未成年も被害に? “歌舞伎町ぼったくりバー” 正しい対処法

公開: 更新: テレ東プラス

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離婚調停や借金のトラブル、相続問題...。30代、40代にもなると、こうした問題に直面する場合もあるが、誰かに相談するといっても、「法律事務所」と聞くと、どうにも敷居が高い。ついでに相談料も高そうだ...などなど、二の足を踏む人も多いのでは?

しかし、振り込め詐欺に代表される特殊詐欺事件など、自分ではなくとも家族の誰かが事件に巻き込まれることもある。備えあれば憂いなし。"いざ"という時に備え、弁護士について基礎知識を備えておく必要があるだろう。

それでは、法律事務所には普段どんな相談が舞い込み、どれくらいの費用が必要なのか――。

4月13日(土)より、BSテレ東でスタートする「真夜中ドラマ 歌舞伎町弁護人 凛花」(毎週土曜深夜0時)。ひょんなことから六本木の法律事務所を追われ、父親が経営する歌舞伎町の法律事務所で働くことになった女性弁護士・凛花(朝倉あき)が、キャバクラ嬢や風俗嬢、ホストらから舞い込んでくる依頼と向き合い、成長していく姿を描いていく。

そこで今回「テレ東プラス」が、本作で監修を務める日向一仁先生(東京渋谷法律事務所)を直撃! かつて歌舞伎町で大問題となった"ぼったくり被害"などについて、対処法を伺った。

未成年がぼったくり被害に...

――弁護士さんのもとに舞い込む相談はどんな案件が多いのでしょうか?

「私の事務所の場合は、離婚や相続、交通事故、借金問題、中小企業の経営者から契約や労務管理に関する相談、不動産会社からの不動産管理に関する相談などが多いですね。もちろん訴訟もあります。今回のドラマの主人公・凛花が最初に勤めていたような、大企業をクライアントにしたゴージャスな法律事務所で颯爽と――というよりは、個人や中小企業の経営者をクライアントとして、日常的な問題から訴訟まで様々な案件に対応するのが主な仕事になります。またドラマでは1つの案件だけを集中的にやって、それが解決すると次の事件に取り組むという感じで、しかも弁護士自ら探偵のように調査していますが、残念ながらこのあたりは実際の弁護士業務とは違うかなと思います。多くの弁護士は同時に何十件もの案件を抱えていますし、実際、私一人でも30件ほど担当していますので、各事件の進行を確認しつつ、日々解決に向けて取り組んでいる感じです。これに加えて、毎日法律相談もありますので、結構忙しいです」

――ドラマの第1話は、ストーカーに悩むキャバクラ嬢からの依頼が舞い込みます。日向先生が勤務される渋谷でも、そういった依頼はあるのでしょうか?

「正直なところ、私の事務所では、ストーカー被害に関する相談はそれほど多くありません。これは想像になってしまいますが、ストーカー被害の場合、被害者が警察へ直接相談して、ストーカー規制法(2000年制定。2016年改定)で対応するケースが多く、弁護士に依頼して、さらに慰謝料を請求するケースはそれほど多くないのではないかと思います。ストーカー被害の場合、実害を止めることが最優先になりますので。ただ、職場内や学校内で執拗に絡まれている場合では、警察に相談して事を荒立てたり、相手方との関係を悪化させたりしたくないがどうしたらいいかといった相談が少なからずあります。セクハラ事件になっている場合もありますね。ドラマに出てくるキャバクラも、そこで働く女性にとっては職場ですし、お客さん商売ですから、弁護士に相談する場合もあると思います」

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――舞台となる歌舞伎町は東洋一の歓楽街。ちょっと特殊な環境だとは思いますが、どんな相談が多いと想像されますか?

「東京都のいわゆるぼったくり防止条例(2014年改正)や新宿区の客引き禁止条例(2016年改正)ができて取り締まりが厳しくはなったとはいえ、ぼったくりがあれだけ社会問題になったのに、ついつい怪しい店に行ってしまう人は未だにいるかもしれませんので、料金に関する相談はまだありそうですね。そもそもぼったくりをするような悪質な店は、条例で禁じられても巧妙に対応するケースもありそうですし、親密な態度に油断してドリンクの値段がメニューに表記してあっても見ない人がいるかもしれません。店側から『値段を見ていないのはお客さんの責任。メニューはテーブルに置いてあったし、説明もしたし、料金は分かって注文したのでしょう』と言われたら、反論するのは相当厳しいと思います。ぼったくり対策で、入店時からのやりとりを録音しておくという防衛方法もあるようですけど、楽しく飲もうとしている方たちに、そこまで求めるのは難しいですよね。また、夜の繁華街ならではの相談は、ぼったくり以外にもあると思います。お金の貸し借りなどの金銭トラブルも多い印象です」

――実際のぼったくり被害というのはどのようなものでしょうか?

