木村屋からメゾンカイザーへ!木村社長の波乱の人生:カンブリア宮殿

公開: テレ東プラス

日本人なら誰もが知っているガリバー企業から地方で奮闘する中小企業まで、様々な企業や経営者にスポットを当て、ニュースが伝えない日本経済読み解くカンブリア宮殿」(毎週木曜 夜10時)。

制作に携わるディレクターたちは、なぜその企業に着目し、何を感じながら取材をしているのだろうか...。知られざる制作秘話を知ってから番組を見れば、また違った視点で見えてくるものがあるはず!

そこで「テレ東プラス」が、入社16年目である報道局報道番組センター・古井大嗣ディレクターを直撃。印象的だった経営者や画面には映らなかった制作秘話を、存分に語ってもらった。

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何気なく見ている「地図」に秘められた奥深さと可能性

――そもそも古井さんは、最初から報道局志望だったのでしょうか? 現在までの経歴を教えて下さい。

「2003年の入社時は非現場の仕事を希望していて、人事部に配属され、面接の仕組み作りや女子アナの面接を担当していました。人事部にいるといろんな部署の方と会うのですが、当然ながら報道局の皆さんと会うこともあり、"面白そうな仕事だな"と思い始めたんです。3年ほどして報道局を志望すると、『ちょうど人が足りなくて猫の手も借りたいくらいだ』と言われまして...。とにかく経験してみないとわからない、使いものにならなかったらまた別の道を考えればいいと思って異動してみたら、どっぷりはまってしまいました(笑)。夕方ニュースのディレクターから始まり、警察や官庁の取材記者、『ガイアの夜明け』などを担当し、2016年から『カンブリア宮殿』の制作に携わっています」

――最近制作した中で、特に印象深かった回を教えてください。

「まずは、2018年8月9日放送『災害・救急・最新技術の裏側で大活躍!"便利さ"で生活を支える 知られざるゼンリンの秘密 ゼンリン社長 髙山善司』の回でしょうか。僕自身が警視庁記者クラブにいた頃、取材に行くのに常に持ち歩いていたのが、ゼンリンの住宅地図でした。1軒ごとに居住者の苗字まで入っていて、日本の全市町村をカバーしているものすごい地図。『カンブリア宮殿』を作るようになってから詳しく調べてみると、GoogleやYahoo!に地図を提供しているのもゼンリンだし、カーナビも70%のシェアを占めていることがわかりました。ですが提案した時点では、けっこう異論があったんです。"地図は動きがないからテレビ向きではない"と...。ゼンリンは、自動運転用の地図や世界初となるドローン用の空の地図なども開発していたので、"最先端のことをやっているすごい企業だ!" ということを必死にプレゼンしました。やっと通してもらった企画だったんです」

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――「ゼンリン」は、被災地の自治体にも地図を提供しているんですね。災害と地図が密接に関わっていることを、番組を見て知りました。

「ちょうどゼンリンの取材をしている時、西日本豪雨が起きてしまったんです。災害で住宅地図が活用されているという話は聞いていたので、"これは絶対現地に行かなくてはいけない"と思い、急きょ広島に向かいました。危険なことはありませんでしたが、通行止めになっている道路や渋滞が多くて、移動には苦労しました。そして何より大変だったのが、どこで住宅地図が使われているかが、まったくもってわからないことです。被災地で活動している人に片っ端から声をかけていった末、やっと住宅地図を使っている人に取材することができました。こうした突発的な対応は、記者時代の経験があるので苦になりませんし、あのパートがあったおかげで、地図が人命に関わっていることが伝えられて良かったと思っています。

現地へ飛ぶと、消防や警察、自衛隊の人たちが、懸命な思いで被災者を救助したり、がれきを片付けたりしていました。そういう姿を見ていると感銘を受けて、猛暑だし足場もぐちゃぐちゃだけど、"取材している自分たちが大変だなんて言ってられない"という真摯な気持ちになります」

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――「ゼンリン」の回では、現在の四代目社長だけでなく、創業者や二代目のエピソードにもスポットを当てていますね。

「二代目社長は、まだコンピューターが一般的じゃなかった1980年代初頭、社内で猛反対を受けながら、年間売り上げを超える100億円もの設備投資をして地図の電子化に踏み切っています。他社よりずば抜けて早かったことで、今の時代になってシェアの大部分を獲得できている。村上龍さんが『ゼンリンにはその時代の最新ハードを使うDNAがある』とおっしゃっていて、まさにその通りだなと思いました。

番組では紹介しきれませんでしたが、社員に地図マニアが多くて、名刺ケースなども地図柄のものを使っている女子や、高速道路のジャンクションについて熱く語る社員など、掘れば掘るほどユニークな人材が出てきそうな会社でしたね(笑)。普段何気なく見ている地図がどんな風に作られていて、どんなに奥が深くて、可能性を秘めているのかということが伝われば嬉しいです」

「2日後に来てほしい」と言われ、急遽フランスへ!

