世界で活躍する知られざる日本人を取材し、ナゼそこで働くのか、ナゼそこに住み続けるのかという理由を波瀾万丈な人生ドラマと共に紐解いていく「世界ナゼそこに?日本人~知られざる波瀾万丈伝~」(毎週月曜夜9時)。「テレ東プラス」では、毎回放送した感動ストーリーを紹介していく。
最低気温-71.2度! 世界一寒い国のラーメン店
今回スポットを当てるのは、世界一寒い国・サハ共和国でラーメン店を経営する、ワケあり日本人男性。なぜ日本とは縁もゆかりもないサハで、ラーメン店を始めることになったのか?
凍ったバナナで釘が打て、ペットボトルの水が空気に触れた瞬間カチカチに......。ロシア連邦を構成する国のひとつ、サハ共和国は最低気温-71.2度の記録を持つ世界一寒い国。
さっそく、その男性が暮らす首都ヤクーツクで聞き込み開始! すると「それならラーメン屋をやってる日本人の事だな」「マサムネってお店だよ!」との情報が。
その店に向かってみると、看板には「ラーメン政宗」の文字。店内はなかなかの盛況ぶりで、客のほとんどが日本の醤油ラーメンを食べている。
従業員に日本人のことを尋ねると、「ヤマモトさんのこと?」と、厨房にいる人物だと教えてくれた。
こちらが山本隆史さん(47歳)。この方こそ、-71.2度のサハに、たった一人で移住したワケあり日本人だ。
ラーメン店なのにマグロの解体ショー! そのワケは?
店内に、体長150センチ、重さ50キロの巨大マグロが運ばれてくると、山本さんによるマグロの解体ショーが始まった! 取り囲んだ客は、全員スマホを構え、大興奮しながら写真や動画を撮っている。海が遠いサハでは、生のマグロは珍しいのだ。捌いたマグロは、ショウガで生臭さを抑えた漬け丼として提供し、こちらも大好評。
なぜ、ラーメン店にもかかわらずマグロの解体ショーをやっているのか? そこには切実な悩みがあった。
一見とても繁盛しているように見える店だが、実は赤字経営だという。その原因は、すぐ隣にある日本食レストラン「マツリ」。その店は、1000万円以上かけた日本を意識した内装と、一風変わった創作寿司が人気で、「政宗」の客の多くが奪われている。そこで集客のためにマグロの解体ショーを始めたのだが、ショーがない日はほとんど客が来ないのだ。
日々赤字に苦しめられている山本さんだが、日本から取り寄せた乾麺、丁寧に出汁をとったトリプルスープなどラーメン作りにはこだわりがある。しかし、山本さんは元々ラーメン店を出す気はなく、ラーメンを作ったことすらなかったという。
実は、山本さんは、ある怪しい話に乗って、サハに流れ着いた。山本さんの身に、一体何が起きたのか? その謎を探るべく、山本さんの生活に密着した。
47歳独身の一人暮らしに密着
47歳独身の山本さんは、サハのアパートで一人暮らし。出勤前にお邪魔してみると、-25度のベランダに洗濯物が。5分前に干したというタオルも、あっという間にカチカチに!
食材の買い出しに行った青空市場でも驚きの光景が! なんと凍った川魚が、フランスパンのように立てて売られているのだ。これも極寒の地サハならでは。
買い出しを終えて出勤した山本さんに、とんでもない報告が。ホールの従業員と連絡がとれないという。どうやら隣の日本食レストランに引き抜かれたようだ。そして他の従業員は寝坊で遅刻。それでも山本さんは、辞められては困ると強く注意できない。
赤字に苦しみ、従業員に気を遣う日々......なぜ山本さんはサハに居続けるのか? そもそもなぜサハにやって来ることになったのか。その裏には、山あり谷ありの人生ドラマが!
借金苦から怪しい話に飛びつき......
元々、日本で寿司職人として働いていた山本さん。腕に自信があったことから、25歳の若さで独立し、東京でお店を構えた。ところがお客は入らず赤字続き。4ヶ月で閉店することに。
事業失敗のショックで働く気を失ってしまった山本さんは、ギャンブルにのめり込むように。気づけば25歳の若さで、多額の借金を背負ってしまったのだ。そんなある日、競馬の記事を読もうと開いたスポーツ新聞で、山本さんの人生を変えるものを発見することに!
それは、日本食レストランのスタッフ募集。場所はなんと東欧ウクライナ! しかも旅費も家賃も無料で超高月給。「これは怪しい......」一度はそう思った山本さんだったが、このまま日本でダメになるよりはと、ウクライナ行きを決意したのだ。
しかし、話は二転三転。ウクライナではなく、なぜか1000キロも離れたロシアのモスクワに行くことに!
ウクライナのレストラン側が提示する給料と、山本さんが考えていた給料の額に差があり、折り合いがつかず破談。そこで登場したのが、レストランのオーナーの知り合いで、ロシアの飲食店経営者。事情を知り、「うちで働いてみないか?」と山本さんに声をかけてくれたのだ。しかも、ウクライナのレストランよりも高い給料を払うという。
こうして山本さんはモスクワに渡り、日本食レストランで働くこと、なんと21年! 気づけばロシア語も流暢に話せるようになり、借金も完済。人生が軌道に乗った山本さんの元に、突然ある電話が。
「山本さん、サハ共和国に来てラーメンを作ってくれませんか?」
その電話の主こそラーメン店「政宗」のオーナー。「政宗」は、仙台を中心に世界で店舗を展開。ラーメン店がなかったサハに、初のラーメン店をオープンさせようとしていたのだ。
オーナーはロシアの人材紹介会社に依頼。海外での料理経験が豊富で、ロシア語が堪能な日本人を探していたところ、条件に合っていたのが山本さんだった。
「自分で店を構えれば、今よりもっと儲かるはず」と考えた山本さんはサハ行きを承諾し、1年間ラーメン修行。46歳でサハに移住し「政宗」をオープンさせた。しかし、思ってもなかった誤算が......。
オープンした時は日本のラーメンの珍しさもあって客足は好調だった。それが2ヶ月、3ヶ月と経つにつれ、だんだん売上が落ちていく。実は、サハはあまりにも寒すぎて、外食する人はほとんどいなかったのだ。
それでも山本さんは「とにかくラーメンを認知、定着させたい」という。1人でも多くのサハ人に、日本のラーメンを食べてほしい。そのためにマグロの解体ショーなどを行い、お店に来てもらおうとしているのだ。実際、解体ショー目当てに来た客も、ラーメンを食べてみて美味しかったと言ってくれている。
世界一寒い国・サハ共和国には、日本のラーメンを広めることに新たな生きがいを見つけた、日本人がいた。
そして5月27日(月)夜9時放送の「世界ナゼそこに?日本人~知られざる波瀾万丈伝~」では、「超高収入捨てナゼかアフリカの危険な国で慕われる日本人女性」をお届け。
日本での数千万円の高収入生活を捨て、アフリカへたった一人で渡った女性。テロリストも潜む危険なマリ共和国で、村人たちに慕われ愛されている彼女は、78歳とは思えない明るい肝っ玉キャラ。慕われるワケは、この国を変える程の彼女の偉業にあった! 果たしてその偉業とは? そして高収入を捨てマリへ来た驚きの理由とは?