全国2800万人が悩む国民病! 「腰痛症」の予防・改善

公開: 更新: テレ東プラス

全国で約2800万人! 人口の1/4にも及ぶこの人数、何だと思いますか? これは腰痛症に悩む人の数(厚生労働省2015年国民生活基礎調査)。もはや国民病ともいえる腰痛症ですが、予防や再発を防止する方法はあるのでしょうか?

毎回さまざまな専門家がレギュラー出演中の生活情報番組「なないろ日和!」(毎週月~木 午前9時28分~放送中)から、今回は、日本を代表する元陸上選手で、現在はスポーツ・美・健康などをテーマに講義や実技指導を行っている室伏由佳さんが登場。

アスリート時代から原因不明の腰痛に苦しみ、引退を機に手術し根治に至った経験や脊椎専門医の腰痛分類などを記した「腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~」の著者でもある室伏さんに、「運動やストレッチなどによる腰痛の予防・改善法」についてうかがいました。

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腰痛の症状、原因はさまざま! まずは脊椎専門医を受診

アスリート時代、陸上競技の投擲種目である女子ハンマー投(4kg)や円盤投(1kg)に取り組んだ室伏さん。2004年アテネオリンピックに女子ハンマ―投日本代表として出場する等、競技者として成功をしてきた半面、腰痛症に悩まされてきました。

「私は高校生2年生で腰椎椎間板ヘルニアの診断があり、大学生から急性腰痛症(ぎっくり腰といわれている症状)を頻回に引き起こすようになりました。2004年アテネオリンピックに女子ハンマー投で日本代表として出場した翌年から、原因が特定できないとても辛い腰痛が待っていました。歩行に困るほどの痛みが頻回に起こり、引退するまで慢性的な痛みが続きスポーツ活動が思うようにできなくなってしまいました」(室伏さん、以下同)

室伏さんの腰痛はスポーツ活動によるものだそうですが、腰痛の種類も原因もさまざま。腰痛診断は医師による画像診断が必要で、自身で病態は特定できません。

「腰痛と一口に言っても、皆同じではありません。まずは脊椎専門医を受診すること、そして、自身でも努力できることとしては再発防止や予防に努めるために楽しみながらストレッチやエクササイズの実践をすることがとても大切だと感じます」

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腰痛症の予防と再発防止のためのストレッチ&エクササイズ

腰痛の予防や再発の防止には、腰椎へかかる負担の軽減をするために日ごろからストレッチをして身体の柔軟性を高めることや体幹を鍛える(※関連1)など実践が大切。特に、脚の裏側(ハムストリングスやアキレス腱)と腿の前面(大腿四頭筋)の柔軟性を高めておくことが腰椎への負担の軽減につながります。
※関連1:こちらでも体幹を鍛えるエクササイズを紹介!

ただし、すでに重篤な腰痛に悩んでいる方は、自身の持つ腰痛症に対しては負担となるエクササイズをすると病態が悪化する可能性もあるので、脊椎専門医の確定診断を経て、理学療法士、アスレティックトレーナーなど、腰痛を熟知した専門家の指導に従いましょう。

【立って行うハムストリングスのストレッチ】
ジャックナイフストレッチといわれ、腰痛予防に推奨されています。ハムストリングスの柔軟性を高めることで、股関節の可動域が広がり、腰椎への負担を軽減しながら前かがみになるなどの動作ができます。

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①両手で、右足首の後ろからアキレス腱を包むように持つ。胸と腿はピッタリ密着させる。
②ゆっくりと膝を伸ばす。胸と太ももは離れないように!
③頭を下げたまま、胸と膝をつけたまま膝を伸ばす。この状態で反動をつけずに10秒キープ。
④ ①の姿勢に戻って5回繰り返す。(左足も同様に)
(実践目安:10秒×左右5セットずつ)

※よくあるNGポーズ!

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胸と太ももの間に隙間があり、そうするとハムストリングスを十分ストレッチすることが出来ません。ストレッチのスタートポジションはしゃがんだ体勢で。その際に胸と太ももをしっかり密着させておきます。

首は上を向くと苦しいので、膝の間を覗き込むように、顔をひざに近付けるとGoodです!ハムストリングスが硬い人は膝が伸び切りませんが、伸び切らなくても、腿の裏の筋肉が伸びているという手応えがあればOK。

【仰向けで行うハムストリングスのストレッチ】
ジャックナイフストレッチと同様に股関節の可動域を広げて腰椎への負担を軽減することが出来るストレッチです。腰に痛みがある方、お身体に不安のある方やご高齢の方には、仰向けで行うハムストリングス・ストレッチが推奨されます。

*首の下にタオルなどを敷いて目線が真上にくるようにしておく

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①仰向けになり、左足を膝が直角になるように曲げ、ハムストリングスを両手で覆うように持つ。両足のつま先は、膝の方向に引き寄せてアキレス腱をのばした状態をキープ。

