続きはお風呂で!銭湯でしか読めない漫画「銭湯戦士 セイント☆セントー」が生んだビジネス効果

公開: 更新: テレ東プラス

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銭湯の浴室でしか読めない漫画があるってご存知でしょうか?
その名も「銭湯戦士 セイント☆セントー」。銭湯を愛するヒーローが活躍する月イチ連載の漫画です。読める場所は東京都内にある3つの銭湯、「萩の湯」「薬師湯」「寿湯」の浴室のみ。あらゆる情報が閲覧できるなか、作品の中身がネットに出回らないこの漫画は門外不出ならに"銭湯不出"。

seintosento_20190307_01.jpg▲銭湯を愛する戦士・セイント☆セントーが主人公

一度読み始めたら続きが気になり、また銭湯に通ってしまうというリピート効果も期待できます。これは面白いビジネス展開!ということで漫画が生み出すビジネス効果を探るため、「萩の湯」を訪ねました。

スマホ持参NGの浴室で、お客さんの目が集中する先は壁

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JR鶯谷駅から徒歩3分のところに「萩の湯」はあります。
出迎えてくれたのは経営者の長沼雄三さん。"銭湯浴室限定漫画"のアイデアの生みの親です。

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――「銭湯戦士 セイント☆セントー」は「萩の湯」「薬師湯」「寿湯」の浴室でのみ読める漫画ですね。

「そうです。稼業として銭湯経営をしていて、兄が『薬師湯』を、もともと僕が担当していた『寿湯』を弟が運営しています。その3つの銭湯でのみ連載中です」

――アイデアはどこから生まれたんですか?

「起源は壁新聞なんです。『寿湯』を継いで経営していた時、浴室に壁新聞を貼っていました。浴室ってスマホの持参はダメなんです。TVもない。なので、お客さんは壁にある読み物に目がいきがちなんですよ。けっこうな割合のお客さんが壁新聞を読んでいると分かり、浴室の壁は人の関心が集中するんだな~って」

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――言われてみればたしかに!

「銭湯の壁といえば富士山ですよね。富士山の絵が誕生したあと、多くの銭湯で富士山が流行しました。そんな中で誰かが下に広告を入れれば良いじゃないかと考案し、広告を入れる代わりに作成代を広告主が払おうということに。なのでかつて富士山の絵の下には広告がばーっと貼られて、その広告費を使って富士山の絵を描いてもらっていたんです(一部銭湯では今も掲載中)」

――富士山は広告によって支えられた絵だとは知りませんでした!?

「今は広告主が減り、絵師に作成代を払えなくなってきたので銭湯経営者が払うようになっているんですが......。つまり、昔から浴室の壁はお客さんの注意を向く場所だったんです。壁新聞を貼っていた時、お客さんの目を引くなら、ここで漫画を連載すれば面白そう!と思いつき、漫画を連載することにしました。面白いことをすればお客さんは満足してもらえるので、リピーターにもなってもられるかな~と。サービスの一環としてはじめました」

ジャンプの発売日を楽しみに待つワクワク感がある!

seintosento_20190307_05.jpg▲浴室の壁に貼っている「銭湯戦士 セイント☆セントー」。写真左はオリジナルの月刊壁新聞『萩の湯だより』

――漫画を連載したことでお客さんが増えた、など効果を実感したことは?

「う~ん、うちは飲食やサウナなどほかのサービスも展開していて、お客さんの来店理由は十人十色。『銭湯戦士 セイント☆セントー』のおかげで増えたとは断定できないんですが......。ただ毎月1日に最新号を張り替えるので、月末になると"駆け込み読者"は増えているみたいです」

――読者からの反応はありますか?

「子どもたちには特に人気です。子どもって基本的に漫画好きじゃないですか。僕らが子供の頃は『週刊少年ジャンプ』の発売日を楽しみにしていました。発売日が来ないかな~というワクワク感があった。でも今は、漫画雑誌が売れていなくなり、そういうワクワク感が少ないなか、子どもたちが月1連載の『銭湯戦士 セイント☆セントー』を楽しみに待ってくれている。実際に『萩の湯』の近くにある小学校では話題になっているみたいですよ」

seintosento_20190307_06.jpg▲作者のメソポ田宮文明さん(左)と長沼さん

――作者のメソポ田宮文明さんに依頼する際、お願いしたことは?

「メソポさんは銭湯好きなので、完全にお任せしました。僕のイメージとしては、お湯に浸かりながら漫画を読んでもらい、読み終わった時にはちょうど体が温まってもらいたいな、と」

――テーマを銭湯業界のお話に移らせてください。今、都内にある銭湯は年々減少の一途を辿っています。生き残るために銭湯はどう変化すべきでしょうか?

「僕が2001年に家業を継いだ時、毎年5%ずつお客さんが減っていました。お風呂付の家が多いので、減るのは当たり前ですよね。ただ、家にお風呂があっても銭湯に来るお客さんはいる。このお客さんは何を求めているのかというと、サウナなどの設備以外に、コミュニケーションや癒しを求めているんだと思います。だったらそのお客さんが喜ぶ施設作りをしないといけない」

――その施設作りのひとつとして「銭湯戦士 セイント☆セントー」はあるんですね。

「そうです。実際にSNSであるお母さんが娘さんに『銭湯戦士 セイント☆セントー』を読み聞かせているという投稿を目にしたこともあり、そういう母娘のコミュニケーションを銭湯が生み出している。ただお風呂に浸かるのではなく、プラス何かを与える場として銭湯が機能していかないといけないんです」

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【取材協力】
「ひだまりの泉萩の湯」
・住所:東京都台東区根岸2-13-13
・電話番号:03-3872-7669
・営業時間(お風呂):6:00~9:00(最終受付8:30)、11:00~25:00(最終受付24:30)
・営業時間(食事処):11:30~22:00
・定休日:第3火曜日
http://haginoyu.jp/

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