天井にヤモリがびっしり! 竹中直人の忘れられない “旅” の思い出

公開: 更新: テレ東プラス

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BSテレ東で放送中の土曜ドラマ9「やじ×きた 元祖・東海道中膝栗毛」(毎週土曜 夜9時)。十返舎一九による江戸時代最大のベストセラー小説「東海道中膝栗毛」を原案に、元役者のお調子者"喜多さん"こと喜多八(和田正人)、芸術家気取りのエロおやじ"弥次さん"こと弥次郎兵衛(松尾諭)の男同士二人旅をコミカルに描く"相棒(ブロマンス)時代劇"。

ペットであり相棒のモルモット・大福とともに、"やじきた"コンビの奇妙な旅を追いかけ、面白いエピソードを執筆していく作家・十返舎一九を演じるのが竹中直人。自ら映画化も考えたことがあるという作品の魅力や、"旅"にまつわるエピソードなどを語ってもらいました。大の映画好きとして知られる竹中さんオススメの「旅したくなる映画」も要チェック!

いつか「やじきた」を映画化したかった

――映画監督でもある竹中さんは、"やじきた"コンビの物語を映画化しようと思われたことがあるそうですね。

「そうなんですよ。15年ぐらい前に映画化してみたいと思ったことがあります。"やじきた"を描いたある漫画を読んだときに、"死"に向かって旅をしている弥次さんと喜多さんの姿が浮かんできました。黄泉の国にいくような不思議な世界観。2人が道中で出会う女性も霊だったりして、面白いけど怖い。十返舎一九が持つ闇の部分や、ただ明るいだけじゃないホラー色も入れた"やじ×きた"を描いてみたい。その当時は、僕は弥次さんを演じたかったんですけどね」

――今回の"やじ×きた"は、ダークではなく爆笑必至のコメディ色が強いですね。

「面白いですね。現場で見ていても、2人(和田正人&松尾諭)が役を超えて芝居をしているようなイメージ。やっぱり役者が楽しそうにやっている姿はいいですよね」

――俳優が役を超える瞬間とはどんなときですか?

「言葉にするのは難しいですが、監督や共演者との相性があると思います。相性がいいから全てがいいというわけではないし、むしろ相性が悪いからこそ化学反応を起こして上手くいくこともありますから。こればっかりは、やってみないと分からないですね」

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――本作で十返舎一九の"相棒"はモルモットの大福くんですが、竹中さんにとっての"相棒"は?

「老眼鏡です。これがないと何も見えなくなったので(笑)。撮影の時以外はかけています。映画館に行くときの必需品ですね」

――視力の変化と共に、劇場で映画を観る時の座席の位置も変わってきましたか?

「観る場所は、一番後ろの一番端。これは昔から変わりません。劇場が大きいと、真ん中は落ち着かないんですよ。比較的小さければ真ん中に座ることもあります。
昨日は仕事が早く終わったので『ウトヤ島、7月22日』というテロ事件を描いた作品を観に行きました。映画館が小さかったので真ん中の席を選びました」

過酷な場所でも順応! 忘れられない旅の思い出

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――やじ×きたコンビと、それを追う十返舎一九×大福くんコンビは諸国を旅しますが、竹中さんご自身の"旅"にまつわる印象的な思い出は?

「モリで魚を獲る原始的な漁をする人を訪ねる番組で、地図にも載っていないような島に行ったことがあります。島にはホテルがないので地元の方の家に泊まったんですが、天井にヤモリがびっしり張り付いていて。とてもじゃないけど寝られないぞと(笑)。トイレにもドアがないし。でも、人間というのはすごいもので、2、3日するとその環境に慣れるんですよね。1週間ぐらい滞在しましたが、今でもすごい経験をしたなと思いますね。

旅番組で3週間ぐらいメキシコに行った時もキツかったな。のどを鳴らすクセがあるカメラマンとずっと一緒で。特に俺のアップを撮る時に、そのクセがひどくなる(笑)。録音部さんは大丈夫なのかなと、ずっと心配していました。途中で録音機材も壊れちゃうし(笑)。あれも不思議な体験でしたね」

――よく行く愛着のある土地はありますか?

