あなたのめまい、ホントはこの病かも!? :主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

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主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分)は、第一線で活躍中の医師たちが、病院選びのコツや最新の健康法など、医療に関するさまざまな疑問に答える知的エンターテイメントバラエティです。

さて、今回の「主治医の小部屋」には、細菌性髄膜炎とめまいに関する疑問が寄せられました。早速、同番組レギュラー・上山博康医師にお聞きしましょう!

Q:風邪気味と言っていた母(70代)がその日のうちに倒れ、「細菌性髄膜炎」と診断されました。一命は取り留めましたが、現在も入院中で後遺症も懸念されるようです。この「髄膜炎」とは脳にどのような影響がある病気なのでしょうか。また、何か予防する手立てはあったのでしょうか。

―― 細菌性髄膜炎とはどんな病気ですか。

「細菌性髄膜炎は、インフルエンザ菌(冬季に流行するインフルエンザウイルスとは異なる)や肺炎球菌などの細菌感染が原因となって髄膜(脳を覆う膜のこと)に炎症が起こる病気です。同じ感染性の髄膜炎でもウイルス性髄膜炎は若い人もなるのに対して、細菌性髄膜炎は抵抗力が低下する60代以降あるいは3~4歳以下が中心ですが、中でも圧倒的に幼児に多くみられます。初期は強い頭痛を伴う風邪症状を訴えることが多く、発熱や意識障害などが現れ、急激に悪化します。発症する頻度こそ低いのですが、死亡したり、後遺症が残る割合が高いという非常に怖い病気ですね。

細菌性髄膜炎の診断は、血液や髄液の検査と神経症状などの所見から行います。まず大事なのは、神経症状を診ることができる医療機関を受診することですね。ウイルス性との鑑別も重要で、髄液検査では細菌性の場合、髄液中の多核白血球数がぐんと増えて、色も米のとぎ汁のような白濁がみられるようになります。一方のウイルス性では、黄色味は出ても透明性が保たれていて、髄液中に増加するのはリンパ球が主体になります。検査などで原因菌が確認されたら、適切な抗菌薬(抗生物質)を使って治療を行います。ただし、細菌性髄膜炎は開頭手術で耐性菌(ブドウ球菌など)が入り込んだのが原因で起こることもあり、その場合、抗菌薬は効果がありません」

―― 死亡したり後遺症が残ったりするということは、抗菌薬が効かないことがあるのですか。

「実は、脳の血管は他の血管と作りが違っていることが関係しています。脳の血管には『血液脳関門』という内側の粘膜(内皮細胞)の穴がとても小さく、分子量の大きい物質は一切脳に行かないようなバリア機能があります。細菌性髄膜炎の発症率が高くないのも、血液の中に入ってしまった細菌が運悪くバリアの壊れたところから脳に入り込んだりして発症するからなんですね。ところが、この機能があるために、血中に投与した抗菌薬も脳に行かないものが多いのです。そのため、届きやすい薬の選択が重要になるわけですが、効果が出ない場合には、脊髄腔に管を入れて直接薬を髄液に投与するという方法をとることもあります」

――どんな後遺症が残ったりするのですか。

「後遺症で一番怖いのは、脳炎を合併したり、けいれん発作を持続したりすることで意識が戻らなくなることですね。非常に多い合併症としては、水頭症による歩行困難、失禁、知能の障害があり、脳炎を合併すれば障害された部位によって半身不随などの脱落症状が起こります。脳という臓器は、他の臓器と決定的に違うところがあって、それぞれの働きをする部位が1つしかなく、代替えが利かないんですね。例えば、腎臓なら左右同じ働きをしますが、脳はそれがない。脳の特異的なところです。予防は原因菌の飛沫感染や接触感染を避けること。早期発見については、残念ながら一般の人には髄膜炎との区別は難しく、医師に委ねるしかありません。ものすごく頭痛がする風邪だと思ったら髄膜炎だった......という話も聞きますが、時期を適切に治さないと後遺症が残る可能性がある、ということは覚えておきましょう」

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Q:40代男性です。夜中に寝返りをしたときや、朝起きて立ち上がるときにめまいがします。グルグル回る感じがしますが、フラフラと感じる場合もあり、自分でも症状が曖昧です。心配なので診察を受けようと思いますが、どの科に行けばよいのか判断がつかず、 先延ばしにしてしまいます。すぐに受診した方がよいケースはありますか? また、めまいにはどのような病気が隠れているのでしょうか?

―― めまいを訴える方は意外と多いですが、何科を受診すればよいのでしょうか。

「めまいの原因は多岐にわたり、めまいの治療に詳しい専門医は少ないのが現状です。めまいがしたら、"眼振(眼球が細かく揺れ動く)も認められるか" "聴力は正常か" "頚椎に疾患はないか"を確認することが、原因究明のヒントになります。
これらを踏まえて最初に挙げる診療科は、耳鼻咽喉科の中でも耳の神経を専門とする『神経耳科』です。耳には三半規管(内耳にある)という平衡感覚を司る部分があり、そこに問題が生じるとめまいが起こります。乗り物酔いする人もこの三半規管が弱いですね。また、めまいというと安易にメニエール病を考えがちですが、メニエール病はめまいを伴う突発性難聴の一つで、めまい以外にも"声や音が静かなところでは聞こえずに、逆にうるさいところで聞こえる"という特徴的な難聴を伴います」

―― いきなり神経内科や脳外科を受診するのは性急すぎますか。

「神経内科や脳外科でも神経を診ることはできますが、脳の問題で起こるめまいは稀で、滅多にありません。中枢神経性のめまいが出ているようであれば、脳幹部(延髄)が侵されていることになり、めまいどころの騒ぎではなくなります。立ってはいられないほどの状態で、さらに眼振を伴うんですね。呼吸中枢に障害が生じ、呼吸ができないというレベルの重症度ですね。このような症状がないようなら、まずは神経耳科を受診してみてください。なお、内耳がヘルペスウイルスに侵されてしまった場合はとんでもなく怖いめまいを起こします。帯状疱疹ですので、顔に発赤が現れ、やがて神経が壊されるので注意が必要です」

―― その他に考えられる疾患や原因はありますか。

「頚椎に異常がある場合ですね。脊椎管狭窄症や椎間板障害のある人はめまいを訴えることが多くなります。また、眼振を伴わないふらつきで意外と多いのが肩こり。ストレートネックなどで、脊髄の横を走る自律神経管がうっ血し、筋肉の中のリンパ液や静脈血の戻りが悪くなり、血管が膨らんでいる状態です。もみほぐすと柔らかくなるのは血液や水分を追い出しているから。ただし、根本的な解決にはなっていないので揉みほぐしてもまた溜まります。めまいはストレスでも起こるんですよ。過緊張の状態をなくして気持ちをゆったりとさせることが大事。ぬるめのお風呂に入るなどしてリラックスしましょう」

――上山博康先生、ありがとうございました。

【上山博康医師 プロフィール】
社会医療法人禎心会脳疾患研究所所長。1973年北海道大学医学部卒業。秋田県立脳血管研究センター、北大医学部脳神経外科講師などを経て、1992年から旭川赤十字病院脳神経外科部長。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。
2012年4月から現職。著書に「すべてをかけて命を救う」(青春出版社)、「闘う脳外科医」(小学館)など。

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今回お話を伺った上山先生も出演する「主治医が見つかる診療所」。本日2月14日(木)の放送は、「大人気の専門外来スペシャル」と題して、「便秘外来」「フットケア外来」「口臭外来」「高血圧外来」など、専門外来の名医たちが出張診療!改善法や予防法など、役立つ情報をお届けします。

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