「"ぼったくり"というのは、相手を騙して安いと思わせ不当に高い金額を請求することですので、刑法だと詐欺罪に当たる可能性があります。ただ、詐欺罪は立証のハードルが高いこともあり、条例レベルで対応しているのが実情です。仮に弁護士を立てても、費用との兼ね合いを考えて泣き寝入りする人も多いのかもしれません。以前は、何十万円と請求される場合もありましたが、最近は10~20万円と"払えなくはない"という絶妙な額を請求されるケースもあるようです。"大ごとになって家族や会社と揉めるぐらいなら払ってしまおう"、学生さんであれば"親や学校に知られて怒られるくらいなら払ってしまおう"という気持ちになってしまうのかもしれませんね」

――そういったトラブルの場合、弁護士費用はどれくらいかかるものなのでしょう。

「例えば上記のような料金トラブルの場合、事案によっても料金は異なりますが、ぼったくられたことを証明するのが困難なことも多いですし、弁護士を入れて交渉すると、着手金が10万円~20万円程度、さらに交渉の結果、減額できた経済的利益に応じて10~20%前後の成功報酬を弁護士に支払うことが多いのではないかと思います。また、裁判を行うとなると、追加の着手金などもかかるので、10~20万円程度の被害額を返してほしいという場合は、弁護士に依頼することを断念してしま人も多いのではないかと思います」

――弁護士を入れないと泣き寝入りということでしょうか?

「いえ、決してそうではありません。費用対効果が望めない場合、相談者ご自身でもできる書面の作り方や簡易裁判所での手続などを弁護士が教えることもできます。今は無料相談をおこなっている法律事務所も多いので、弁護士に交渉を任せた方が良いのか、それとも自分でやった方が良いのか、その場合には、どのように進めれば良いのかということを相談してみても良いでしょう。ドラマに出てくる弁護士のように格好良くはないかもしれませんが(笑)、どの弁護士も"困った人の役に立ちたい"という思いはヒロインの凛花と一緒です」

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――ほかにも、歌舞伎町などの歓楽街で多い案件はありますか?

「金銭トラブルであれば、最近はクレジットカードに関するご相談も多いですね。クレジットカードを店員さんに渡したら別の店で決済されていた...とか。不正に使われたら、すぐにカード会社に連絡をしてください」

――4月は入学や就職、転勤・異動などお酒を飲む機会も多いので気をつけたいところ。未成年でも被害に遭うケースがあると聞きます。注意すべき点はありますか?

「未成年は飲酒できませんので、そもそもお酒を飲みに行ってはいけません。店が未成年とわかって飲酒させた場合も法に触れます。それでも何らかの事情で高額な請求を受けるなどのトラブルに遭ったという場合には警察や弁護士に相談してみてください。成人の場合でも、とにかくぼったくりをするような店には行かない。それだけです。お客さんが店側の提示する料金を承諾してサービスの提供を受ければ、原則料金の支払い義務が発生しますので、まず料金を確認することが大事だと思います。頼みもしないお酒や料理が出てきていないか、お店の女性が勝手に注文していないかなど、気を付けたほうが良いでしょう」

――ただ、それはそれで、全然楽しくなさそうですけどね(笑)。

「(笑)。どこまでやったら法に触れないのか、警察に捕まらないのか...店側もよく研究しているので、ぼったくりの被害を聞くような繁華街で、料金が分からないような怪しい店には絶対に行かないこと! これに尽きます。今は飲食店の情報はネットにたくさんありますから」

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君子危うきに近寄らず。とはいえ、歌舞伎町のような歓楽街で遊ぶ場合、店の見極めは難しいが、とりあえずは酩酊した状態で店選びをしない、怪しそうな店に入らない、それが鉄則。もしも新しい店を開拓したいのなら、早い時間から探しましょうということですね。

【弁護士・日向一仁(ひゅうが・かずひと)プロフィール】
東京渋谷法律事務所(http://www.tokyo-law.jp/)・東京弁護士会所属。平成21年10月、銀座の共同事務所で独立。平成24年5月、渋谷で「東京渋谷法律事務所」を立ち上げる。取扱分野は、民事事件全般(離婚事件、損害賠償請求、不動産紛争、相続等)・労働問題・交通事故。企業法務については渋谷周辺の企業を中心に、労務管理やIT関連の契約や紛争対応などに主に取り組んでいる。

そしていよいよ4月13日(土)深夜0時スタート! 真夜中ドラマ「歌舞伎町弁護人 凛花」(BSテレ東)第1話の気になる内容は...。

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【第1話 あらすじ】

【六本木ゴージャス法律事務所】の美しい女弁護士・美鈴凛花(朝倉あき)は、年商100億円の大手企業と顧問契約を結び、自他共に認めるやり手弁護士として、順風満帆な日々を送っていた。
そんなある日、凛花の父であり弁護士の美鈴花太郎(渡辺裕之)が失踪してしまったと、花太郎の弁護士事務所で働いている牛島連司(武田航平)から連絡が入った。花太郎が経営しているのは、新宿歌舞伎町に居を構える【美鈴弁護士事務所】。この事務所を凛花に任せると書き置きを残し、行方をくらましたのだ。凛花は、歌舞伎町に入り浸り家族を顧みてこなかった父・花太郎を嫌い、距離をおいていた。母親が亡くなったのも、父の所為で心労が絶えなかったからだと...。凛花はそんな父と確執があり、歌舞伎町の街が好きではなかった。

そこに、歌舞伎町のキャバクラ【ゴールドエンジェル】のキャバ嬢・りお(出口亜梨沙)が、ストーカー被害の相談にやって来る。凛花は成り行きで仕方なく、この一回だけだと歌舞伎町での仕事を担当する事に。上品で煌びやかな六本木との違いに困惑しながら、歌舞伎町で調査をしていく凛花だったが、忍び寄る犯人の魔の手に怯えるりおを見て、次第に使命感が沸いてくる。そして凛花は、姿を見せない犯人を誘き出す為に、ある作戦を企てる...。

4月13日(土)深夜0時スタート! 真夜中ドラマ「歌舞伎町弁護人 凛花」(BSテレ東)をどうぞお楽しみに!

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