ジルベールは、金髪の外国人じゃなかった! ドラマ24「きのう何食べた?」(毎週金曜 深夜0時12分放送)第6話に、満を持して登場したジルベールこと井上航に扮しているのは、今大注目の若手俳優・磯村勇斗。恋人の小日向大策(山本耕史)にアイスクリームを買ってこさせたり、朝一番にクリーニングに出した服を取ってこさせたり、わがままにして自由奔放な魅力をふりまく航。彼の虜になっている小日向の目には、かの有名な少女マンガのキャラクターである金髪の美少年・ジルベールに見えているらしい!?
原作でも人気があり、シロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)と関わっていく重要な役どころを演じる磯村さんが、撮影現場のリアルな様子から自身の恋愛観まで、たっぷり語ってくれた。
ジルベールのイメージは"わがままで面倒くさい系女子"
――ネットやSNSでは、キャスト発表前から航の配役予想で盛り上がり、なかなか発表されないことから「ジルベールは出ないんじゃないか説」まで飛び出した、大人気キャラクター"ジルベール"こと航。この役のオファーが来たとき、どう思いましたか?
「原作ファンの方の中でも、ジルベールの人気が高いということは聞いていて、自分で大丈夫なのかなという不安はありつつ、やるからには原作ファンの方にも愛していただけるキャラクターを作っていきたいと思いました。プレッシャーはありましたが、逆にそれが火種になり、燃える気持ちになって演じることができました」
――それだけ愛されている航という役柄にどんな印象を持ちましたか?
「最初に原作を読んだ時、航は無精ひげで髪もボサボサで、服も不思議な動物のキャラクターを着ていたりするので(笑)、見た目から受ける印象は影があってやぼったい感じがしました。内面的には、子供っぽくて小悪魔みたいですが、シロさんとケンジさんにかける言葉は的を射ていて、賢く、センシティブでもあり、わがままな人だと思いました。
大ちゃん(恋人の小日向大策)を振り回せるのは、人の心を操れる頭の良さがあるからなんでしょうね。相手の懐にスッと入ってコントロールできる人でもあるし、なんか"ふにゃっ"としてるけど、冷静に物事を見ることができる観察能力を持っているのだと思います」
――小悪魔な魅力を表現するのは難しい役柄だと思いますが、演じる上でどんなことを心がけていましたか?
「同性愛者の役を演じるのは今回が初めてで、オファーをいただいたときから演じるのが楽しみであり、挑戦でもあると思っていました。新宿二丁目に飲みに行ったこともあり、ある程度、同性愛者の方の人物像は持っていたので、そこを引き出しにしつつ、キャラクターをふくらませていきました。
航はどちらかというと女性的な感覚が強い人だと思い、『彼氏といる時の彼女ってどういう風にデートしてるのかな』とか、女性の仕草や目線を観察して参考にしました。その中でも、わがままで面倒くさい系女子に近いから、自分の中で思い当たる人を考えてみたり(笑)。あとは、子供っぽさを出すために、わがままでいようと意識しました」
――恋人の小日向さんは、航が「ジルベールのような美少年」に見えているんですよね(笑)。最初"ジルベール"と聞いて、どのようなキャラクターか分かりましたか?
「『ジルベールって何だろう』と思って検索したら、金髪の美少年のイラストが出てきて。大ちゃんは、妄想で航をこんな風にイメージしているんだと思って、笑っちゃいました。全然ジルベールじゃないじゃないですか、本物の航は(笑)」
内野さんからは、ジェラシーを感じました(笑)
――小日向さんを演じる山本耕史さんとは、現場でどのようなお話をされたのでしょうか?
「現場に入ったときから、山本さんの目線や話し方がすごく優しくて、僕を受け入れてくださっているのを感じましたし、航と大ちゃんの雰囲気を山本さんが作ってくださったので、自然と身を任せられました。お芝居で悩んでいる時には、アドバイスもいただきました。俳優の大先輩としても、大ちゃんとしても、見守っていただいていたような気がします」
――第6話では、航とシロさんが初対面。話を聞いたケンジも、小日向さんと航に「すっごい会いたい!」と言っていましたね。4人が顔を合わせるシーンがとても楽しみなのですが、4人がそろった現場はどんな雰囲気ですか?