「時代劇の撮影などで京都に行く機会が多いので、もうすっかり馴染んじゃって。特に町家の建築が並んでいる押小路通が大好き。今は周りにビルが建って明るくなりましたが、昔はいい感じに薄暗くて。そこを一人で歩くのがたまらなくよかったんですよね。

舞台で良く行くのは大阪。空堀商店街に必ず足を運びます。最初に行ったのは27歳の時。お笑いでデビューして、この先どうなるか分からなかった頃でしたが、中島らもさんにかわいがってもらっていて、空堀商店街も、らもさんに連れて行ってもらいました。当時はまだ酒が飲めなくて、それでもらもさんとギャーギャー騒いで遊んでいたことを覚えています。長い商店街をらもさんと2人だけで歩いたりして。あれは、なんかロマンチックでしたね」

――大阪といえば、寺尾聰さんと共演した「事件屋稼業2」でもロケをされてましたね。

「よく知っていますね(笑)。寺尾さんとの共演はとても楽しかったです。久しぶりにハードボイルドをやることができてうれしかったし、谷口ジローさんの世界観が好きなので思い出に残っています。

昭和を感じる景色はいいなと思いますね。10年ぐらい前にロケで中国の北京に行った時、舗装されていない道にデパートが建っていたんですよ。そこを車が通過すると土煙が立って、『これ昭和の感じだな』と感動したことを覚えています。上海も、車のクラクションがうるさいし、バイクの排気ガスなどで煙っている感じで、最初は嫌でしたが3、4日経ったら慣れてきちゃって(笑)」

――島のお話もそうでしたが、竹中さんは順応性が高いですよね(笑)

「最終的に馴染んじゃうんですよね(笑)。結局、上海もドラマチックで素敵な街という印象に変わりました。他には、アメリカ・ニューメキシコ州のサンタフェも良かったですね。画家のジョージア・オキーフが晩年に住んだ町。まさか自分が行けるとは思ってなかったので、うれしかったです。そこにロケで2ヵ月ぐらい滞在し、毎日が夢を見ているような時間でした。後に、宮沢りえさんの写真集で有名になりましたけど(笑)」

旅での贅沢な時間に欠かせない"相棒"

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――仕事での旅のエピソードがたくさん出ましたが、プライベートでも旅はされますか?

「撮影でいろんなところに行くので、個人的に旅をすることはあまりないですね。家族で旅行したりはしますが、部屋にこもって何かしていることの方が多いです」

――竹中さんの"旅"に欠かせない必需品は?

「BOSEのスピーカーは、絶対に持って行きます。これも僕の"相棒"。ホテルの部屋のカーテン全開でスピーカーから音楽を流して、白のグラスワインなんかを飲みながら夜景を見る。これは贅沢な時間です。BOSEのスピーカーは重低音の響きがたまらなくいいんですよ。ただ、あまり大きな音を出すと隣の部屋の人に迷惑をかけるから気を付けなければいけないですけど(笑)」

――そんな至福の時間に聴く音楽は?

「ヒップホップ、ジャズ、ブルースetc...、いろいろ聴いていますよ。中でも映画音楽が一番好きかな。エンニオ・モリコーネとかいいですよね」

――これまで旅をされた中で、いつかご自身の監督作品の舞台にしたいと思った場所はありましたか?

「能登半島ですね。能登の町のどこか寂しい、港の風の中を一人の女性が歩いている感じが、つげ義春さんの世界に合うような気がして。大好きなつげさんの世界観を撮りたいので、能登はいいなと思いますね」

竹中直人オススメ「旅したくなる映画」

この「やじ×きた」ももちろんですが、映画好きの竹中さんに、観たら思わず"旅"したくなるというオススメの映画をうかがいました。

『パリ、テキサス』
(1984年/西ドイツ・フランス)
「男の一人旅を描いた作品。ライ・クーダーの音楽をバックに延々と歩くんです。本当に孤独ですが、とてもドラマチック。男の一人旅も悪くないぜ、と思えるような映画ですね」

『カリフォルニア・ドールズ』
(1981年/アメリカ)
「ロードムービーと聞いて思い出すのがこれ。女子プロレスをテーマにした作品で、ピーター・フォークがマネジャー役で出演しています。ロバート・アルドリッチ監督の遺作で、すごく切ないし悲しいですが、とてもいいんですよ」

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京都からやってきた"相棒"のモルモット・大福くんとの久々の再会に、「ありがとう!わざわざ来てくれたんだね」と優しい笑顔に。大福くんに耳をよせ「うん、うん」と何かを聞き取った竹中さんは、声色を変え「竹中くんがとっても優しくて、いっぱいかわいがってくれて、楽しい現場でした!」と撮影中の大福くんの気持ちを代弁してくれました。"やじきた"コンビはもちろん、"十返舎一九×大福"コンビにもご注目!

<衣装協力>

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やじ×きた 元祖・東海道中膝栗毛
【放送日時】BSテレ東 毎週土曜 夜9時
【出演者】和田正人、松尾諭、竹中直人
案内人/語り:瀧川鯉斗
番組HP:https://www.bs-tvtokyo.co.jp/yajikita/

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