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――2018年9月27日放送「フランスパンの伝道師 日本の食卓に起こした革命と新挑戦!ブーランジェリーエリックカイザージャポン社長 木村周一郎」の回では、ちょっと変則的な携わり方をなさったとか。

「これは制作会社の企画なんですけど、途中で『フランスの本店にも取材した方がいい』という話になり、担当のディレクターはもう編集に入っていて行く余裕がなく、たまたま暇そうに見えた僕が行くことになったんです(笑)。『オーナーは明後日しか時間が取れない』という話になって、あわてて飛行機やコーディネーターなどを手配し、翌日にはフランスに向かっていました。広島の時もそうでしたが、フットワークは軽い方なのでまったく苦になりません。強行突破したお陰で、同社のフランスパンが現地でいかに人気があるかも撮れましたし、世界的なパン職人であるエリック・カイザーさんが日本を任せている木村周一郎さんをいかに信頼しているか...そんなことも見て取れました」

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――木村さんは、本来あんパンで有名な「木村屋」の七代目になる方だったんですね。お父様が会社を辞めたためにその道が閉ざされ、フランスに修行に渡ったという...。そんな波乱万丈な物語には驚かされました。

「たぶん普通の人なら腐ってしまうと思うんですけど(笑)、木村さんはフランスパンという別の道を見つけ、エリックさんのところに『毎日パンを3つもらえれば給料はいらない』と言って修行を申し込んだそうです。そうしたバイタリティに、エリックさんも惹かれたのではないでしょうか。"目標を失った人が、何を心の支えにして立ち直ったのか"がご本人の言葉から伝わる回だと思います。

番組の中では、木村さんのお父様がまだご存命だった頃、息子について語っているVTRも使用しています。普通父親はなかなか息子を褒めないので、ちょっといいシーンだなと。実は、今僕が取材している茨城県の『サザコーヒー』(2019年1月17日放送予定)にも通じることで、ここも親子で経営していますが、なかなかお父さんが褒めないんですよ(笑)。どんなエピソードが聞けるかは、ぜひ放送で確認していただきたいです」

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古井ディレクターの興味深い話はまだまだ尽きないが、前編はここまで。後編は1月17日(木)夕方5時に公開する。

2018年5月31日放送「便利さを極め街のインフラに!ドラッグストアの新王者・ウエルシア ウエルシアHD会長 池野隆光」や、高視聴率を獲得した2018年6月28日放送「外食の戦いは終わらない!~目からウロコの勝ち残る新戦略~すかいらーく創業者 横川竟」の裏話をあますことなくお届けするので、こちらもどうぞお楽しみに!

現在、インタビューで登場した2作品を含む4作品を、「カンブリア宮殿 傑作選」として、無料見逃し配信サービス「ネットもテレ東」で限定配信中。

●2018年5月31日放送「便利さを極め街のインフラに!ドラッグストアの新王者・ウエルシア」ウエルシアHD会長 池野隆光(1月27日日曜 夜11時59分まで)。

●2018年6月28日放送「外食の戦いは終わらない!~目からウロコの勝ち残る新戦略~」
(1月27日日曜 夜11時59分まで)。

●2018年8月9日放送「災害・救急・最新技術の裏側で大活躍!"便利さ"で生活を支える 知られざるゼンリンの秘密」ゼンリン社長 髙山善司
(1月16日水曜 夜11時59分まで)

●2018年9月27日放送「フランスパンの伝道師 日本の食卓に起こした革命と新挑戦!」ブーランジェリーエリックカイザージャポン社長 木村周一郎
(1月16日水曜 夜11時59分まで)

そして今晩10時放送の「カンブリア宮殿」では、「脱下請けで生き残った町工場!魔法のフライパン感動物語」をオンエア。

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"鉄の鋳物"で作ったフライパンが主婦を熱狂させている。その名も"魔法のフライパン"。下請け脱却を目指し、挑戦し続けてきた町工場・2代目、錦見鋳造社長・錦見泰郎の逆転劇に迫る!

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