JR国立駅から徒歩9分のところにある「台形」は、その店名や外観からはなにをしているお店なのかサッパリ分かりません。外観は窓ナシ、看板は台形の図があるだけ。噂では「どこにもない料理」を出すお店ということですが......。そんな不思議なお店「台形」のお料理をご紹介します。
博物館のような飲食店?
JR中央線国立駅の南口で降り、富士見通りを真っ直ぐ進むと、台形が見えてきます。そう、ビルにくっついて、木造のナニカが!......しかしこれがお店だとすると、ちょっと小さすぎるような気がしませんかね。
「とにかく中に入ってみよう!」と行ってみると、看板が。
まさに「台形」。しかし情報はこれだけ。やはり何のお店かは分かりません。らちがあかないので、いよいよ中へ。
入り口をくぐると、先ほどの木造部分はエントランスで、お店本体は左隣のビルの中にありました。
店内には古本、骨董、歴史的遺物、呪術的な像やお面などがずらり。優しい光とあいまって、物語の中に迷い込んだような不思議な空間です。
インテリアかと思いきや、これらはほとんど売り物なのだとか。まるで博物館ですね。これは骨董に興味がない人でも楽しい!
何層にも感じられる予想外の美味しさ
テーブルに案内されたところ、やはりこのお店ではお料理を提供しているようです。さっそく予約していたディナーコースを出していただきました!
最初にテーブルに出てきたのは、緑が鮮やかなスープでした。美しい......。店主厳選の器とあいまって、これ自体が芸術品のようです。芽キャベツとスナップエンドウ、青じそ、ブロッコリーを使った、緑のスープ。香り豊かな蜂蜜を加えたクリームチーズを溶かしながらいただきます。
さっそく一口飲んでみると、そのなめらかな舌触りにびっくり。最初にフワッと感じるのはブロッコリーのまろやかな味わいなのですが、次第にみずみずしさ、爽やかさ、香ばしさ、コクなど、さまざまな風味が加わっていきます。素材全ての味がそれぞれきちんと生きて、順番に舌と鼻孔に届くんです。これは感動!
続いて、ナスのお料理。
ナスに豚肉とキクラゲの餡をはさみ、皿にはアサリと貝柱のソースが敷かれていました。ふわっとしたナスに、繊細な味わいの餡が詰まっていて、さまざまな食感が楽しめました。これまた想像のはるか遠くからやってくる、重層的な味に驚かされます。
そして、苺のデザート。
ローズマリーで香りづけをしたパンナコッタをベースに、スターアニス、ラム酒、レモングラスなどを使い、華やかな香りが印象的な苺のスープをかけたパフェでした。上に載っているのは、スティック状のクッキーや、砂糖で和えたクルミです。
見た目の華やかさと奥深い味わいもさることながら、複雑で魅力的な香りにもうっとり。甘酸っぱさと上品な甘みの組み合わせで、本当おいしすぎます!
すべてのお料理が、とにかく繊細でふくよかな味わいでした。素材選びから仕上げまで丁寧に作られた感じが、端々から伝わってくるお料理です。
「ここではないどこか」の料理
これは食材を知り尽くしたベテランのワザにちがいない!......と、お料理を手がけた料理人の大木瑶子さんにお話を伺ってみたのですが。
「このお店をやるまでプロとしての経験はありませんでした」とのこと。
店主でありご主人の伏木庸平さんのお父様はパティシエだそうで、そのお店でお手伝いをしたのが、大木さんの唯一の"料理人修行"だったのだとか。それでこのクオリティ......天才現る、ですね。
では、大木さんのお料理は、どのようにして生まれたのでしょうか。
「お店のホームページに『旅』とありますが、
私にとって旅は、料理のインスピレーションを得る上で大切なインプットの一つ。いつも未知の味に出会いたいと思い、訪れたことのない土地に赴きます。
旅先で出会う料理のように、味覚を通じて新鮮な驚きを与えたいと思ってます。」(大木さん)
なるほど。店内の雰囲気は、まさに旅先で出会う食堂のイメージ。どこか知らないところに来たような気持ちになる不思議なお料理には、世界中のテイストが含まれているのですね。
ディナーコースは5000円で6~7品。内容は季節に合わせて毎月少しずつ変わっていきます。直前ですと予約が取りにくいので、ご予約はどうぞお早めに。ドリンクは別で、自然派ワイン(グラス800円~、ハーフボトル・ボトルask)、ハートランド(350ml/600円、500ml/700円)ほか。ソフトドリンクもありますよ。
国立に用事がなくても、このコースを楽しむためだけに訪れる価値ありです。ほかでは絶対に味わえない特別なお料理、ぜひ楽しんでみてください!
【取材協力】
台形
住所:東京都国立市中2-2-3
電話:070-4111-1449
営業時間:月・金/12:00〜18:00(LO17:00)、土・日/12:00〜17:00(LO16:00)、18:30 or 19:00〜(コース制・要予約)
定休日:火・水・木
URL:http://daikei.org/
※この情報は、2019年6月11日時点のものです。最新情報をご確認の上、お出かけください。