咳のしかたが違う? 風邪と肺炎の見分け方:主治医の小部屋

公開: 更新: テレ東プラス

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主治医が見つかる診療所」(毎週木曜夜7時58分から)は、医師や病院の選び方のコツや無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちが答える、知的エンターテイメントバラエティ。

今回「テレ東プラス」に寄せられたのは、「風邪と肺炎の症状」「ピリピリとした痛みを伴う帯状疱疹」に関する質問です。早速、同番組のレギュラー、中山久德医師に相談してみましょう!

Q1:これまで風邪をひいても市販の薬を飲む程度でしたが、症状が治まらないため病院に行くと、軽い肺炎と言われて驚きました。早期に風邪と肺炎を見分けることはできるのでしょうか? また、重度の肺炎で亡くなった友人がいるのですが、肺炎が重症化する場合、どんな要因が考えられますか?

―― 相談者はいつもの風邪と判断してしまったようですが、本来風邪とは、どのような症状を指していうのでしょうか。

「風邪(急性上気道炎)の主症状は、鼻水が出る・詰まるなどの鼻の症状、喉が痛むなどの喉の症状、そして咳の3つです。そこにしばしば発熱や頭痛、倦怠感などが伴います。咳が激しく出ているとのことでしたので、喉や鼻の症状を伴ってなかったのであれば、風邪と自己判断するのは早計だったかもしれませんね。
風邪の原因はほとんどがウイルス感染です。そのため、細菌感染に有効な抗菌薬(抗生物質)は風邪には効きません。風邪薬も症状を和らげるものであり、風邪そのものを治すものではないんですね。ウイルスを退治するのは私たちの免疫力。38度を超える高熱でなければ発熱も悪いことではなく、体温が比較的高くなると免疫細胞が活性化してきて、体の中に入り込んだウイルスを退治しようとしてくれます。また、気道に痰が絡んでいるようであればこれを排除しようと自ずと咳き込むものなのです。ですから、体がだるくて仕方がない、夜眠れないほどつらいということがなければ、すぐに薬で解熱させたり、咳を止めてしまうのは必ずしも良くない場合があります。身体を休め、温めて、栄養をとり、免疫を高める...これが一番の対処法です」

―― 風邪と肺炎では咳のしかたに違いはあるのですか。

「喉のあたりに不快感や違和感があって出てくる咳と、肺からこみ上げてくるような深い咳という違いがあります。後者では気管支炎や肺炎が疑われますので、喉・鼻の症状が乏しいなら、早めに内科を受診して肺の音を聞いてもらいましょう。肺炎であれば大抵は異常な音が聴取できますし、レントゲン撮影によっても診断ができます。肺炎では細菌が原因となることが多く、これには抗菌薬がよく効きます。
また、一般に肺炎は高熱を伴い、咳もひどくなることが多いのですが、注意しなければならないのが高齢者の肺炎です。高齢者の中には、ひどい肺炎になっても熱も咳も出ない方がいます。軌道の異物を出そうとする咳反射が低下して痰も出なくなるので、ますます炎症が治りにくくなります。このほか、若くても喫煙していたり、もともと肺の病気がある人、免疫力が低下している人、糖尿病がある人は肺炎が重症化しやすいので注意が必要です」

―― 肺炎が死亡原因の第3位なのは、重症化する高齢者が多いからなのでしょうか。

「肺炎で亡くなる方は圧倒的に高齢者が多いですね。実は肺炎の原因はいくつかあり、中でも多いのが肺炎球菌によるものです。ただ、肺炎球菌性肺炎はワクチンで抑えることができます。2014年からは65歳を超えると公費負担で定期接種を受けられるようになっているので、対象となる年齢や自己負担額などについてはお住いの市町村に問い合わせてみてください。
ちなみに肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)の定期接種は、5年ごとに行うものと誤解される人もいるようですが、初回の接種後おおむね5年間は効果が持続しますが5年以内に再接種すると副作用が出やすくなるので、2回目以降は5年は空けなければいけないのです。」

