1日4000個を売り上げる名店の達人がレクチャー! 絶品”カレーパン”の生地&カレー作り

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

カレーパンとの出会いはアノ漫画

今回訪ねたのは、スペインのカナリア諸島の1つ、グラン・カナリア島に住むイレーネさん(23歳)。イラストレーションの専門学校に通う傍ら、独学でカレーパンを作っています。

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カレーパンと言えばニッポンでも不動の人気を誇る惣菜パンのひとつ。昭和2年の発売以来、日本各地で様々なカレーパンが売られています。

「ヨーロッパでは、おかずがあってパンは添えてあるものです。おかずのカレーとパンが一体となっているカレーパンは、私が出会った中でも最高のパンです」と話すイレーネさんは、幼い頃からパンが大好きで、パン作りを学ぶためにドイツ留学したことも。

そんなイレーネさんがカレーパンに出会ったのは15歳の頃。漫画「黒執事」でその存在を知り、衝撃を受けたそうです。以来インターネットの情報を元に試行錯誤を重ね、独学でカレーパンを作ってきました。

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ニッポンのカレールーを使い、スタッフのために手作りしてくれたチーズ入りカレーパンは、少し形が細めになってしまいましたが、とても美味しかったそう。

そこで「おいしいカレーパンの作り方を学んで、お母さんに食べさせたい!」と話すイレーネさんをニッポンへご招待!

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パン好きで知らない人はいない名店へ

まずイレーネさんが向かったのは、愛媛県八幡浜市。実は愛媛県はパン屋さんの激戦区で、人口10万人当たりのパン店舗数が全国1位になったことも! 八幡浜市には、パン好きの間で知らない人はいない"パン作りの達人"のお店があるのです。

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1日4000個以上のパンを売り上げる人気店「パン・メゾン」。全国で大ヒット中の「塩パン」を初めて作ったのもこのお店。お店に入ると、出迎えてくれたのは店のオーナー・平田巳登志さん(64歳)。

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お話を伺うと、「多い人だと予約を入れて400個買って帰る人もいます」とのこと。その数にはイレーネさんもビックリ! 「塩パン」と並んで人気を誇るのが「牛肉ゴロっとカレーパン」です。

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平田さんは、「せっかくだから...」と揚げたてのカレーパンを用意してくださいました。本物のカレーパンを目にし、「理想的な楕円形ですね!」とまずは形をじっくり観察するイレーネさん。「油とスパイスの香りも最高です」と食べる前から嬉しそう。

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いざ念願のカレーパンを口にすると、「すごく美味しい!」と止まらなくなり、ぺロリと食べてしまいました。「外側はサクッと揚がっているのに、中はもっちりしていて最高の食感です。マイルドな辛味のカレーとの相性も抜群ですね」と、しっかり味わっていたよう。イレーネさんの感想を聞き、平田さんの顔もほころびます。

旨味だけを凝縮!カレー作りの秘密

イレーネさんは、早速カレーパンの秘密を教えていただくため、厨房へ...。

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「パン・メゾン」では、13人の職人が毎日約110種類のパンを製造しています。カレーパン担当の石井孝典さんから、カレー作りを教えていただきます。

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大きなビニール袋に入れた角切りの牛肉に、ガーリックパウダー、ナツメグ、胡椒で下味をつけ、一晩じっくり寝かせます。これがスパイスに負けない味の要になるそう。寝かせた牛肉は、鍋にジュッと押しつけて焦げ目を作ることで、旨味を引き立てます。そこにトマトソースとワインを加えて肉の繊維をほぐし、口の中でホロっととろける食感を生み出します。1時間煮込むと、おもむろに物差しを鍋に入れて何かを測る石井さん。

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季節によって水分量が異なる野菜を使うので、水分がどこまで飛んだかを鍋底から測っていたそう。美味しいカレーパンに大切なのは舌触りの良さととろみで、水分を飛ばし、旨味だけを凝縮したルーを、モチモチの生地と合わせるとのこと。十分に水分を飛ばすことによって水と油が分離せず、とろみのいい舌触りがそのまま残るので、冷えても美味しく食べられるカレーパンができるのです。

