しさのあまり涙がこぼれます。
ますみさんたちが事前にリハーサルまでして準備していたことを知ったマルチンさんも感激! 「優しい心遣いに亡くなった母を思い出しました」と言うと、「ママになります!」とますみさん。夕食は、珍しいマンボウもいただきながら大いに盛り上がります。
地元の皆さんも大歓迎
翌日。マルチンさんは、九鬼町唯一の食堂、網干場(あばば)で熱烈な歓迎を受けます。運営しているのは住民の皆さん。春ブリの刺身やべっこう寿司など伝統的な尾鷲の名物が並びます。
あくる日、今度はマルチンさんが網干場の厨房を借り、お世話になったみなさんにポーランド料理を作っておもてなし。
ポーランド風ロールキャベツ「ゴウォンプキ」は、優しい味で大好評。皆さんスープまでぺロリと完食してしまいました。
別れの時。「皆さんのおもてなしに心から感謝しています。また帰ってきます」と話すマルチンさんに、ますみさんは「この3日間は夢みたいでした。ハンサムな方と出会えて...」と最後までメロメロ。
最後に皆さんの笑顔を見たマルチンさんは涙をぬぐい、九鬼町を後にします。
帰国を前に、マルチンさんは「土鍋のすばらしさを知り、普通の家庭にお邪魔できてすばらしい体験になりました。改めてニッポンが大好きになりました。必ずニッポンに帰ってきます。ますみさん、お体を大切にしてください」。
今回お世話になった皆様、本当にありがとうございました! マルチンさん、またの来日をお待ちしています!
そして、今晩8時放送の「世界!ニッポン行きたい人応援団」では...。
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