鉄道愛好家・六角精児「自分が出なくてどうする!」廃線危機の路線を応援:鉄オタ道子、2万キロ

公開: 更新: テレ東プラス

山奥やトンネルに挟まれた断崖絶壁など、利用者がいるとは思えないところに存在するローカル駅...そんなぽつんとたたずむローカル駅を舞台にした、ドラマ25「鉄オタ道子、2万キロ」(毎週金曜深夜0時52分放送)では、鉄道オタク=鉄オタの主人公・道子(玉城ティナ)が実在する駅や店、駅弁を堪能する姿を描きます。

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本作で、鉄道雑誌の編集長・黒羽則夫を演じる六角精児さんにインタビュー。"鉄道愛好家"としても知られ、酒を吞みながら鉄道の旅を楽しむ番組「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」(NHK BSプレミアム)も人気の六角さんに、鉄道の楽しみ方をうかがいました。

鉄道を利用した"旅"が好き

――女性の鉄道オタク="鉄オタ"が主人公のドラマですが、ご出演されていかがですか?

「主人公が男性より女性の方が旅的な感じが出て、柔らかくていいと思いました。鉄道ファンは"鉄道"で区切ると男性が圧倒的に多いですが、"旅行"と考えると道子のような女性ファンもいるんですよ。"オタク"というより、鉄道を利用した"旅"として見てもらうと、より多くの方が楽しめると思います」

――確かに、駅弁などのグルメや絶景も楽しめる鉄道の"旅"ですね。第1話の北海道・比羅夫駅(JR北海道 函館本線)の景色もすばらしかったです。

「寒いところの景色は美しいですね。でも、やっぱり実際に行ってなんぼ。暖かい場所にいて見るのとは全く違いますから。寒い中、不便な場所に行き、その大変さを乗り越えた先に喜びがある。これをきっかけに、ぜひ足を運んでいただきたいです」

――鉄道愛好家の六角さんですが、何かきっかけが?

「昔から好きではあったんですが、ちゃんと鉄道ファンになろうと思ったのは、ギャンブルを止めると決めてから。まぁ今でもちょこちょこやってますが(笑)。それまで全国の公営ギャンブル場に行ってて、道中の鉄道の路線や車窓からの眺めが好きだったんですよ。遠くに来た旅の風情みたいなものを感じて...。なので、僕は乗るのが好きなタイプ。もともと旅行が好きで、そこに鉄道というものが入った感じかな」

――ギャンブルを止めてからは、旅の目的は何になったのですか?

「鉄道が好きになってからは、"何線に乗る"という"路線"が目的になりました。私鉄は乗っていないところもありますが、JRは福岡の香椎線(JR九州)と山口の小野田線(JR西日本)の一部以外は全部乗ってますね。その路線の始発駅から終点駅まで乗って制覇。季節によって見える景色も違うし、すごくいいんですよ」

――乗車中はどんな楽しみ方を?

「基本、車窓の風景を楽しんでいるだけですね。ときおりお酒を飲んだり、音楽を聴いたりしながら。お酒や音楽をプラスすることで見える景色が少し変わるんですよ。自分の心持ちで変わる。そこが面白いところですね」

――駅弁やご当地グルメなどは?

「弁当はあまり食べないです。僕らの仕事はロケ弁が多いので、お休みのときくらいは弁当以外のものを食べようかと(笑)。でも、駅で見つけたおつまみとか、ご当地の美味しそうなものは買いますね。長崎県の早岐駅(JR九州)で買った他では見かけないカレー味のスナックは美味しかったな。話を聞くと、長崎の人に人気のスナックみたいで。そういう、そこでしか出合えないものを見つけるのが旅の醍醐味です」

――あまり行き先を決めずに電車に乗っている感じなのですか?

「そうですね。乗ることが目的なので、ここで何かをして、ここで何を食べて...ということは考えないです。偶発事象に身を任すというか、そこで起こることを楽しむんですよ。たまたま入ったお店が美味しかったらうれしいし、マズかったらそれも面白い、そんな旅です。僕のルールは、なるべく早めに出て、15時ごろにその路線の中でも割と大きめの駅に降りること。そして観光案内所などで早めに宿を確保することが大事です」

―― 一人で行くことが多いのですか?

「基本、一人です。僕の周りには鉄道が好きな人はそんなにいないですし」

――「タモリ倶楽部」(テレビ朝日)の鉄道企画で共演されている方々をはじめ、芸能界の鉄道ファンネットワークのようなものはないんですか?