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できたカレーを味見させてもらったイレーネさんは、「美味しいですが、スパイスが強い気がします」との感想。実はこのカレー、スパイスがゆっくり調和して熟成され、深みがある味わいになるように、さらに一晩冷蔵庫で寝かせるといいます。

お昼休憩は午後2時。平田さんの奥様・由紀恵さんがイレーネさんの分まで作って下さったお弁当をいただきます。ほおっておくとパンばかり食べてしまう平田さんのために、奥様は毎日欠かさずお弁当を作ってくれるんだそう。

20年前にオープンした「パン・メゾン」。平田さんがパン作りに専念できるよう、他の仕事はすべて奥様が担当。奥様は1年前にお店を引退しましたが、それまでずっと平田さんを支え続けました。「家内には頭が上がらない」と嬉しそうに話す平田さん。

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平田さんは感謝の気持ちから、「パン・メゾン」専用の小麦粉に奥様の名前を付けました。

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モチモチで柔らか!生地作りの秘密

お昼休みも終わり、今度は生地作りを教えていただくことに。ニッポンのパン生地は海外に比べ、モチっとした柔らかさが大きな特徴ですが、これはご飯が主食の日本人に合うよう、独自の進化を遂げたから。ニッポンの惣菜パンの生地には、柔らかさの秘密である砂糖が多めに入っています。イースト菌の栄養分である糖分を増やすことによって菌の発酵が活発になり、生地が柔らかく伸びやすくなるとのこと。

イレーネさんが生地をこねていると、事前にイレーネさんのパン作りのビデオをチェックしていた平田さんから、大切なアドバイスがありました。こね終えて発酵させようとするイレーネさんに、「まだまだです」と声をかける平田さん。まだ十分に粉のグルテンが出ていないので、伸びが悪くなるとのこと。

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たしかに、イレーネさんのカレーパンは伸びが十分でないため、作る度に形がいびつになっていました。今度はパン職人の大下翔さんに、どのように改善すればいいのかを教えていただきます。生地をこねた後、机に叩きつけてはたたむことを繰り返す大下さん。

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「こんな工程があるなんて...」と話すイレーネさんに、平田さんは「これが大事なんです」と返します。ニッポンのパンは具材を挟んで生地を加工することが多いので、十分伸び縮みする生地であることが不可欠。

「おいしくなあれ、おいしくなあれと愛をこめて思いきり叩く」、そんなコツを教えてもらったイレーネさんは、早速「おいしくなあれ」と唱えながら生地を叩きます。

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すると、次第に叩きつける時の音も変わり、大下さんの音に近づいてきました。叩き続けること20分...ようやく平田さんからOKが! ここから1時間かけて生地を発酵させます。そして生地を小分けにしたらさらに一晩発酵させ、やっと具を包める状態になるのです。

イレーネさん、いよいよ具を包んでいきます。ヘラを使って具を生地にのせ、具を押しこんだ勢いで手を軽く握って包みこんでいきますが、イレーネさんは、なかなか平田さんのようにたっぷり具を入れて包むことができません。ちょうど良いタイミングで手を握って包んでいくことができず、生地が薄く伸びていってしまいます。

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職人さんたちも、遠くから心配そうにのぞきこんでいます。
とはいえイレーネさん、「なかなかうまく包めませんが、生地が柔らかいので破れる心配がないだけでもかなりやりやすくなりました」

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ルーを包んだ生地に衣をつけたら1時間最終発酵させ、170度の油で片面3分ずつ揚げます。ポイントは油から出して返すこと。そうすると予熱で蒸らされ、生地と具の間に空洞ができにくいそう。早速、自分で作ったカレーパンを平田さんと食べてみるイレーネさん。平田さんはしっかり味をかみしめながら「美味しい」と笑顔になり、イレーネさんも「美味しいです」と満足そう。

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カレーパン作りを教えて下さった石井さんも「このまま(店に)出しても僕らのと変わらないですね」と笑顔に。

