アナコンダに空からサメ? 『午後のロードショー』の作品選定が独特のナゼ

公開: 更新: テレ東プラス

cinema_20190331_01.jpeg※渡邉一仁氏(左)、岡本英一郎氏(右)

テレビ東京で毎日放送されている「午後のロードショー」(毎週月~金曜午後1時35分)。古き良き名作からアクション、B級パニック映画までバラエティーに富んだ作品が放映され、根強いファンが多いのが特徴だ。今回は、「午後のロードショー」をはじめ、「サタ★シネ」(毎週土曜深夜3時15分)など、テレビ東京の映画枠に携わる編成局・映画部の渡邉一仁氏と岡本英一郎氏を直撃。他局とはひと味もふた味も異なる作品選びや裏話、そして、4月1日(月)夜9時から放映される「春の超大作シネマスペシャル 2大スター豪華競演!『ナイト&デイ』」の見どころについて聞いた。

北朝鮮のミサイル問題で、あの作品が差し替えに

――1996年4月にスタートした「午後のロードショー」(以下、午後ロー)ですが、毎日バラエティーに富んだ作品が放映され、ラインナップを楽しみにしている視聴者が多いと思います。作品選定はどのようにされているのでしょうか?

渡邉「お昼の時間を楽しく過ごしてもらうためにも、明るいトーンで、見終わった後はスッキリするような作品を多くラインナップしようと意識しています。テンポよく物語が進行していく作品であることもポイントでしょうか」

――「アナコンダ」シリーズや「シャークネード サメ台風」など、B級パニック映画を結構なスパンで放映している印象もあります。

渡邉「そうですね(笑)。アナコンダやワニなど、"巨大生物もの"は、一定のファンの方がいらっしゃいます。『アナコンダ』(1997)は、かつてゴールデンタイムで20%近くの視聴率を記録した作品です。いまだに根強いファンの方がいらっしゃるということで、午後ローでも何度か放映していますね」

――視聴者からの反響が多かった作品は?

渡邉「視聴率データはもちろん、昨年夏から公式Twitterのアカウント(@tx_gogoro)を開設していますが、そこで盛り上がるのは、やはり巨大生物ものなど特殊な作品が多いですね。今までで一番、Twitter上で反応が大きかったのは、昨年11月に放映したアーノルド・シュワルツェネッガー主演『コマンドー』(1985)でした」

――シュワちゃんが一番なのですね! 世代を感じます(笑)。「午後ロー」や「サタ★シネ」の作品を選定していく中で、何かご苦労されたことがあれば教えてください。

岡本「視聴者の皆さんを不愉快にさせてはいけない、不安にさせないことが大前提ですが、国際情勢と作品の内容がシンクロしかねない事態に陥ったことがあります。少し前になりますが、北朝鮮がミサイルを発射し、情勢が緊迫した時がありました。その翌日に放映を予定していたのが『エンド・オブ・ホワイトハウス』(2013)という作品でして...。北朝鮮のテロリストがアメリカの官邸を乗っ取り、極東から米軍撤退と核ミサイル発射コードの開示を要求し、"アメリカを焼け野原にしてやる"と核ミサイルをアメリカ国内で自爆させようとする内容だったのです。さすがに情勢的に問題があるだろうという判断に至りまして、放送直前でしたが急遽差し替えとなりました。ここまで国際情勢と映画の内容が被るということは今までなかったので、緊急に対応しました」

渡邉「さすがに放送の直前に差し替えとなると、編集などの物理的な問題があり、あの時は時間との戦いだった記憶がありますね」

岡本「国際情勢や災害などのニュースは逐一チェックをし、ラインナップに配慮するようにしています」

cinema_20190331_02.jpeg

最近のスティーブン・セガール問題

――最近、テレビで映画を放送する機会が減少しています。そんな中「午後ロー」は、月~金曜まで作品を放映するという貴重な放送枠ですよね。

渡邉「『午後ロー』の放送時間帯は、他局のほとんどが主婦層をターゲットとしたワイドショーを放送しています。当然ながら、ワイドショーに興味がない視聴者の方もいる。『午後ロー』は、そんな皆さんのために昔から存在しているんじゃないかと考えています」

――確かにちょうどいい時間に映画が放送されています。クラシックな作品の日もあれば、スティーブン・セガールが連続して登場する時も...(笑)。

岡本「セガール作品は確かに多いですね(笑)。『午後ロー』の視聴者の皆様は目も肥えていらっしゃるので、ゆるすぎる作品を放映すると、やはり視聴率に顕著に表れてしまいますね。特にセガールは、最近アクションをせずに自分語り多めで手を動かしているだけ...(笑)という作品もあるので、作品選びは慎重にしています」

――幅広いジャンルの作品が放送されるのも「午後ロー」の特徴で、他局にはない魅力ですよね。ジャンルは違えど、何か共通点などはあるのでしょうか?

