防災効果も! 世界的左官職人が”漆喰”の華麗な技を伝授:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(毎週月曜日夜8時~)。今回は「土壁」と「漆喰」を愛するアメリカの大工がニッポンへ!

《今回ニッポンにご招待したのはこの人》

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アメリカのケンタッキー州で家の建築などを手掛ける大工のジギーさん(34)。妻のエイプリルさん(34)、長男・ヘーゼルくん(2)と3人家族です。

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「ぜひ見て欲しいものがあります!」とジギーさんが案内してくれたのは...なんとニッポンの伝統的な「土壁」。「ニッポンの建築に影響を受けて自分で作りました。日本の土壁は、美しいだけではなく、理にかなっているんです。湿気が多い時には空気中の水分を吸ってくれますし、逆に乾燥している時には、吸収した湿気を外に出し、湿度を調節してくれるんですよ!」と熱く説明してくれます。ニッポンには1度も行ったことがないというジギーさんですが、8年前に見た土壁の美しさに感動し、独学で作り始めたそう。

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そんな彼がさらにハマったものが...およそ1500年もの歴史を持つ「漆喰」。漆喰の主な成分は、燃えにくい消石灰。まだ銀行がなかった江戸時代、人々は漆喰で土蔵を作り、火事から財産を守ってきたそうで、その防火性は圧倒的。漆喰で作った蔵は、東京大空襲でも焼けずに残ったほどだといいます。

「土壁と漆喰という日本独自の組み合わせこそ、僕が目標とする壁なんです!」と語るジギーさんは、ニッポンから材料を取り寄せて独学で漆喰を作り、敷地内に作った壁で、200回以上もの壁塗りを練習してきました。今は大工としての収入もままならず、「愛する家族のためにもニッポンで、漆喰や左官技術を学んで一人前になりたいです!」と意気込みます。

そんなジギーさんを、ニッポンへご招待!!

憧れの人とドキドキご対面!

まず、ジギーさんが訪れたのは、"飛騨の小京都"と呼ばれる岐阜県高山市。150年以上前から残る建造物、漆喰が施された壁の数々に目を輝かせます。「歳月を感じる漆喰の壁は興味深いです」としみじみ。

ここで、ジギーさんにウェルカムサプライズ! 実はここ飛騨高山には、ジギーさんが一番会いたかった人が...。訪ねた事務所から出てきたのは...。

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なんと、ニッポンが誇る左官職人・挾土秀平さん(56)!

日本を代表する左官職人である挾土さんは、世界でも注目を浴び、手がけた作品はどれも左官の域を超えた超一流のものばかり。コテを巧みに操り、左官を芸術の域にまで高めた挾土さんは、まさにジギーさんが目指す憧れの存在なのです。

「ニッポンの左官の仕事をぜひ教えてください」というジギーさんの熱意に、挾土さんは、「1回肉眼で見てみて」と案内してくれることに。

早速訪れたのは...。

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壁作りの試行錯誤を重ねる挾土さんの研究部屋。「ここにあるのはすべて自然の色だね」と語る挾土さん。材料は自ら全国各地に飛び、掘り出した天然素材。

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「自然の素材だけでも、これだけ様々な色合いが出せるんですね!」と感動がとまらないジギーさん。秘密の扉を抜けると、さらに幻想的な世界が!

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扉の向こうには、光沢のある鉱石・雲母やカラマツの落ち葉を使った想像を絶する土壁の数々が! ジギーさんが「まるで松林を歩いているような雰囲気で、葉が舞い落ちてきそうです!」と感動をぶつけると、挾土さんは「そういわれると僕も嬉しいよ!」と思わず笑顔に...。

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続いて案内してくれたのは、高山市内にある荏名神社。江戸末期に建てられたこちらの土蔵は、挾土さんが20年前に漆喰を使って内外壁を修復したもの。

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漆喰には様々な効果があり、そのおかげで20年間美しいまま残っているといいます。挾土さんが塗った美しい漆喰に触れ、感無量のジギーさん。

漆喰作りからレクチャー!

