つらい! 辞めたい! はホント? 高収入銀行員の実態

公開: 更新: テレ東プラス

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真木よう子が演じるヒロイン・原島浩美が、正義感あふれる銀行員を演じるドラマBiz「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」(毎週月曜 夜10時)。「恐れながら申し上げます...」を決めゼリフに、どんな相手にも臆せず正論を吐き、大胆な発想と行動力で業績不振の支店を救う痛快ストーリーだ。

だが、実際のところ銀行員(総合職)は、本当にヒロイン・原島浩美のように己の正義を貫き、爽快に働けるものなのだろうか? そこで、第一線の営業の場で活躍している現役若手銀行マン3人にインタビュー。知られざる銀行マンの実情を、恐れながら申し上げてもらった!

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銀行はコネ入社が多い!?

――まずは、みなさんが銀行で働こうと思ったきっかけについて教えてください。就職活動をする中で、志望したのは"銀行オンリー"だったのでしょうか?

A「僕は銀行しか考えてなかったですね。例えばですが、製造メーカーに勤務して物を売る、という仕事は自分の中であまり考えられませんでした。その商品を長く愛する自信があるのか? 好きになれるのか? と思ってしまう性格なので」

B「僕はいろいろな業界に興味はありましたが、何かひとつの業種というよりも、さまざまな企業の社長さんとお話ができるという点で、銀行の営業という仕事にたどりつきました。今は楽しいし、ものすごく勉強になりますね」

C「わが家は親が銀行員でした。その姿を子どもの頃からずっと見てきたからか、"銀行で働く"というのがすり込まれていたというか、当たり前なのかなと思って就職しました」

A「銀行に入ってから知ったんですけど、親子で銀行員のケースは多く見られますよね。あとは、経営者の親を持つ銀行マンも多いかもしれないです」

――「お父さんの背中を見て自分も銀行員に...」すごくいいエピソードですね。でもここだけの話、「コネ入社?」という方もいるのでしょうか?

C「私は違いますよ(笑)。真っ当なルートで入行しています!」

A「僕もコネ入社ってマンガやドラマの世界の出来事なのかと思っていましたが、いざ入行したら"本当にいるんだ!"となりました」

B「わりと公然で(笑)。大きな取引先の息子さんだったり、あまり隠すこともなく皆が知っている事実みたいな感じですよね。そういったことは銀行だけでなく、どこの企業でもあることだとは思いますけど」

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――たしかにテレビ局でもちらほら見られますよね(苦笑)。皆さんが担当されているお仕事は、主に営業と伺いましたが。

C「私の第一ミッションは"営業で稼いでくる"ということですね」

A「同じく僕も元々の顧客を持たせてもらっているので、そちらの営業プラス、新規開拓を担当しています。支店の規模によって異なりますが、既存の取引先であれば、午前に2件、午後に2件と合計4件くらい1日にアポイントを入れるイメージですね。新規のお客様獲得となると、さらに電話営業やアポイントの数を増やさないといけないので、午前中はすべてそこに注力することになります」

B「外回りが入るとデスクワークができなくなってしまうので、お昼の時間を削ることも多々あります。5~10分でコンビニ飯をささっと済ませ、残りの時間を細かい仕事に充てたり...」

A「どこの企業も同じですが、銀行もいわゆる"ノー残業"の傾向が強いので、"○時までには帰る!"という決まりがあります。銀行では、仕事を持ち帰ることは厳禁なので、限られた時間の中でいかに片付けられるかが勝負になります」

C「私もだいたい朝8時から19時まで働いていますね。外回りしていると、内部の事務がどんどん溜まっていく一方なので、最初は時間のやりくりに苦労しましたが、今は比較的うまく回せるようになっているんじゃないかと思っています」

――実際に銀行に就職してみて、イメージの違いやギャップを感じたことは?