「航の立ち位置としては、4人の中でその場の空気を乱す役割。僕が気を遣ったり先輩方に遠慮したら、お芝居としてはよくないと思ったので、航としてしっかり絡むように意識していました。先輩方が『こういう掛け合いにしたら面白いんじゃないか』と話し合いながら、現場で作品を作っていく様子を生で見られましたし、現場の作り方を勉強させていただきました。
撮影の合間に『なんか視線を感じるな......』と思ったら、内野さんが僕をジーッと見ていて。内野さんからは、ジェラシーを感じました(笑)。ケンジは航に対し嫉妬する役でもあるので、そういう見方をされていたのだと思います。内野さんのように、普段から役を意識することが大事だと学びました」
――番組プロデューサーから、4人がそろう現場では、ずっと議論をされていたというお話も聞きました。
「原作のシーンがドラマにも取り入れられてるので、台本と原作を読んで、こういう空気感なんだろうなと考えて現場に行くのですが、頭の中で考えていたテイストで実際に芝居をしてみると『ちょっと違うんじゃないか』という話になって。そこから『こういう風にしていったら4人の良い空気感が作れるんじゃないか』という話し合いをすることがありました。
原作は原作としての良さがあり、実写には実写ならではの4人の表現の仕方があり、芝居を通して出来上がるものが違ってくるということを感じたので、監督さんを含めて話し合って作っていきました。とても充実した濃厚な時間でした」
――西島さん、内野さん、山本さん、みなさん芝居がお好きで真っ向から取り組む役者さんです。この方々との共演を経験して、磯村さんもより一層芝居の楽しさを感じたのでは?
「そうですね。撮影しているときは必死に食らいついていくことしかできなかったんですが、終わると『今日、すごく楽しいな』と感じていました。コミュニケーションをとって、そのシーンを、作品をもっと良くしていくという作品作りの楽しさを改めて知った現場でした。西島さん、内野さん、山本さんというすごいお三方とご一緒できてうれしかったですし、感謝しています」
――航役は磯村さんにとって挑戦だったとおっしゃっていましたが、演じ終えて、手応えをどのように感じていますか?
「すべて出し切りました。いつも作品が終わるごとにいろいろ考えたり、こうした方が良かったかなと思うこともあるのですが、自分のエネルギーを全部ジルベールに注いだので、今回は現場でやりたいことはすべてできました。あとは視聴者の方々にどう伝わるかだと思っています」
スーパーをハシゴするシロさんに共感します
――NHKの朝ドラ『ひよっこ』で見習いコック役を演じて以来、料理をすることも多いという磯村さん。料理好きとしてシロさんに共感する部分はありましたか?
「シロさんがスーパーを何軒か回って買い物する気持ち、分かります。僕も、行きつけのスーパーが3軒ぐらいあって、買い物に行く時は何軒か回るんですよ。『僕、主婦なのかな?』と思っちゃう(笑)。
『牛肉と魚なら、こっちの店の方がおいしくて安い』とか『でも、野菜は向こうのスーパーの方が品ぞろえがいい』とか。それで『卵はこっちで買った方が安かった』となると、悔しいんです(笑)。だから、シロさんの買い物シーンを見ていると、『分かる!』と笑っちゃうんです」
――そういうお話を聞くと、磯村さんはまめな性格なのかなと感じます。
「まめに見えて、意外とおおざっぱなところもあります。ただ、料理に関しては細かいところまで気にするタイプですね。例えば、何か作るにしても、材料や調味料がレシピ通りに全部そろってないと気が済まない。何か一つないから、別の物で代用するのも嫌なんですよ」
――ドラマ内に出てくる料理で作ってみたくなったものはありますか?
「(第1話の)丸々鮭を炊飯器に入れていれて作る"鮭の炊き込みご飯"、あれはおいしそうでしたね。炊き込みご飯ってなかなかやらないので、ちょっと作ってみたいなと思いました」
――最近の得意料理は何ですか?
「最近は、なかなか料理する機会がないのですが、豚の角煮ですね。カレーとか時間をかけて煮込む料理が好きなんです。時間をかけてとろとろにしたい(笑)。それだけ手間をかけて作って食べて、『やっぱり煮込むとおいしいな~』と思うんです」
――煮込み料理を作る上でのこだわりはありますか?
「豚の角煮だったら、ネギとショウガで3~4時間煮込むとか。チキンカレーだったらヨーグルトにチキンを一日浸けておいてから煮込みます」