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②左足の膝下だけを動かし、ゆっくりと伸ばす。できるだけ膝を伸ばしたところで、反動をつけずに5秒キープ。この時もつま先はひざ方向に引き寄せた状態をキープしながら。
③①の姿勢に戻り10回繰り返す。(右足も同様に)
(実践目安:10秒×左右5セットずつ)

※脚の裏側(ハムストリングス)が硬い場合の動作パターン例

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ハムストリングスが硬い場合、膝が伸び切らない状態。日々ストレッチをしていけば、徐々に膝を伸ばせるようにしていくことができます。

【大腿四頭筋のストレッチ】
大腿四頭筋を伸ばすことによって股関節の可動域が広がり、腰椎に負担を掛けずに股関節で後屈できるようになるため、腰痛の予防や再発防止になるとのこと。身体や腰をうしろに反ったときに腰に痛みを感じるタイプの腰痛に効果があるストレッチです。

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① 左膝を床面につき90度、右膝を立てて膝を90度にしてつま先は伸ばし、お腹に力を籠める。膝の下にタオルなど柔らかいものを敷くと膝への負担や当たる痛さが軽減できる。
② 背筋を伸ばし、お尻にギュッと力をいれる。この状態で前に出ている右脚の方に体重を移動し、反対側の左脚の大腿四頭筋を反動をつけずに5秒間伸ばしていく。
腰や骨盤が後ろに反らないように意識することがポイント。伸ばしている左側のお尻に力を入れると、大腿四頭筋と股関節がより伸びやすい。

③ ①の姿勢に戻り、5回繰り返す。(右足も同様に)
(実践目安:5秒×左右5セットずつ)

※アレンジバージョン

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アレンジバージョンとして、右手をまっ直ぐに上に伸ばして5秒キープ。更に、体幹を安定させて、肋骨だけを左に傾けてお腹とお尻に力を込めて3秒キープ、元のポジションに戻す方法も。

【アキレス腱ストレッチ】
腰痛を訴える人の中に、アキレス腱が硬いという特徴がみられます。足首の柔軟性を高めておくことで、日常生活の中でしゃがむ動作などが柔軟になり、腰椎への負担が軽減されるので腰痛の予防や再発防止になります。

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① 左足の膝を立てて、足裏をしっかり床につけて両手で固定させる。体重を上からかけるように意識する。
② 左足のアキレス腱が伸びるように、ゆっくり体重を前方にかけていく。脛の前の筋肉に力を入れておくことでよりアキレス腱が伸びやすくなる。反動をつけずに伸ばした状態を10秒間キープ。
③①の姿勢に戻り、5回繰り返す。(右足も同様に)
(実践目安:10秒×左右5セットずつ)

※NG動作パターン

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かかとが上がらないように実践しましょう!

毎日、朝と夜、あるいは、お昼やすみなど、1日2回程度ストレッチを継続していくと効果的。ただし、正しい姿勢や動作パターンで行わなければ効果が出にくいため、まずは推奨の回数で正しい動作パターンを学習して身体に覚えさせることが最も大切です。そのために鏡を見ながら行ったり、友人や家族にチェックしてもらったりするなど、自分の動作パターンや姿勢などのポジションを確認してみましょう。

また、普段の生活の中でも、「お尻(大殿筋)と腹筋に力をいれて、腰だけに負担をかけないようにすることも大切」と室伏さん。腰痛の予防と再発防止のためにも、まずは骨盤を立たせて体幹に力が籠められるまっすぐな姿勢やポジションを確保し、正確な動作パターンを繰り返して行う心がけでのストレッチやエクササイズからゆったり始めてみましょう。

引用・参考文献:
「腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~」(角川書店/西良浩一・室伏由佳)
「アスリートに謎の腰痛は無い!極めるアスリートの腰痛100%を超える復帰」(文光堂 /西良浩一ほか)

取材協力:室伏由佳さん。2004年アテネオリンピック陸上競技女子ハンマー投日本代表。女子円盤投、ハンマー投に種目の日本記録保持者(2019年3月現在)。現在は、株式会社attainment代表取締役。順天堂大学大学院所属。上武大学客員教授、朝日大学客員准教授。元トップアスリートならではの視点で、スポーツ健康科学の研究者として、講義、実技指導、講演活動を行っている。著書に「腰痛完治の最短プロセス~セルフチェックでわかる7つの原因と治し方~」(角川書店/西良浩一・室伏由佳)
オフィシャルHP:http://attainment.jp/

室伏由佳さんも出演する「なないろ日和!」は、今後もあらゆる専門家が出演し、生活に役立つ情報をお届けしていきます。毎週月~木曜9時28分からのOAも要チェックです!

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