A「世間的に、"銀行はお堅い!"とよく言われますが、いやぁ~本当にお堅いです! 学生時代に自分が描いていた"お堅い"をはるかに超えてゴツゴツしていますね(笑)」

C「すごくよくわかります。自分が甘かったんですけど、"うわぁ~自分がいかに適当な人間だったのか"と考えを改めたほど...。すべてにおいて細かい!」

B「金融系は社内規定も厳しいのですが、それは当然として、まず私が驚いたのは、"印鑑の押し方"ですね」

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B「1組の書類を作る場合、印鑑を何ヵ所も押さないといけないので、流れ作業的な感じで"紙をめくって印鑑を押す"という繰り返しになるんですけど、そうなると、どうしても少しずつズレが生じるんですね」

A「最初は"なんでこんなに印鑑が必要なの?"と疑問だらけでしたよね」

B「でも、ちょっとでもズレたらアウトで、『真っ直ぐに押し直せ』と怒られました。印鑑は、正しく真っ直ぐ押すことが銀行員としての基本、曲がって押印するなど有り得ない、と。印鑑に関しては鬼ルール(笑)」

C「順番として、我々のような担当者→上席→副支店長→支店長と押印していきますが、"上の人に向かってお辞儀をするように印鑑を押しなさい"というルールがある銀行も存在するようです。上役の人に向かって頭を傾けるように少し斜めの角度で押すということらしいのですが...」

――「頭を垂れる」的なことが書類の上でも行われているんですね。ドラマの中では、真木よう子さん演じる原島浩美が、「取引先でお酒を飲まされる」というエピソードが登場しますが、実際にそういうことはあるのでしょうか?

C「お付き合い的なものとしてはあるかも」

B「さすがにお昼はないと思いますけど、お正月の賀詞交歓会の時くらいですかね。来社されるお得意様と一緒に一口、お得意様のところで一口というのはたまにあります」

A「原作はかなり前の銀行業界を描いていますが、今回のドラマは、現代にバブルが弾けた後の時代の要素が少し挟み込まれているのかな? と」

C「第1話での原島浩美の行動は正しいなと思いました。取引先に絵画が飾ってあれば、その絵画についてもっと知ろうと思うことは、銀行マンにとって大切なことなんですね」

A「会社を訪ねた時、うまく相手の懐に入るためにも、"客先にあるものに興味を持つことは大事だ"と教えられたことがあります」

B「僕も、上席に同行して訪問先を訪れた際、"お前、アレに気づいたか?"と応接室にあった陶芸品について聞かれたことがありました。細かいところまでチェックしていて、驚きました」

C「あとは、たまに天性の営業の才能がある人もいますよね。自由に動いて、軽妙なトークでガンガン稼いでいる...。正直僕は、ちょっと羨ましいです(笑)」

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営業マン的に旬なネタは"事業承継"

――では、これまでの経験の中で「これはつらかった!」というエピソードがあれば教えてください。

B「つらかったこと...正直いっぱいありますよ(笑)。今思い出してもつらくなります(遠い目)」

A「私はお客様に怒られたことですね。一部ではありますが、不動産業者の方って、本当に見た目も中身も怖い人が多くて...。『これどうなってんだ?』みたいに高圧的にこられると、どうしても『すみません...』と萎縮してしまうことがありました」

C「僕は、先方に非があった場合でも謝っていただけるケースはあまりなく、笑顔で『全然大丈夫ですよ』と応えてしまったりします。たしかに、理不尽なことは多いです」

B「中には、"自分がどれだけ無茶言ってるのかわかってんのかな?"みたいなお客様もいらっしゃいますからね。どうにもつらくてやけ酒したこともありました(笑)」

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――ちなみに、「上司から理不尽なことを言われた」など、銀行内でのパワハラ的な行動はあるのでしょうか?