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Q2:身体に湿疹ができ、虫さされかと思って放置していましたが、悪化し病院に行くと帯状疱疹と診断されました。薬で湿疹は収まりましたが、ひと月経っても、なんとなく体にピリピリとした痛みが走ります。この症状はいつまで続くのでしょうか。また帯状疱疹は過労やストレスも原因と聞きますが、今後再発することはあるのでしょうか。

―― そもそも帯状疱疹とはどのような病気なのですか。

「帯状疱疹はその名の通り帯状に出る疱疹で、東日本では"つづらご"、西日本では"胴まき"などとも呼ばれる古くから知られる病気です。ピリピリ、チクチクした痛みなどから発症し、しばらくすると赤い発疹ができて、そのうち中に水がたまったような水疱になります。しかし、その水疱は右側なら右側だけ、左側なら左側だけにできて、決して左右に横断しないんですね。なぜそうなるのか...それは神経に潜んでいるウイルスが悪さをするのが原因だからです。このウイルスの正式名称は『水痘帯状疱疹ウイルス』。水痘とは水疱瘡(水ぼうそう)のことで、このウイルスが体に入って初めに起こす症状が水疱瘡です。
水疱瘡は大概1週間程度で発疹が治りますが、実は治った後もウイルスは神経節にずっと潜んでいます。普段はただ潜んでいるだけなのですが、疲れていて免疫が落ちた、免疫が落ちるような病気になった、高齢になったなどをきっかけにウイルスが暴れ出すことがあります。そして神経に沿って痛みを伴う皮疹が出現する、それが帯状疱疹なんですね」

―― 症状としては最初に痛みが出ることが多いのでしょうか。

「大抵はピリピリ、チクチクした痛みなどが現れ、何だろう?と思っていると、そのうち痛みと一致したところに発疹が出る方が多いですね。中には逆の方もいます。どちらにしても、帯状疱疹だと早い段階で診断してもらい、水痘帯状疱疹ウイルスを抑え込む薬を使うことが大切です。薬物治療は1週間くらいですが、治療開始が遅れてしまうと、見た目には皮疹が良くなっても、相談者のようにピリピリとした痛みだけが残ってしまうことがあります。これを『帯状疱疹後神経痛』と言います。神経の痛みは通常の痛み止めが効きにくいので、つらい思いをしている方も多いですね」

―― 帯状疱疹を疑ったらすぐに医療機関に行ったほうがよいのですね。

「ところが、痛みだけの段階で帯状疱疹と診断するのはなかなか難しいんですね。痛みのヒントとして、ほとんどの人は体の奥からずっしり痛い、シクシク痛いというのでなく、チクチク痛い、ピリピリ痛いという表現をします。そういう痛みを感じたときは必ず目でも確認すること。中には発疹が途切れ途切れに出る人もいるので、水疱を伴う赤い有痛性の発疹を見つけたら、できるだけ早く医療機関を受診することが大事です。
再発については、若く基礎疾患のない人であればほとんど心配いりません。ただし、免疫力が落ちている方、糖尿病の方、高齢の方は再発する可能性もあるので注意してくださいね」

――中山先生、ありがとうございました。

【中山久德医師 プロフィール】
1965年 東京都生まれ。1988年 早稲田大学商学部卒業 1996年 国立山形大学医学部卒業
東京大学医学部付属病院物療内科(現、アレルギーリウマチ内科)入局
東京大学医学部付属病院、東京都立駒込病院アレルギー膠原病科を経て国立相模原病院(現、国立病院機構相模原病院)リウマチ科医長
2012年 そしがや大蔵クリニック開業
内科総合専門医、リウマチ専門医、骨粗鬆症認定医

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今回お話を伺った中山先生も出演する「主治医が見つかる診療所」。明日12月13日(木)の放送は、「血液・血管&脂肪の大掃除スペシャル」と題し、体の様々な部分に溜まった不安要素を、キレイさっぱり掃除する方法を紹介。草野所長vs東野副所長!主治医オススメの究極の健康鍋対決や酢の血液サラサラ効果が倍増する、食べ合わせプラ酢料理ベスト5を発表します。

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