きっかけは「白い巨塔」 ミャンマーで4000人の命を救った日本人スーパードクター

公開: 更新: テレ東プラス

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世界で活躍する知られざる日本人を取材し、ナゼそこで働くのか、ナゼそこに住み続けるのかという理由を波瀾万丈な人生ドラマと共に紐解いていく「世界ナゼそこに?日本人~知られざる波瀾万丈伝~」(毎週月曜夜9時)。「テレ東プラス」では、毎回放送した感動ストーリーを紹介していく。

神様と呼ばれるスーパードクター

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今回注目するのは、ミャンマーで「最後の希望」といわれる日本人スーパードクター。早速ミャンマー最大の都市・ヤンゴンで聞き込みを開始。「ニイナミ先生なら、毎日病院にいるわよ」との情報をもとに、ヤンゴン総合病院へ。ミャンマーで最先端の医療を誇る病院だ。

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4000人以上の命を救ってきたスゴ腕日本人スーパードクター、新浪博士さん(56歳)。年間300件以上もの手術をこなす、心臓外科のスペシャリストだ。

0.05ミリの世界!心臓を動かしたまま行う"神の手"手術

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この日は、「狭心症」患者ウーメーさん(63歳)の手術。狭心症は、冠動脈が老化によって極端に狭くなり、胸に激しい痛みなどの症状を引き起こす病気。

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問題があるのは、血管が狭くなり血液が流れにくくなっている部分。そこで、胸の血管を使い、別の新たな血液の通り道を作る。すると血液が心臓に正常に流れるようになるのだ。

これから手術という時に、ウーメーさんが呼吸困難に。狭心症が悪化し、心筋梗塞を引き起こしかけているという。点滴を投与し、落ち着いたところで手術開始。ここで新浪先生から「心臓動かしたままいくよ」と驚きの一言が! 通常は人工心肺装置を使い、心臓の動きを止めて行う。しかし、直前に心筋梗塞を起こしかけたため、動きを止めるのは非常に危険。心臓を動かしたまま手術をすることに。

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まずは胸の血管を切り離す。続いて、冠動脈と先ほど切り離した胸の血管を縫い付け、新たな血液の通り道「バイパス」を作ることに成功! ここまでわずか3時間。通常は6時間はかかるところを、半分で終わらせたのだ。手術時間の短縮は、患者への負荷も減り合併症などのリスクも防げる。

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2週間後、ウーメーさんは無事退院し、家族のもとへ。
「この感謝の気持ちは一生忘れません。先生は私たち患者にとっての最後の希望です」

年間300件の手術! 家族を日本に残し、ミャンマーで奮闘

ミャンマーの患者達にとって、新浪先生は「最後の希望」。同僚の医師たちからは「神様」とも呼ばれる。そんな新浪先生は、奥様と中学生の息子さんを日本に残し、ここミャンマーで多くの命を救っている。

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新浪先生のミャンマーでの住まいは、ヤンゴン総合病院の徒歩圏内。ミャンマーでは雨季に道路が冠水して通れなくなることも。病院の近くに住むことで、すぐに患者の元へ駆けつけられるのだ。

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出勤前はジムに。年間300件もの手術をこなすには、なにより体力が必要! 全ては患者のためなのだ。

難易度が高い、心臓を持ち上げての"裏側"の手術

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新浪先生のもとに、患者がまた一人。ルー・メンチューさん(58歳)は重い心臓病におかされ、全体的に動脈硬化が進んでいる。黒い矢印の血管に比べて、赤い矢印の問題がある血管の方が、異常に狭くなっている。このままでは心筋梗塞や心不全を引き起こし、命にもかかわる。

さらに問題が。異常に狭くなっている血管は、心臓の裏側にあるのだ。今回行う「心臓の裏側バイパス手術」は、表側の手術より数倍も難易度が高く、ミャンマーでも新浪先生にしか出来ない。

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いよいよ手術へ。ホースがついた機械で......なんと心臓を吸い上げた! これは裏側をよく見えるようにするため。こうして裏側の部分にある血液が行き届いていない冠動脈に、正常な別の血管を繋ぎ合わせ、新たな血液の通り道を作る。

