「『ガイアは気難しいおじさんが作っているに違いない!』と勝手に想像していました(笑)」

公開: 更新: テレ東プラス

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合言葉は「事実はニュースで、真実はガイアで!」。経済の現場で奮闘している人たちの姿を通し、ニュースの裏側に隠された真実に迫るドキュメンタリーガイアの夜明け」(毎週火曜 夜10時)。毎回様々な面白い視点を取り入れ、日本の"今"を切り取っている。

今回「テレ東プラス」編集部は、「ガイアの夜明け」の若手ディレクターである萩原由佳さんを直撃取材!(※前編はコチラ) スタッフだからこそ知りえる、番組の魅力やドキュメンタリーのつくり方についてインタビューを敢行した。

ドキュメンタリー制作で問われるのは"人間力"

――「ガイアの夜明け」は、だいたいどれくらいの期間をかけて撮影しているのでしょうか?

「2、3カ月というものが多いですが、回によって異なりますね。日比谷ミッドタウンのオープンに迫った『東京"新名所"ウォーズ』(2018年5月8日放送 )や、『東京"新名所"ウォーズ②日本橋を変える!高島屋の野望』(2018年10月16日放送 )ですと、テナントが完成する前から追わせていただくので4カ月くらい。これほど長いと、最初はゴールがまったく見えない中で取材を重ねていきますが、途中からなんとなく方向性が見えてくるので不思議です。私は、『高島屋の野望』で代々木公園のベーカリー『365日』に密着しましたが、途中から"オープン初日は大行列になってしまうのではないか"と予想しました。ただ、それをそのまま伝えるのは面白くないので、なぜ行列ができるのかということを考え、オーナーシェフ・杉窪章匡さんの魅力や手腕に注目した取材に切り換えました。実際オープン当日は、予想通り大行列でしたが、途中からシフトチェンジしたことで、"なぜこんなに行列を生み出せるのか"というところにフィーチャーできたと思っています。撮りながら変わっていくのがドキュメンタリーの魅力ですね」

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――長時間密着することで、その人の人柄や番組が着地する方向性が見えてくるということですね。

「9月に放送して話題を呼んだ『シリーズ あなたにファッション革命①ZOZOの野望』(2018年9月25日放送)は、まさしくその通りの回になりました。私は直接携わっていませんが、今話題の株式会社ZOZO・前澤友作社長に独占密着しています。前澤社長は芸能人的な一面があるため、なんとなくみんなが会社や人柄を知っているような気がしていましたが、そこに映っていたのは、私たちが知らない前澤社長の姿ばかり。密着したからこそ撮れた、前澤社長の本質を映し出していました。私もいずれ、こうした著名人に密着したドキュメンタリーを撮ってみたいですね」

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――萩原さんが取材する上で心がけていることがあれば教えてください。

「すべてに当てはまるわけではないですが、基本、取り上げる人や企業、商品、プロジェクトのことをまず好きになろうとします。苦手なジャンルでもいろいろ調べて、少しずつ興味を持つようにして...。取材する側に"好き"という気持ちがないと、向こうは心を開いてくれないですから。自分のことを嫌いな人に、自分の考えや思っていることを正直に話す人なんて、なかなかいないですよ(笑)。もちろん、取材をしていくなかで、いいところばかりを目にするわけではありません。それでも最初に好きになっていれば、"いい一面も持っているから..."と広い心で物事を見ることができるような気がします。これは、取材以外の場面でも同じかもしれないですね」

――萩原さんは、元々苦手なものや嫌いなものが少ないのでしょうか? それとも、ディレクターという仕事に就いたことで、苦手なものが減ったとかとか?

