「”誰が見ても自分に置き換えることができる教訓”を伝えたい...」:カンブリア宮殿

公開: 更新: テレ東プラス

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日本人なら誰もが知っているガリバー企業から地方で奮闘する中小企業まで、様々な企業や経営者にスポットを当て、ニュースが伝えない日本経済読み解くカンブリア宮殿」(毎週木曜 夜10時)。制作に携わるディレクターたちは、なぜその企業に着目し、何を感じながら取材をしているのだろうか...。知ればまた、違った視点で見えてくるものがあるはずだ。

そこで「テレ東プラス」が、入社16年目である報道局報道番組センター・古井大嗣ディレクターを直撃。今回は、急拡大を続けるドラッグストア「ウエルシアHD」や、高視聴率を獲得した「外食スペシャル」の裏話などをお届け。どんな思いで番組を制作しているのかに迫る。

ギラギラした経営者かと思ったら、気のいいオッチャン(笑)

――古井さんが企画を担当した、2018年5月31日放送「便利さを極め街のインフラに!ドラッグストアの新王者・ウエルシア ウエルシアHD会長 池野隆光」は、とても勢いを感じる会社でしたね。なぜ「ウエルシア」に興味を持ったのでしょうか?

「きっかけは日経新聞で、それまで22年間売上げ1位だったマツモトキヨシをウエルシアが陥落させたという記事を読んだことです。その後、ドラックストアの成長率がコンビニを超えたというニュースも出て、業界に面白いことが起きているなと感じてスタートした企画でした。

視聴者の中にも、『最近、家の周りにウエルシアが増えたな』と思っている方がいらっしゃるかもしれません。薬品だけじゃなく、飲食料や日用品も充実していて、低価格で便利ですよね。なぜ店舗が急増しているかというと、どんどんM&Aを繰り返して出店攻勢をかけている企業なんです。僕の中の勝手なイメージで、会長の池野隆光さんを売上げ至上主義のギラギラした人かと思っていたんですけど、いざ会ってみると実に気のいいオッチャンといった感じで...(笑)。取材中も、『よし、あそこに入ろう!』と言って100円の回転寿司に行ったりするんですよ。人間的に好きになってしまって、そういう庶民的な人柄をぜひ紹介したいと思いましたね。

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「池野さんの中には、調剤薬局がを併設していてコンビニよりも便利な健康サポート拠点が全国に広まれば、住民の役に立てるという確固たる信念があります。M&Aする際も、『大きい方が小さい方に合わせる』という考えをお持ちで、吸収される側に合わせるので、吸収された方の社員も結果的には喜んでいる。これは上司や先輩が、部下や後輩の声を取り入れるとか、どこでも通用する考え方だと思います。

こうした"誰が見ても自分に置き換えることができる教訓"のようなものは、毎回盛り込みたいですね。僕自身、取材を始める前は、"ドラッグストアってどこも同じでしょ"と感じていましたが、ウエルシアの強さの秘密や急増している理由がわかってもらえる回になったのではないでしょうか」

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ワールドカップの裏で高視聴率を獲得した「外食スペシャル」

――他にも、おすすめの作品はありますか?

2018年6月28日放送『外食の戦いは終わらない!~目からウロコの勝ち残る新戦略~』でしょうか。すかいらーくの創業者である横川竟さんが、さまざまな外食産業の若手経営者に次々アドバイスしていくという変わった趣向の回でしたね。しかもおっしゃることが、『大事なのはメニューを絞ること。看板商品が1つか2つあれば、お客さんは来てくれる』など、学校の先生のように的確なことばかり。若手の経営者たちも"崇拝"に近い感じでした。

横川さんはすかいらーくで大成功をおさめたものの退陣を余儀なくされ、次に手がけた高倉町珈琲店が急成長を遂げています。まさに外食界のレジェンド! 成功だけじゃなく、一度大きな挫折をした人が再び這い上がって、その知見の中で得た言葉が若手経営者たちの心に刺さっているのだと思います。

どん底時代について語りたがらない経営者が多い中で、あっけらかんと語ってくださるのも面白いところですね。恐らくご自身の中では、それも含めて人生と達観しておられるのではないでしょうか。1回ではもったいないという声が多数上がり、再登場願ったと聞いています。

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――この作品は『外食スペシャル』ということで、珍しく村上龍さんや小池栄子さんも、注目の外食店でロケをしています。

「入口がわかりづらいお店や、会員制で肉が食べ放題の店など、ユニークなお店が登場しました。実はこの回は、ワールドカップの裏だったにも関わらず、2018年に放送した中でも1、2位を争う高視聴率だったんですよ(笑)。『外食』は、誰もが関心のあるキーワードだということがよくわかります。『カンブリア宮殿』には長年の放送の中で出来上がった"定番の形"のようなものがありますけど、今後はこうした変化球的な作り方にもどんどんチャレンジしていきたいですね」

その会社自身も気づいていない魅力を発掘したい

――最後に、ご自身が番組を作る上で大切にしていることや、今後の目標を聞かせて下さい。

「『カンブリア宮殿』をつくっていると、実にいろんな人がそれぞれの思いで会社を経営しているのだなと感じます。その中で、一般的には知られていなくても、"これからきそうだ!"という企業やこだわりを持ってやっている企業を、1時間使って存分に伝えていけるのが、『カンブリア宮殿』ならではの醍醐味ではないでしょうか。

その一方で、誰もが知っている企業の知られていない側面も伝えていきたい。大企業になるほど裏側は見せたがらないので、交渉が難しいんですけどね。僕の中には、会社自身も気づいていないような良いところを見つけたいという思いがあります。せっかく取材するのだから、リリースや記事に載っていることをなぞるだけでは面白くないですよね。だからカメラを回していないヒアリングの段階から、丁寧に突っ込んで聞くように努力しています。その結果、企業側にとっても『まさかそこを取り上げるとは!』というような新たな側面にスポットライトを当てることができたときは、嬉しくなりますね。年次的には、ディレクターでいられる期間もそう長くないと思うので、現場に行ける間に、悔いのない番組づくりをしていきたいです」

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約1時間にわたるインタビューから、古井ディレクターが取材対象に共感を抱き、そこから多くのことを学んでいる様子が伝わってきた。そして独自の使命感を持って番組制作に臨んでいることも...。今後も「カンブリア宮殿」に期待したい。

現在、インタビューで登場した2作品を、「カンブリア宮殿 傑作選」として、無料見逃し配信サービス「ネットもテレ東」で限定配信中。

●2018年5月31日放送「便利さを極め街のインフラに!ドラッグストアの新王者・ウエルシア」ウエルシアHD会長 池野隆光(1月27日日曜 夜11時59分まで)。

●2018年6月28日放送「外食の戦いは終わらない!~目からウロコの勝ち残る新戦略~」
(1月27日日曜 夜11時59分まで)。

そして今晩10時から放送する「カンブリア宮殿」では、「奇跡のコーヒー店 理想のコーヒーを追求する親子感動物語」をオンエア。

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茨城県に大人気のコーヒー店がある。その名は「サザコーヒー」。地方の喫茶店ながら、南米コロンビアに自社農園を持ちコーヒー豆を栽培、その一方で日本トップクラスのバリスタを育て上げる「本物志向」で、業界から注目を集めている。50年前、会長の鈴木誉志男が始めた家族経営の小さな喫茶店が今や茨城県内に10店舗、近年東京にも進出し話題になっている。茨城で愛されるコーヒー店の味は、東京でも通用するのか?

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