不登校になる前に改善!中高生が早起きできない3つの理由:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分から)は、医師や病院の選び方のコツや無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちが答える、知的エンターテイメントバラエティ。

今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは、「大人の喘息」と「朝起きられない息子」に関する心配事。同番組のレギュラー・姫野友美医師に、その原因や改善策について教えていただきました!

Q:30代の会社員です。毎年1~2カ月の長い期間で咳が止まらない時期があり、喘息を疑っています。秋~冬、冬~春の時期が多く、「気温差が影響しているのかな?」と思いましたが、考えてみるとその時期は会社の繁忙期と重なり、仕事のストレスが影響しているのではと思い始めました。子どもの頃は特に喘息などはありませんでしたが、大人になって急に喘息が発症することはありますか。またどのような原因が考えられますか。

―― 喘息は大人になってから急になることもあるのですか。どんな人がなりやすいのでしょうか。

「喘息というのは、実は2種類あるんですね。一つは『アトピー型』といって、ハウスダストやダニなどのアレルギーが原因で起こる小児喘息に多いタイプ。もう一つは『感染型(非アトピー型)』で成人に多いのですが、風邪をひいた後に気道の過敏性が増して起こるものです。喘息というと子どものときにかかる病気と思われがちですが、大人になってから突然喘息と診断されることも少なからずあります。注意が必要なのは、もともとアレルギーを形成しやすい人。腸内環境が悪いと免疫機能のコントロールも悪くなり、気道過敏性やアレルギーが出やすくなります。また、40歳を過ぎてから急に喘息になる人は、風邪などの感染症がきっかけになることが多いので、必然的に秋から冬に発症しやすくなります」

―― 気温差やストレスも影響するのですか。

「気管支は自律神経の支配を受けていて、気候や気温差、疲労など自律神経を乱すさまざまなことが関係します。副交感神経が優位になると気管支は収縮し、交感神経が緊張すると気管支は拡張する。交感神経優位で収縮する血管とは作用が逆なんです。そのため、寒くなって交感神経が緊張した後に副交感神経が優位になると喘息が起きやすくなります。時間帯では副交感神経が優位になる夜から明け方に症状が悪化することが多くなります。

また、ストレスが関係しているのも自律神経の支配を受けているからです。ストレスが多くかかっている間、意外と喘息発作は起きないのですが、ストレスのピークが終わった頃、一気にきます。ストレスの真っ最中は交感神経が緊張しているためです。この方の場合も、繁忙期で日中は頑張って(交感神経を緊張させて)仕事をしていて、夜中にホッとしたときに発作が起きたと考えられます」

―― 普段から気をつけたほうがよいことはありますか。

「まずはしっかり腸内環境を良くすることが重要です。食物繊維や乳酸菌、発酵食品を取るなど、腸内環境を整える効果のある食生活がおすすめですね。さらにウイルスの侵入を防ぐため粘膜を丈夫にすることも大切。それにはビタミンAやグルタミンというアミノ酸が必要ですから、蛋白質を多く含む卵や肉、魚などをしっかり食べるようにしましょう。

それと、今注目されているのがビタミンDです。ビタミンDはアレルギーに対する効果が高く、花粉症や喘息の軽減が期待できるという文献が世界中から発表されています。ビタミンDは日光に当たることでコレステロールから合成できるのですが、日光の照射が減る冬場は特に不足しやすい。これから日照時間がどんどん長くなりますから、外に出て日光を浴びる時間を増やしていくといいでしょう。食品であれば、焼き鮭、きくらげ、干し椎茸など、主に魚類にビタミンDは多く含まれます。サプリメントで補うのも一つの方法です。

たとえアレルギー反応が出て喘息になってしまったとしても、小児喘息が途中で良くなったりすることがあるように、粘膜や免疫の働きが強化されれば発作が起きなくなることは十分にあります」

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Q:高校生の不登校児を抱える45歳の主婦です。何度起こしても、息子が朝起きられなくなり、遅刻が続き、ついには不登校気味になってしまいました。夜オンラインゲームをやることも多く、睡眠不足も否めません。とにかく朝は弱いのですが、夕方からは急に元気になり、「明日からはちゃんと学校に行けるから安心して」などと言ったりします。病院に連れて行ったところ、心療系のお薬を処方されましたが、毎日飲ませるのも不安ですし、家庭でどのようなことに気をつけたらいいのか悩みます。食べ物や漢方でも調整できるものなのでしょうか?