C「今、企業のコンプライアンスはどこでも問題になっていますよね。ですので、もちろん"ない"とは言い切れませんが、少ないとは思います。ただ過去に、パワハラやセクハラがあったということは噂で聞いたことがあります。真相はわかりませんが」

B「だいたいが内部告発ですよね。社内にホットラインがあって、いつでも匿名で相談できる体制にはなっていますけど...」

A「うちの銀行もホットラインは整備されているようです。僕はかけたことないですが...。でも、もしそういう事象があったら、支店内ではなんとなくわかってしまうような気がします」

C「たしかに! できる支店長が急に異動になったりすると、うっすらですが『あぁ』とみんな気づく感じですよね(笑)」

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――さらに銀行の実態について...。「よつば銀行~」の第2話で「融資のノルマは30億」というワードが登場しますが、実際にそのようなノルマは存在するのでしょうか?

A「今はもうノルマとは言わないですね。私のところでは"目標"と呼んでいます。目標は、支店の規模によってまちまち。融資の目標が何を指しているのか、お取引先が新規なのか既存なのか、残高なのか実行額なのかなど、実際はもっと細かく設定されています」

B「第2話で、融資先に"赤紙=取引再検討表"が出るエピソードもありましたよね。私はまだ、そういった場面に遭遇したことはないんですけど、今の銀行の風潮としては、何とかその会社を助けようとする姿勢の方が強いですね。"なんとか助けて再建させよう!"となります。そうなると、正義のために頑張っているような気持ちにさせられます」

C「第1話で浩美も行なっていましたが、今、営業マン的に旬なネタは"事業承継"だと思います。もしお取引先の企業が家族経営であれば、その構成や事情を知らないと仕事は進みません」

B「家族経営だと団塊の世代の社長さんが多いので、自然と"そろそろ引退? 次どうするの?"という流れになり、私たちなりに次期社長への引継ぎや株式の移転に関してアドバイスをすることは多いです」

C「でも、第1話にあったご子息が美術館を立ち上げる"というのはやっぱり大胆ですけどね(笑)」

A「経営コンサルタントに似た仕事になりますよね。現在は法律の改正があったので、事業承継が円滑に進むように整備されています。そのお手伝いをすることはたしかに多いです」

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――となると、皆さんが働いている銀行は、原島浩美(真木よう子)が持っているような正義感を貫きやすい環境と言えるのでしょうか?

C「まだ、大きな局面にぶち当たったことがないというのもありますが、正直に言うと、自分の中に浩美のような正義がどれだけあるのかは未知です」

A「"自分の担当先を大事にしろ"とよく言われますが、お取引先が中小企業だと、融資が難しくなるケースも多く見られます。でも、そういう会社の社長さんの方が人間的には面白いし、話していると楽しい。営業成績には繋がらなさそうなお取引先の企業が2社あるんですけど、そこの社長さんのお話がとても楽しくて、営業の合間にちょいちょい顔を見に通ってしまって...(笑)。"何とか力になりたい!"と思うことは多々あります」

C「僕が担当していた中小の社長さんも、"うちじゃ何もできないけど頑張ってよ!"と応援してくれました。あれは何か、胸にジンとくるものがありましたね」

B「営業していれば、多かれ少なかれ、そういう会社はみんなあると思います。会社の成績にはつながりませんし、どこまで正義を貫けるかは難しいですんけど...」

A「つまるところ"人と人"なので、そういう部分においてはドラマと一緒ですね。共感するところは多いです。楽しいことばかりではないですが、やりがいはあります。ドラマにおける原島浩美のように、うちの銀行でも女性で活躍されている方がたくさんいらっしゃいますよ」


そして気になる、今晩10時放送のドラマBiz「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」は...。

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よつば銀行では、島津雅彦(柳葉敏郎)を次期頭取に推す声が高まっていた。噂を耳にした鳩山英雄(古谷一行)は、最後の仕事として債務が膨らんだ企業を整理しようとする。
しかもその指揮を島津に任せるという。だが、裏には鳩山のある策略が...。この"頭取肝入りプロジェクト"の担当に指名された原島浩美(真木よう子)は、加東亜希彦(丸山隆平)とターゲットの不動産会社に向かうが、社長の桜庭拓真は納得がいかず...。

現在、前週放送の第6話を「ネットもテレ東」で配信中!(3月4日月曜夜10時53分終了)

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