160人前!? 色鮮やかな”究極の箱寿司”岩国寿司を体験:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

お祭りに独学で覚えた押し寿司を持参!

毎年、アルゼンチンでは1万人以上が参加する盆踊り大会があります。アルゼンチンに住む日系人は約6万5千人。その7割は沖縄にゆかりがあるそうで、祖先たちは1900年代に仕事を求めてアルゼンチンに移住。日系人がアルゼンチンの人々と親睦を深めるために盆踊り大会を行ったことが発祥だと言います。

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この南米最大級のお祭りでニッポン好きを募集したところ、押し寿司を愛してやまない男性を発見!

お祭りの会場にもサーモンと卵焼きの押し寿司を持ってきていたフェデリコさん(38歳)。早速自宅を訪れると、独学で覚えた押し寿司でもてなしてくれました。

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しかも料理としての押し寿司だけでなく、「お米がいつニッポンにきたか」から始まり、郷土料理としての押し寿司の成り立ちや日本の歴史までびっしりとノートに書き込んで研究していました。「歴史を学んでから料理を作ると、その時代を感じることができます。寿司オタク(笑)」と熱く語るフェデリコさん。

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普段は、ブエノスアイレスの料理教室で和食を教えていますが、実は本物の押し寿司を食べたことがありません。ではなぜ、押し寿司を好きになったのか...そこにはある理由がありました。

フェデリコさんが小さかった頃、両親は食堂を経営していて、そこでは世界の様々な料理を出していました。その中には和食も含まれていたのです。お父さんは「いつか家族で和食レストランを開きたい」という夢を持っていましたが、11年前に病気で他界。その夢が叶えられることはありませんでした。昔から寿司に興味を持っていたフェデリコさんは、ニッポンに行って寿司のことを学び、父の代わりに夢を叶えたいと思っていました。そこで今回、自称「寿司オタク」のフェデリコさんをニッポンへご招待!

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160人前!? 岩国寿司作りを体験!

アルゼンチンから30時間かけてニッポンにやってきたフェデリコさん。早速、山口県岩国市へと向かいます。岩国市には岩国寿司という日本一大きな押し寿司があり、なんと一つの岩国寿司は160人前にもなるそう。

「岩国寿司を食べてみたい。食べることができたら最高!」と話していたフェデリコさんの願いを叶えるため、番組はフェデリコさん来日の2週間前に岩国市の観光課に連絡を取り、岩国寿司を作ることができるかどうかを問い合わせました。すると、観光振興課の小田将さんが、地元の料理教室「桜工房」さんに協力を要請。

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桜工房は江戸時代の建物をそのまま使っており、普段は講師の森本佳代子さんが地元の方々に料理を教えています。

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フェデリコさんの話をすると、「食べるか、みんなでさ。みんなで食べようよ!」と快く岩国寿司作りを引き受けてくださった森本さん。

そしてフェデリコさん来日1週間前には、森本さんがお友だちと作戦会議を開き、段取りを話し合っていました。そこに登場したのが日本一の大きさを誇る岩国寿司用の押し箱。想像以上の大きさにスタッフもビックリ!

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なんと岩国では、結婚式の際、ウェディングケーキの代わりに岩国寿司を振る舞うカップルもいるとか。この岩国寿司、もとは岩国初代領主・吉川広家が合戦に備えて保存の効く食べ物として作らせたもので、それを山の上の城まで運ばせたことから"殿様寿司"とも呼ばれています(※諸説あります)。

いよいよフェデリコさんがやってくる日。朝8時から桜工房には森本さんを始め、料理教室の生徒さんや友人が続々と集まり、15名が集合。歓迎の気持ちを表すために、森本さんは簡単なスペイン語も調べて貼り出しました。

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さらにトランペットを持った男性まで登場。"伸ちゃん"こと小笠原伸吾さんが、「鳴り物も必要じゃろう」ということで、応援に駆けつけてくださいました。

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観光課・小田さんお手製のアルゼンチンの旗を持ち、全員外で待っていると、そこへフェデリコさんが登場! 伸ちゃんが演奏する陽気な「聖者の行進」に迎えられ、フェデリコさんは「信じられない!」と大感激!