笑いがあふれる平田さんのご自宅へ

夜は平田さんのお宅で、イレーネさんの歓迎会が開かれました。愛媛では、お祝いの席で出される鯛そうめんやちらし寿司など、心尽くしのお料理が華やかに並びます。

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鯛そうめんを食べたイレーネさんはとても美味しかったようで、平田さんの奥様に「お料理を教えていただきたいです」と話していました。

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現在、「パン・メゾン」2号店を任されている長男の将武さん(38歳)に、「上手にカレーパンを作れるようになった?」と聞かれたイレーネさんは、「まだまだです。美味しく作れるようになるおまじないを教えていただいたのでメモしました」と言ってノートを見せてくれました。

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そこには、「おいしくなあれ」を頑張って日本語で書いたイレーネさんのかわいらしいひらがなが! 奥様が「日本語上手!」と褒め、食卓には笑いがあふれました。

イレーネさん考案!オリジナルパンを販売

翌朝5時半。イレーネさんが「パン・メゾン」の厨房に行くと、すでにパン作りの真っ最中。カレーパン作り担当の石井さんが手際よくカレーパンを包んでいるのを見て、どれくらい練習すればそんなに速くできるようになるのか尋ねると、「包み続けて5年ぐらいで...」と教えてくださいました。「私なら10年はかかりそうです」とイレーネさん。

少しでも多く学びたい、と言うイレーネさんに、平田さんは特に難しかったルーを包む工程をつきっきりで教えてくれます。練習の甲斐あって、ついに自分ひとりで上手に包めるように! 平田さんも嬉しそう。

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「パン・メゾン」では年間100種類近くの新作パンを考えて販売しています。「カレーパン以外のニッポンのパンも、故郷のみんなに作ってあげたい」と話すイレーネさんに感銘を受けた平田さん。なんと特別に、イレーネさんと一緒に新作パンを考えてくださることに!

平田さんのアドバイスをいただきながら、ハム、コーン、ツナ、チキンなどを使って、あっという間に6種類の試作パンが出来上がりました!

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中でもイレーネさんが気に入ったのは、ピザソースにベーコンと玉ねぎをトッピングした惣菜パン。「カリッと香ばしい食感が最高です」とイレーネさん。パンの味に厳しい平田さんも、「美味しい! お店で売りますか」と夢のようなお言葉を。商品名は、イレーネさんの出身地にちなんで「グランカナリア」になりました。

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最初に女子高生が買うと、次々と売れていき、わずか30分で完売! 買ってくださったお客様からは、「バッチリ」「美味しい」など、嬉しい言葉をたくさん聞くことができました。

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そしてお別れの時。イレーネさんは、お世話になった「パン・メゾン」の皆さんの似顔絵を色紙に描いてプレゼントします。さすがイラストレーションの専門学校に通っているだけあり、それぞれの特徴をよくとらえていました。

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平田さんからは、プレゼントとして「パン・メゾン」の制服一式が贈られます。「これ着て頑張るんだよ」と平田さんの奥様からもエールをいただき、イレーネさんは愛媛県を後にします。

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帰国を前にイレーネさんは、「カレーパンを通じて、ニッポンの皆さんの優しさや思いやりを感じることが出来ました。出会ったすべての皆様に感謝しています!」と感想を。

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とても優しく熱心にパン作りを教えて下さった「パン・メゾン」の皆樣、その他お世話になった皆様、ありがとうございました! イレーネさん、またのご来日お待ちしています!

そして今晩8時放送! 「世界!ニッポン行きたい人応援団」は...。

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炊き込みご飯に夢中で、ゴボウをドイツから取り寄せ、油揚げを豆腐から作るほどのこだわりを持つポーランド人男性をニッポンへご招待! ポーランドでラーメン店を経営する男性は「炊き込みご飯を学び、将来お店を出してポーランドで広めたい!」と語ります。まずは、伊賀焼で有名な三重県伊賀市へ。日本屈指の土鍋の里で、300年続く窯元8代目に土鍋を使った炊き込みご飯の作り方を学びます。さらに定置網漁が盛んな三重県尾鷲市で、家庭料理「さかなご飯」を教わります。

今晩8時放送の「世界!ニッポン行きたい人応援団」をどうぞお楽しみに!

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