――「朝起きられずに遅刻が増えた」ことが不登校気味になった理由の一つのようです。

「朝起きられない原因は3つ考えられます。一つは鉄欠乏、もう一つは夜間低血糖、そして起立性調節障害です。
まず鉄欠乏ですが、成長期には実は鉄がとても必要になるんですね。というのも成長とともに伸びる骨は"鉄筋"と同じで鉄を必要としますし、同時に成長する筋肉も赤い色はミオグロビン(鉄)の色ですから、成長期には体に蓄えられている貯蔵鉄がなくなってしまうわけです。すると、メラトニンという睡眠ホルモンをつくるために必要な鉄も不足してしまい、寝つきがよくなくなるんですね。さらにメラトニンの分解にも鉄がいるので、寝起きもものすごく悪くなります。若い女性にみられる寝起きの悪い人の多くはこの鉄欠乏ですね。
鉄欠乏を改善するには、鉄を多く含む食品をしっかり取ること。ヘム鉄のサプリメントを飲むと改善が期待できます」

―― あまり聞きなれない夜間低血糖とは何でしょうか。

「夜間低血糖は寝ている間に起こる低血糖のことです。お菓子を食べたり甘い清涼飲料水を飲んだりすることで血糖値がぐんと上がると、血糖値を下げるためにインスリンが過剰分泌されるのですが、それが夜までダラダラ続いたり、夜間に追加分泌されると、翌朝、血糖値が下がりすぎて脳に糖がいかずに起きられなくなるんですね。今は24時間連続的に血糖測定ができる医療機器があるのでそれで測ったところ、夜間低血糖の人がとても多いことがわかってきました。

ただ、夜間低血糖は寝る間際に食べたものにだけ影響されるのではなく、昼間食べたものでも下がることがあるんですね。つまり、日中の糖質の取りすぎは夜間低血糖を招くことがあるということです。このケースの場合は、糖質を控え寝る前にMCTオイルを入れた豆乳を飲んだり、必須アミノ酸のBCAA(Branched Chain Amino Acid)を飲むと血糖コントロールが良くなり朝起きやすくなります」

―― 最近良く耳にしますが、起立性調節障害とはどんな病気でしょうか。

「起立性調節障害は自律神経の異常で、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかない病気です。夜、交感神経の緊張から副交感神経優位になり、朝、再び交感神経が緊張する......この切り替えがうまくできない。立ちくらみ以外にも、遠足でバスに乗ると気分が悪くなる、朝お腹が痛かったり頭痛がしたりするなどさまざまな症状が現れます。

起立性調節障害の原因も、やはり鉄と蛋白質の不足です。これらをしっかり取ることで、実はこの病気は意外とよくなるんですよ。治療薬には、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)や苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)などの漢方薬もあります」

―― このお子さんの場合はこれらの一つが原因と考えればいいですか。

「そうですね。このうちの一つ、あるいは合併していることも考えられます。血液検査をすれば大体わかりますので、一度受けてみてはどうでしょうか。処方された薬については、何を出されたのかにもよりますが、どうしても寝つけない場合には睡眠薬や軽い安定剤、不眠に効く漢方薬などを使って寝かせるというのも一つの方法です。特にうつ症状は見られないようですので、生活のサイクルが後退して登校するのが億劫になるという悪循環をどこかで切り替えるように意識してみてください」

――姫野先生、ありがとうございました!

【姫野友美医師 プロフィール】
1954年 静岡県生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
九州大学医学部付属病院心療内科、Mayo clinic Emergency Room (U.S.A)Visiting Clinician、都立広尾病院、東邦大学大橋病院麻酔科、木原病院、テーオーシービル診療所などを経て、2005年ひめのともみクリニック開設、2006年日本薬科大学漢方薬学科教授就任。著書に「女の取扱説明書」(SBクリエイティブ)、「心療内科に行く前に食事を変えなさい」(青春出版社)など。

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今回お話を伺った姫野先生も出演する「主治医が見つかる診療所」。明日4月25日(木)の放送は、我々のあらゆる活動を支えている「呼吸」がテーマ。現代人の多くが陥っている深呼吸の落とし穴や、若々しい体を作るための呼吸法、芸能人達の肺活量と肺年齢の検査結果など、意外な情報盛りだくさんでお届けします!

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