しかしここで、一部の血管の表面が異常に硬くなっていたことが判明。ルーさんが患っている糖尿病によるものだ。そんな状態でも新浪先生は、針先の感覚だけで柔らかい部分を探り縫い合わせていく。そして手術開始から1時間後、無事、心臓の裏側バイパス手術が成功した。

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3日後、集中治療室から出られたルーさん。
「これでまた家族の為に働くことが出来ます! 新浪先生には感謝してもしきれません」

手術中に突然、心肺停止の恐れ! トラブルをどう乗り切る!?

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翌日、また新たな患者が。ウンタンさん(56歳)を苦しめていたのは、冠動脈の狭くなった部分。このまま放置すると血液がうまく流れず、いつ心臓が止まってもおかしくない。

今回は狭くなった冠動脈に正常な胸の血管をバイパスして、血液の流れを正常に戻す手術を行うことに。しかし手術中、心房細動により通常は1分間に80回程度動く心臓が150回も動く異常事態に。長引くと、心停止の危険も。

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そこで新浪先生が用意したのが、心臓に微量の電流を流して正常な動きに戻す医療機器。ところが、その機械が突然作動しなくなってしまった。しかも、この病院にはこれ一台しかない。そんな中、新浪先生は手術を続行。スタビライザーという止め具を使って慎重に手術を進め、無事に終了した。

1カ月後、ウンタンさんは退院し、仕事にも復帰したという。
「新浪先生がいなければ私は死んでいたでしょう。感謝してもしきれません」

きっかけは「白い巨塔」 スーパードクター誕生秘話

日々、命の最前線で奮闘している新浪先生。しかし、なぜ彼は、4000人もの命を救うスーパードクターになれたのか?

1962年、横浜市で2人兄弟の次男として生まれた新浪先生。中学3年生の時、医療ドラマ「白い巨塔」をきっかけに医者を志す。難手術を次々と成功させる天才外科医・財前五郎を見て、「いつか自分もすごい外科医になりたい!」 そんな憧れを抱いた新浪少年は猛勉強を続け、国立の群馬大学医学部に合格した。

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卒業後は東京女子医大に2年間勤務。27歳の時に海外へ留学し、1200件以上もの手術に携わり世界最先端の医療技術を習得。外科医としてのキャリアを積んでいった。

新浪先生は、「命を助けるのは当たり前。その後の生活を普通の状況に戻せるかというのは、その医者の腕にかかってくる。だから僕は、自分の技術を一生懸命磨こうと思った」と思いを語る。

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そして、今のようなスーパードクターにまでなれた裏には、兄の存在があった。スポーツマンで優秀な兄に負けたくない、そんな気持ちを常に持っていたという新浪先生。実はその兄とは、なんと現・サントリーホールディングス株式会社の社長・新浪剛史さん。新浪先生がミャンマーで働き始めたのも、剛史さんから紹介された人物がきっかけだった。

ミャンマーで働いていたその人物は、新浪先生の医療の腕を知り、医療事情が悪いミャンマーに来て助けてほしいとの依頼が。それから毎年数回ミャンマーと日本を行き来し、医療活動や若手医師の育成に取り組むようになったのだ。

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そんな新浪先生の目標とは。
「自分の能力が若い人に敵わないと思うまでは、手術を続けていたいと思うだけですね」
日本から遠く離れたミャンマーで、日々難しい心臓手術に立ち向かい、多くの命を救う日本人スーパードクターがいた。

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そして5月13日(月)は、夜8時から2時間SP「世界ナゼそこに?日本人 天才小児外科医&大偉人!スゴすぎる世界の日本人SP」を放送。成功率驚異の99%!医療先進国ドイツで5000回以上の難手術を成功させ多くの子どもたちを救い感謝される54歳スーパー心臓外科医と、大飢饉で2000万人以上の難民を生み「死の土地」と呼ばれた中国秘境の人々を飢えから救った日本人偉人を紹介。

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