いよいよ、日本最高峰の技を持つ挾土さんから、日本古来の漆喰の壁塗りを教えてもらえることに。左官職人の長瀬弘行さん、河野宇志さんも加わり、まずは真の漆喰作りから...。

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1.保湿性が高く、乾燥を防ぐ海藻のりを火にかけて煮出す。
2.麻の繊維を叩き、壁に凹凸を作ってしまうダマをなくす。
3.繊維の中に浸透して馴染むよう、海藻のりは麻の上からかける。
4.消石灰を少し入れては混ぜを繰り返し、馴染ませる。
5.小刻みに細かく押して混ぜていく。

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「いい運動になります!」というジギーさんに、「疲れるでしょ。それが仕事なんだよ」と職人ならではの言葉を伝える挾土さん。

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「塗ってみて!」と挾土さんに促され、壁塗りを見せるジギーさん。漆喰の壁塗は乾燥との戦い。わずか10分ほどでどこまでキレイに仕上げることができるかがカギとなります。塗る作業に12分、仕上げに3分かかったジギーさん。挾土さんは「上手だと思うよ! でも汚いね(笑)」と正直な感想を。早速、漆喰を効率よく塗るポイントを伝授していただくことに。

<3つのポイント>
1.壁の中心から塗らない。均等になるように外周から始めて最後に中を塗る。
2.乾燥ムラを防ぐため、とにかく早く塗る。
3.コテの上で繊維が立つと非効率。コテ板から漆喰を取るときはコテの使い方に注意を払う。

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ここで挾土さんの壁塗りを見せていただけることに! 流れるようなコテさばきで、塗る作業はわずか4分で終了。すばやく塗ることで乾燥具合が均一になるそう。仕上げにはたっぷりと6分をかけ、コテで圧をかけることで、表面にツヤを出します。仕上げに時間をかけることでひび割れのない耐久性のある壁が生まれます。

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出来上がった漆喰壁の違いはご覧の通り! 「たくさん学びました!」と笑顔で返すジギーさんに、挾土さんはこんなアドバイスを送ります。

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「もっと練習をさせてください!」というジギーさんに、挾土さんをはじめ、職人さん一同、日暮れまで8時間もお付き合いしてくださいました。

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形もだんだん様になってきたようで、挾土さんから「これ(今の壁塗り)をアメリカでできたら一番だよ! このくらいの仕上げがアメリカでできれば仕事になる」と嬉しい言葉をいただきました。ジギーさんも、「良い感触がつかめました」とホッとした表情に。

<居酒屋で異文化交流>

頑張ってひと汗流した後は、挾土さん行きつけの居酒屋へ。炭火で焼いた飛騨牛や高山のきのこが入ったきのこ鍋をいただいたジギーさんがグーサインを出すと...。

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「アメリカ人って、おいしいとグーってやるんだね!宇志~」と挾土さん。そこで職人3年目の宇志さんは...。

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ちょっぴりテレながらも異文化交流(笑)。そんな中、ジギーさんが、アメリカでは左官と大工、両方の仕事をしていると話すと、挾土さんは「左官と大工の二刀流か! 大谷翔平みたいだな!(笑)」とジョークを飛ばしました。

憧れの挾土さんとお別れのとき...

翌朝。帰国後も練習できるようにと、最後までジギーさんに土壁塗りの技を伝授する挾土さん。

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「戻ったらすぐに練習します!」とジギーさん。

忙しい中、2日に渡ってお付き合いくださった挾土さんとも別れの時が...。

ジギーさんが「左官の仕事の無限の可能性を肌で感じることができました。心の底から感謝の気持ちで一杯です!」と手紙を読み、言葉を詰まらせると、挾土さんは「遠いとこから来て、挑戦意欲がすごいね。そういう気持ちだけでも腕を上げられると思う。こちらこそ、ありがとう!」と、なんと挾土さん愛用の名前が入ったコテ板をプレゼント!

感極まったジギーが「...ハグしていいですか?」とお願いすると、挾土さんは「ハグ?(笑)」と戸惑いながらも...。

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挾土さんは男気あふれる職人らしく、ジギーさんの背中が小さくなるまで、その姿を見送ります。挾土さん、秀平組の皆さん、本当にありがとうございました!

コテ職人・杉田さん熟練の技を見学

続いてジギーさんがやってきたのは、兵庫県三木市のスギタ工業。ジギーさんが住むアメリカの自宅には、日本から取り寄せた左官コテが20本もあり、中でもお気に入りなのがスギタ工業のコテ! 「スギタさんがコテを作っている現場を見ることは、僕の夢です!」というジギーさん。

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スギタ工業とは、昭和37年、コテ職人・杉田隆三さんが興した鍛冶屋。コテの世界で初めて、伝統工芸士となった杉田さんの卓越した技術を、息子で2代目の智彦さんが継承しています。今回、杉田さんにジギーさんの熱意を伝えたところ、快く会っていただけることに...。

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「漆喰と左官とコテのことを学びたくてニッポンに来ました!」と笑顔で挨拶するジギーさんを、「遠いところをありがとうございます!」と温かく迎えてくださる杉田さんファミリー。