「『高島屋の野望』で『365日』に密着しましたが、実は私、パンが苦手なんです(笑)。大人になってからも何度か挑戦しましたが、どうしても好きになれず...。取材対象者と関係性を築くために、これは大きく左右されるかもしれない...と思ったので、なんとかパンを好きになろうと努力しましたが、食パンを割る画にどうしても愛情が湧かない。撮影をしていても"どうすれば美味しく見えるのか"がまったくわからなくて困っていたんです。

そんな中、『365日』のオーナーシェフである杉窪さんにそのことを正直に打ち明けたところ、『うちのパンは絶対においしいから食べてみて』ということになり、実際に食べてみたら本当に美味しくて...(笑)。パンを美味しいと感じたのは、生まれて初めてでした。それ以降、"365日のパンはこんなに美味しいんだよ"という思いをのせることができたので、"それくらい気持ちは重要なんだ"と改めて思いました。特にドキュメンタリーは気持ちを伝えるものでもあるので、撮り手の愛情も大事だと思います」

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――萩原さんが今後取材したいジャンルは?

「『東京"新名所"ウォーズ』を、東京だけではなく日本全国の新名所に注目し、シリーズ化して、様々な"新名所"を取り上げたいです。新名所は、話題性があるだけに他局でたくさん取り上げられます。だからこそ、『ガイア』らしさをどこに見つけるかがポイント。そして企業CMになってはいけないため、こちら側の目線が大事になってくるんですね。すごく難しいのですが、そんな駆け引きも楽しいですね。そして、SNSなどで視聴者の皆さんに『面白かった!』と言って頂いたり、この番組がきっかけで話題になったりすると、"あーこの仕事をやっていてよかったな"と感じることができます」

――ドキュメンタリーを制作するにあたって大事なことは何だと思いますか?

「人間力だと思います。私は、『ガイアの夜明け』が大好きでこの職に就きましたが、視聴者のうちの1人だったときは、"いったいどんな人がこの番組をつくっているんだろう"とすごく興味が湧きました。勝手に気難しいおじさんを想像したりして...(笑)。でも実際に、『ガイア』チームの一員として働くようになって知ったのは、"みんな人間味のある人たちなんだ"ということ。だからこそ、人に寄り添った番組をつくることができるんだなと思います。経済を扱うといっても、そこには必ず人がいる。人のことを好きなスタッフが、経済を通してそこに生きている人たちの"今"を映しているのだと思います」

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難しい経済も人を通すとわかりやすく面白くなる...。「ドキュメンタリーは生き物なので、見るタイミングによって、番組から感じ取れることが違うかもしれません」そう語る萩原さんが選んだ珠玉の傑作選を、この機会にぜひ!

現在、インタビューで登場した3作品を含む6作品を、「ガイアの夜明け 傑作選」として、無料見逃し配信サービス「ネットもテレ東」で限定配信中。

●2017年5月9日放送「人生、最期まで"我が家"で...~家族で向き合う『在宅医療』」

●2017年9月26日放送「便利で快適! 買い物革命」

●2018年6月26日放送「華麗なるカレー戦争」
(※以上3作品は、1月21日月曜 夜11時59分まで配信)

●2018年5月8日放送「東京"新名所"ウォーズ」

●2018年9月25日放送「シリーズ あなたにファッション革命①ZOZOの野望」

●2018年10月16日放送「東京"新名所"ウォーズ②日本橋を変える!高島屋の野望」
(※以上3作品は、1月27日日曜 夜11時59分まで配信)

そして、今晩10時の「ガイアの夜明け」は、「"あなたのゴミ"その行方~迫る!「プラスチック危機」~」をオンエア。

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プラスチックが大量生産・大量消費されるようになって約半世紀。軽くて丈夫、安価なことから、いまや私たちの生活に欠かせない存在となっている。しかし近年、レジ袋やペットボトルなどの使い捨てプラスチックごみによる海洋汚染が深刻化。一方、これまで世界のプラスチックごみを資源として受け入れていた中国が、国内の環境汚染を理由に輸入を禁止した。

今、行き場を失った「廃プラスチック」が世界中にあふれている。出先を失い追いつめられた中間処理業の東港金属は、「脱中国依存」の新たな一手に打って出た。一方、コーヒーチェーン世界最大手のスターバックスは、使い捨てストローの廃止を発表。プラスチックにかわる素材の検討と、プラごみリサイクルの実験を開始。加速する「脱プラスチック」の行方を追う。

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