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ひとしきりフェデリコさんの挨拶が終わると、午前10時から岩国寿司作りがスタート! キッチンには160人分の材料がきれいに準備してありました。

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5升のお米と50個の卵を見て、フェデリコさんも「そんなに使うんですか!?」と驚いた様子。

岩国の代表的な食材を調達

そしてもう一つ、岩国寿司に欠かせない食材がありました。それは「岩国れんこん」。観光課の小田さんが、「採れたてを食べてもらいたい」と、フェデリコさんをれんこん農家・髙嶋龍さんの畑へと案内してくださいます。

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フェデリコさん、初めてのれんこんの収穫です。岩国のれんこんは水掘りれんこんと違い、土を掘って収穫します。泥に足を取られながらも苦労して立派なれんこんを掘り出しました。

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一方、桜工房は大忙し。卵をホットプレートで錦糸卵にし、お米を炊き、具材の準備にてんやわんや。岩国寿司の味の決め手となる合わせ酢作りは森本さんの仕事です。分量は体で覚えているそうで、手際よく合わせていく様子を、生徒さんたちものぞき込んで学んでいました。

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れんこん掘りから帰ってきたフェデリコさんも、早速仲間に加わってお手伝いします。甘く煮たしいたけを薄くスライスする作業では、さすが料理教室の先生だけあって手際がよく、生徒さんたちもその速さにビックリ。

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準備開始から6時間が経過した午後4時。すべての具材が揃い、いよいよ押し箱に詰める準備が完了しました。午後5時になると桜工房に続々と人が集まります。森本さんはご近所にも声を掛けていたので、「郷土料理とはいえ、普段なかなか岩国寿司を見ることはできない」とばかり、子どもたちもやってきました。れんこん農家の髙嶋さんを始め、総勢40名が集まってくださり、着物に着替えたフェデリコさんの挨拶が終わると、再び作業開始です。

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森本さんに教えていただきながら、皆さんと協力して作った色鮮やかな材料を押し箱に敷き詰めていきます。押し棒でシャリを平らにし、錦糸卵、具を次々と散りばめ、最後に岩国れんこんをのせて1段目が完成。

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同じ作業を5段繰り返します。慣れてきたフェデリコさん、4段目までドンドン詰め終えると、最後の1段はずっと興味津々で作業を見つめていた子どもたちにも声を掛け、一緒に完成させました。

この後は、大事な中の空気を抜く作業が残っています。これだけ大きな寿司なので、なんと人が上にのって圧力をかけるのです。食べ物の上に乗るのは少し気が引けるというフェデリコさんですが、伝統に従って上に乗ると、「お~!」と歓声が沸き上がりました。足袋を履いた男性が乗るのも岩国の伝統!

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最後は型を抜く作業です。中が密封状態のため、かなりの力が必要。地元の皆さんからも「がんばれ~」と掛け声がかかります。最後にそーっと型を抜く時には伸ちゃんのファンファーレも鳴り響き、一層ムードを盛り上げてくれました。拍手と歓声の中、岩国寿司の完成です。

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日本一大きな岩国寿司は、高さ18cm、横幅43cm、そして重さなんと7.5kg! 殿様寿司と呼ばれるのにふさわしい迫力。

「驚きと感動と何よりみなさんと作れたことが本当に嬉しいです」とフェデリコさん。大きな包丁で一人前ずつ切り分け、みなさんに配ります。口々に「おいしい!」との感想が。

残った押し寿司はパックに詰めてお土産に。ご近所さんにも、フェデリコさんが自ら配って回りました。午後8時になり、ようやく桜工房の方々と一息つきます。地元の銘酒「獺祭」で乾杯。定番である「大平」という汁気の多い煮物と一緒に岩国寿司をいただきます。

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「このお寿司は一人ではできません。みなさんの愛情もたっぷり入っています」というフェデリコさんに、「楽しかったですね」と言葉を贈る森本さん。会の終わりは、フェデリコさんがアルゼンチンから持ってきたマテ茶を飲み「すっごい苦い!(笑)」などと言いながら、とても盛り上がりました。

「またマテ茶を飲みましょう!」再会を約束

翌日。錦帯橋の前にお世話になったみなさんが集まっていました。「前々からの準備。そして昨日の素晴らしい一日。すべて心に刻み、決して忘れません」と話すフェデリコさん。アルゼンチンのワインやお菓子のほか「これを岩国に置いていきますので、いつかまたマテを飲みましょう」と9年前から使っているマテ茶カップをプレゼント。BGMには、もちろん伸ちゃんのトランペットが鳴り響きます。

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岩国市観光課からもフェデリコさんにサプライズプレゼントがありました。岩国寿司の押し箱です。

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箱の中には、みなさんからの寄せ書きも。「いい出会いだったね」と話すみなさんに、フェデリコさんは日本語で「一期一会」とコメントし、その目には涙が...。

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みなさんも目を潤ませていました。最後に全員とハグを交わし、伸ちゃんの「いい日旅立ち」を聞きながら岩国を後にします。岩国市の皆さん、本当にありがとうございました

憧れの名店「吉野寿司」へ...