なんとジギーさんは、アメリカからスギタ工業のコテを2本持参。その2本は隆三さんと智彦さんがそれぞれ作ったもので、アメリカの地で使われているという事実を知り、杉田さん親子はまさに感無量。「気合いの入ったコテをぜひ打たせてもらいたいですね!」と笑顔で語る智彦さんは、早速作業場へ...。

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「ワ~オ! 美しい!芸術作品のよう」と感動するジギーさん。スギタ工業では、左官職人さんの用途や寸法などの要望に応じ、コテを0.1mmで受注製造。そのたしかな技術力を求め、全国各地から注文がくると言います。

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中でも、最高級品と言われるのが「鍛造コテ」。鍛造とは、素材を叩いて鍛える製造法で、手仕事で8時間も要する16の工程があり、そこには熟練の職人の知恵と技術が! 最高級品である「鍛造コテ」には、抜群の伸びと塗りやすさがあるのです。

今回は特別に、鍛造の製造工程を見せていただきます。厚さ2.3mmの鉄板を、強度が必要な柄の部分だけ2.2mmに、縁の部分は、およそ1mmまで叩きます。薄くて軽いながらも、強度がある仕上がりになるのが鍛造の真骨頂!

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鉄板を900度の火窪(炉)で6回熱し、叩いて鍛えること、およそ500回! 鉄の密度が増すことで、コテがより強くしなやかに! 0.1㎜の狂いもない精密さを目の当たりにしたジギーさんは「この技術があるからこそ、最高品質のコテができるんですね!」と大感動。「サンキュー!」とお茶目に答える智彦さんでした。

さらに鉄板に生じた歪みを整えるため、ひたすらハンマーで1時間叩きます。一見平らのように見える鉄板ですが、よーく見てみると湾曲しており、裏側に0.2mmほどの隙間が...。

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このわずかな隙間"裏スキ"があるからこそ、壁塗りの凹凸が職人の手に伝わりやすくなるとのこと。「細かい作業が素晴らしいです!」とジギーさん。

<杉田さんのご自宅でアットホームな夕食>

その夜、杉田さんのお宅で夕食をごちそうになることに...。

明石産タコを使った鍛冶屋鍋! 職人達が体力増強のために食べていた郷土料理だといいます。初めてタコを食べたジギーさんは「食感が良くて美味しいです!」と笑顔に。さらにジギーさんの納豆を食べてみたいという要望に応え、智彦さんの奥様が"納豆かけご飯"を用意。初めての体験にジギーさんは...?

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「滑らかでとても美味しい!」。ジギーさんの豪快な食べっぷりを見た智彦さんは「欲しくなってくる...ちょっといいですか?」とジギーさんの納豆かけご飯を横から拝借。負けじと美味しそうに頬張ります。そこからは、なぜか家族中が回し食べ(笑)。

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杉田ファミリーと別れのときが...

翌日。お世話になった杉田さん一家と別れのときが...。

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杉田さんは、ジギーさんに精魂込めて打った「鍛造コテ」を手渡し、「頑張ってください!」と温かいエールを送ってくださいました。

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漆喰を通して、さまざまな感動と出会いがあったニッポン滞在。「ニッポンには、尊敬すべき職人さんがたくさんいることを知りました! またすぐに戻って来たいです!」とジギーさん。ジギーさんの漆喰を愛する真摯な心と学ぶ姿勢を私たちは忘れません。またの来日をお待ちしています!

そして、今夜2月25日(月)夜8時からの放送は...。

「ニッポンで落語を学びたい!」という女性をジョージアからご招待。さらに箏を愛するアメリカ人女性も登場。

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2年前、YouTubeで落語家・桂歌丸さんの動画を見て落語の虜になったジョージア人女性をご招待。老舗の寄席・新宿末広亭で落語や漫才を堪能! 浅草演芸ホールでは、一人前の落語家になるために必要な「前座」の仕事を見学。また、憧れの人、六代目・三遊亭円楽さんと感動のご対面! 自ら挑戦した古典落語「寿限無」を見てもらい、円楽さんから直々に落語の手解き...さらに驚きの提案が!

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ニッポンの伝統楽器「箏」を愛するアメリカ人女性をご招待。6年前、イベントで聴いた箏の音色に魅了されたという彼女は、貯金で自分の箏を購入し、毎日3時間練習している。早速、国内の箏の7割を生産をする広島・福山市へ...。日本に3人しかいない箏の伝統工芸士を訪ね、箏づくりを見せてもらうことに。さらに、"箏の甲子園"で優勝した名門校の部員たちと一緒に練習するほか、憧れの箏奏者・明日香の演奏に大感激!

今晩8時からの放送を、どうぞお楽しみに!

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