「番組で出会ったダーリンハニーの吉川(正洋)くんとはたまに連絡を取ったりしますし、中川家礼二さんや南田(裕介)さん、久野(知美)さんたちとはお会いすれば話はしますけど、わざわざというのはないかな。芝居の舞台に、鉄道のダイヤグラムを持ってきてくださるファンの方はいますね(笑)。自分で完結して、それを楽しんでいます」

廃線危機の路線に"乗って"応援

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――今回、ドラマに登場する路線は、全部乗られているんですよね。

「そうですね。とはいえ降りたことがない駅がほとんど。だからこそ"秘境駅"なんですよね。特に何があるという場所でもなく、例えば第2話の男鹿高原駅(野岩鉄道 会津鬼怒川線)は駅の近くにヘリポートがあったという記憶しかない。ただ、このドラマに出てくる路線は、只見線(JR東日本)、会津線(会津鉄道)、指宿枕崎線(JR九州)など、どれも訪ねるにはいいところばかり。やっぱり牛山隆信さんや南田裕介さんら秘境駅や鉄道に詳しい方がドラマの協力に入られているので、確かなんですよ。とくに牛山さんなんて"秘境駅"という言葉を広めた方ですから。ここで紹介された場所にはぜひ足を運んでもらいたいです」

――六角さんオススメの路線は?

「第4話の只見線(福島県会津若松市の会津若松駅から新潟県魚沼市の小出駅までを結ぶJR東日本の鉄道路線)です。2011年の豪雨災害により橋梁流出などの被害を受け、会津川口~只見の間は未だ止まっているんですよ。バスで代替していましたが、2022年、全部つながる予定です。11年ぶりに会津若松駅~小出駅まで全通する。こんなうれしいことはないです。地元の人たちの要望で、地元の人もJRもみんなでお金を出しあって再建したんです。台風などでダメになったらそのまま廃線になってしまうケースが多い中、住民が中心となって阻止した。鉄道が好きな僕からすると、ぜひ乗って応援したい。そして多くの方が只見線に乗って、奥会津の自然を楽しんでいただけたらうれしいです。

役者としての僕の役割は、こういう作品に出て応援することだと思っています。今回も、"自分が出なくてどうする"と思いました。基本、自分でなくてもどうにかなることが多いですから、そう思える作品ってなかなかないんですよ(笑)。でもこの作品は別です」

――取り上げる路線、絶景などこだわっているドラマなので、楽しみ方もいろいろありそうです。六角さん演じる鉄道雑誌の編集長・黒羽の衣装も、かつての「国鉄」の制服だそうで。

「僕がお願いしたわけではないですが、役柄的に鉄道に関わっていることを色濃く出すための演出として用意してくれて。それもうれしいですね。国鉄時代のものなので、作りは古いですが、なかなか着る機会はないですから。こうした作り手の細かいこだわりは、鉄道ファンも見ていて楽しいんじゃないかな。もちろん、すごい鉄道好きではなくても十分に楽しめる作品になっていると思います」

――テレビで絶景を楽しみ、気になった路線は乗ってみるのがこのドラマの楽しみ方かもしれませんね。

「テレビで見て、『こんな遠くに行くのは大変だ』『寒そう』と感じる人も多いとは思いますが、大変なことの方が思い出に残ります。旅に限ったことではないですが、ちょっと高いハードルを越えたとき、見える景色が違いますから。パソコンやテレビの画面では伝わらないことを記憶するために出かけてみてください。この作品がひとつのきっかけとなって、見て終わるのではなく、その先の行動につながる何かになれば。ぜひ楽しんでください」

【プロフィール】
六角精児(ろっかく・せいじ)
1962年6月24日生まれ。兵庫県出身。劇団「善人会議(現・扉座)」の創立メンバーとして舞台での活動に加え、ドラマ「相棒」シリーズ(テレビ朝日)の鑑識官役で注目を浴び、映画「鑑識・米沢守の事件簿」では初主演を果たすなど、ドラマ・映画・舞台で活躍。主な出演作品に「下町ロケット」(TBS系)、「おちょやん」(NHK)、「華麗なる一族」(WOWOW)、映画「超高速!参勤交代」シリーズ、「すばらしき世界」('20年)、舞台「レ・ミゼラブル 」など。15年から続いている「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」(NHKBSプレミアム)も人気。

次回1月14日(金)放送のドラマ25「鉄オタ道子、2万キロ」第2話は?

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第2話「栃木県・男鹿高原駅/日本屈指の秘境駅へ」
利用者数が年間100人未満の駅・男鹿高原駅へとやってきた道子は、あまりの風情のなさに絶句する。駅周辺を散策してみるが特に何もなく行くところがない道子は、仕方なく近くのベンチに座り事前に買っていた駅弁を食べる事に。そんな時、道子の目の前に少女・花蓮の姿が...。気になり声をかけてみると、少女はかなりの鉄オタだった!

(取材・文/玉置晴子)

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