続いてフェデリコさんが向かったのは大阪。まずは"ウェルカムサプライズ"でとある場所へ。その場所とは、創業1841年、今年のミシュランガイドにも掲載されている大阪寿司の名店「吉野寿司」。「信じられないです! 心臓がバクバクしています!」とフェデリコさん。それもそのはず、「吉野寿司」はフェデリコさん憧れのお店だったのです。

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押し寿司はサバやアジが主流でしたが、ここ吉野寿司が鯛や穴子など高級魚を使った箱寿司を生み出し、その美味しさが評判を呼び、いつしか大阪寿司とも呼ばれるようになりました。二寸六分の型(一辺約8cm)から生み出される箱寿司は、すべての具に「煮る」「焼く」「漬ける」などの職人の技が施され、二寸六分の懐石とも。

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実はフェデリコさん、アルゼンチンで吉野寿司と同じサイズの押し箱を手作りして使っているほど。そこでお店にフェデリコさんの熱意を伝えたところ、伝統の技を見せてもらえることになりました。出迎えて下さったのは7代目の橋本卓児さん。

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吉野寿司はそれぞれのネタに熟練の職人が担当として付き、常に同じ味を出せるよう仕込みをしています。肝心なのはお米。「大阪寿司はシャリに6分の味」といい、お米を昆布で炊くことで旨味を染み込ませ、にぎり寿司よりも多めの砂糖が入った合わせ酢を加え、シャリにしっかり味をつけるのが特徴。米が柔らかくなり、保存性も高まります。

「この合わせ酢の配合は秘伝で、店ごとのトップシークレット」と話す橋本さん。ちょっと残念そうにするフェデリコさんに、「後で教えてあげる」との嬉しい一言が。

箱寿司の主役である焼き穴子は、なんと3kgの重しを置いて焼きます。そうしないと焼いているうちに穴子の身が上がってきてしまい、押し寿司では押せなくなってしまうからとのこと。具はすべて、凹凸なく平らにすることによって押し寿司の酸化を防ぎます。すべての具に、178年に渡る職人の知恵と経験が詰まっていました。

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いよいよシャリと具を箱に詰めて、押し寿司を作るところを見せてもらいます。慣れた手つきで手早く押し箱に詰めていく橋本さん。その一つ一つの動作を熱心に見つめるフェデリコさんは、あっという間に出来上がった押し寿司の美しい色合いや形に感動!

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続いては、最も知りたかった職人の技、押し寿司の「切り方」を見せていただきます。アルゼンチンでは、どうしてもシャリがスパッと切れずに悩んでいたフェデリコさん。寿司を切るために特別な包丁を使うことは知っていましたが、アルゼンチンでは手に入らないため、普通の包丁で切っていました。

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この寿司切包丁は、その名の通り巻き寿司や押し寿司を切る際に使う包丁で、指2本で刃の根元に近い柄の部分を持ち、力を抜いて独特の手首のスナップで切っていきます。そして鋭く切られた米は再びくっついてしまうため、切断面をすぐに離します。フェデリコさんは、その速さと切断面の美しさに再び感動!

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いざ目の前に「どうぞ」と出されても、しばらくは押し寿司に目を奪われ、じっと見つめるばかりのフェデリコさん。「こんな日が来るなんて今でも信じられません」と言いながら、生まれて初めて穴子の押し寿司をいただきます。

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「素晴らしい! とても味わい深いお寿司です」と何度も口にしながらじっくり味わっていただくフェデリコさん。そんな彼を見守る橋本さんも嬉しそうでした。

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橋本さん、本当にありがとうございました!

全国の押し寿司巡りを堪能

このほかフェデリコさんは、高知県南国市のさばを丸ごと一匹使ったさばの姿寿司、兵庫県淡路島で獲れた天然穴子を使った穴子箱寿司、岡山県岡山市の備前ばら寿司など、時間の許す限り各地の郷土寿司を堪能。

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最後に「旅を通して感じたのは、寿司の魅力は歴史だけでなく、次の時代にその味を残そうとしている人がたくさんいるということです」と話してくれたフェデリコさん。またの来日をお待ちしています! そしてご協力くださった皆さま...本当にありがとうございました!

そして今晩6時55分放送「世界!ニッポン行きたい人応援団 スペシャル」では...。

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趣味で西洋家具を作っていたスペイン人男性が、10年前に専門書で日本の伝統工芸「江戸指物」を見て、その美しさに一目惚れ! 釘などを使わずに木を組み合わせて作る和家具・江戸指物。本などを参考に独学で作っているというスペイン人男性が「日本で本物の技術を学びたい!」というのでご招待。まず向かったのは東京・台東区。江戸指物を作り続けて40年の職人を訪ねます。また、新潟・長岡市の鍛冶職人に、木材を彫るノミ作りを見せてもらうことに...。果たして今宵は、どんな感動場面が誕生するのか!

さらに、新企画「どうして日本語を習っているんですか?」もオンエア。ルーマニア、メキシコ、フランスの至るところで日本語を習っている人を大捜索します。どうぞお楽しみに!

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