岡本「家で違う作業をしていても、途中からすんなり入っていけるようなわかりやすいストーリーの作品が多いですね。ちょっとテレビの前を離れても大丈夫といったような...」

渡邉「そうなると、必然的にわかりやすいアクション系が多くなりますが、良い作品があれば、女性向けのサスペンス系もその都度取り入れています」

cinema_20190331_03.jpeg

――確かにテンポの良いアクション作品が多いですね。4月1日(月)はゴールデンタイムの放送となりますが、トム・クルーズキャメロン・ディアスの『ナイト&デイ』もアクションですね。こちらの見どころを教えてください。

cinema_20190331_04.jpeg
渡邉「物語の後半になりますが、スペインのセビリアで、トムとキャメロンがバイクに乗って繰り広げるアクションシーンは必見です。前半の高速道路でのカーチェイスと銃撃戦も見ごたえがあります」

岡本「トムが体を張った、すごいシーンです」

渡邉「『ミッション・インポッシブル』シリーズでスパイを演じるトムはおなじみですが、『ナイト&デイ』でもスパイ役を演じています。ただ、こちらのトムは『ミッション~』のイーサン・ハントとはひと味違いますね。もう少し肩の力を抜いて楽しめるかな、と思います。キャメロンとの軽快なやりとりも楽しいですよ」

岡本「作品のトーンが明るいので、新しい元号も発表されますし、4月のスタートにふさわしい楽しい作品だと思います」

――新元号発表日は、アクションでスカっと!ですね(笑)。テレビで映画を楽しむ、という文化はこれからも大切にしていきたいところですが、最後に「午後のロードショー」の今後の展望などがあれば教えてください。

渡邉「『午後のロードショー』は、今後も長く続けていきたいと思っています。テレビの前で2時間じっくり座っている人の割合は減少しているように思いますが、"今まであまり映画を見ていなかったけど、見たら面白かった"と言ってくださる視聴者の方も多くいらっしゃるので、今後も皆さんに楽しんでいただける作品をたくさんお届けしたいです。基本的には洋画ですが、可能であれば邦画もお届けしたいですし、懐かしい名作もどんどん放送していきたいですね。特に名作は、若い方にもぜひ観てほしいです」

岡本「映画を毎日無料で観ることができます!(笑) 日替わりでいろいろな映画を見て、家族と友人と楽しい時間を共有できるのはとても素晴らしいことだと思うので、この文化は残していきたいですし、観てくださった皆さんの心に何か残るといいですね」

――ありがとうございました。これからも『午後のロードショー』を楽しみにしています!

【最後に聞きたい! 渡邉さん、岡本さんのおすすめ作品は?】

●渡邉さん
「強く印象に残っているのは20代の頃に見た『ショーシャンクの空に』(1994)。主人公が刑務所に入っている時はとても悲惨ですが、最後は爽快な感じでエンディングを迎える、そういうタイプの映画が好きです。見終わったあと、清々しい気持ちになれる映画っていいですよね。最近ではアカデミー作品賞に輝いた『グリーンブック』(2019)も好きです」

●岡本さん
「自分の人生に強く影響を与えてくれた作品は、メル・ギブソン主演でスコットランド独立の話を描いた『ブレイブハート』(1995)ですね。デンゼル・ワシントン主演「タイタンズを忘れない」(2000)もマイベストのひとつです。何度見ても大好きな作品です」

【番組概要】
春の超大作シネマスペシャル 2大スター豪華競演!「ナイト&デイ
4月1日(月)夜9時放送!

カンザスからボストンへ向かおうとしていたジューン(キャメロン・ディアス)は、空港でロイ(トム・クルーズ)と名乗る謎の男性とぶつかる。偶然彼とは機内でも近くの席になり、その紳士的な対応に感激するジューン。しかし、彼女が化粧室に入った瞬間、ロイは機内に同乗していた敵を一掃する。そして、何も知らず席に戻ってきたジューンにパイロットを殺したことを告げると、飛行機を不時着させ、ジューンを薬で眠らせて姿を消す。それ以来、ジューンが危険な目に遭うたび、どこからともなく救出に現われるロイ。

そんな中、ジューンは彼がカンザスの研究所から重要な試作品を盗んだとしてCIAに追われる身であると知らされる。それでも彼女は自分の身を守ってくれるロイと行動を共にし、世界各地で過激な局面を切り抜けつつ、事の真相を追究していくのだが...。

PICK UP