キモたっぷりのカワハギ、絶品ウニ...「無印」でも販売?進化する養殖魚:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

1月7日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「魚は"作る"時代へ!食卓の常識が変わる」。

依然として"天然魚信仰"が根強い日本。「養殖魚」が新しい選択肢として「天然魚」と堂々肩を並べる時代をつくることはできるのか? 知られざる挑戦にスポットを当てた。

マグロだけじゃない!近大の"秘密兵器"が登場

大手回転寿司チェーン「くら寿司」で人気のネタがある。その名もブリヒラ。ブリとヒラマサから生まれた養殖界の新星。ブリの濃厚な旨味とヒラマサの食感の良さを併せ持つ、おいしいとこどりの魚だ。

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ブリヒラを手掛けているのは、養殖の世界では有名な近畿大学。大ヒット商品「近大マグロ」の生簀の横で、完全養殖の技術により育てられている。
「養殖ものは昔より美味しくなっていますから。今は全然こだわらないですね」という街の人の声も。今、養殖魚のイメージが変わり始めている。

養殖でしか作れない魚を...! JR西日本の意外な戦略

大阪駅から電車で15分。茨木駅改札口の目の前に、去年オープンした話題の店「プロフィッシュ」がある。平日の昼間にもかかわらず大盛況で、一番人気は生サバのお寿司。生で食べられるサバ、その名も「お嬢サバ」。天然ものは寄生虫の心配があるが、徹底管理されて育った虫がつかない「お嬢サバ」は生で食べることができる。

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手掛けているのはJR西日本。衰退する沿線地域に新たな産業をつくろうと、7年前に始めた。お嬢サバは、鳥取県岩美町の港のすぐそばにある陸上の養殖施設でつくられている。寄生虫がつかない秘密は"育てる水"。寄生虫や細菌が生息できない地層の中の水を汲み上げ、使用しているのだ。

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自ら企画した養殖事業をほぼ一人で育て上げた「JR西日本イノベーションズ」石川裕章さん。こだわるのは海ではなく陸地での養殖で、廃校なども活用している。海で養殖すればエサやりなどで海を汚すが、陸での養殖はその心配もない。沿線の企業や自治体と組み、現在6ヵ所で魚づくりを行っている。

去年5月、岡山県。石川さんは地元の企業と組み、新たな魚の開発に乗り出していた。目を付けたのは、カワハギ。なんといってもたまらないのが、海のフォアグラとも呼ばれる濃厚なキモ。

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カワハギのキモが大きくなるのは寒い時期だけ。漁獲量も少なく、値段も気軽に手が出せるようなものではない。石川さんは、きちんと管理ができる陸上養殖なら、キモが大きなカワハギを一年通して供給できると考えた。

魚がエサをよく食べる水温がある。陸上養殖は常にその温度を保てるため、海よりも短期間で成長させられるという。エサはタンパク質が豊富なオキアミやイカが主体。旨味が増し、キモも大きくなりやすい。成長に合わせてエサの大きさを変え、食べやすくする工夫も。短い時間で大きくなるかが1番の課題だ。

11月中旬。石川さんが向かったのは、生鮮食品を多く扱う新しい店舗タイプの「無印良品イオンモール堺北花田店」(大阪・堺市)。「無印良品」ではスーパーなどと組み、このような店舗の出店を加速している。人気は鮮魚コーナーで、プロが厳選した"とびきり"が並ぶ。石川さんの目に留まったのはカワハギの仲間、キモが売りのウチワハギだ。

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しかし、切り身はあっても、寄生虫がつきやすいキモは売られていない。続いて訪れた寿司店でカワハギを頼むと、こちらも切り身だけで肝は添えられていなかった。石川さんは店長から「キモが入ればお客さんも喜ぶし、店の信頼度も上がる」と聞き、カワハギの可能性を確信する。

だが、稚魚の放流から3カ月。深刻な面持ちでカワハギの養殖場へと向かう石川さん。水槽に入れた3500匹の稚魚が死滅してしまったのだ。果たして、アクシデントを乗り越え、取り組みを軌道に乗せることはできるのか?

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小さな村に新たな産業を...!ベンチャー企業と漁師の挑戦

北海道・積丹半島にある人口800人ほどの神恵内村。かつてはニシンの水揚げで北海道1位になったこともあるこの地の海で、大きな異変が起きていた。気候変動などの影響で漁獲量が減少。高齢化が追い打ちをかけ、地域の漁師はこの20年で半分になってしまった。

そんな中、神恵内村が復活をかけ、魚の養殖のサポートを行う「さかなファーム」と共に進めているプロジェクトが、ウニの養殖だ。育てているのは、高値で取引されるエゾバフンウニ。

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「さかなファーム」水産技術員の塚本春香さんは養殖のノウハウを教えるため、6年前、この地にやってきた。ウニを美味しくするため、ちょっと変わったエサを食べさせている。
実は、ウニは雑食。色々なものを試してきた結果、ウニの味が良くなると分かったのがハクサイだった。優しい味わいが自然な甘みを生むそう。もう一つ、大切なエサがカボチャ。色が綺麗になるという。味や色がエサでどう変わるかをすべて数値化していく。

今はまだ実験中だが、塚本さんは「天然のウニの味に近づけるのではなく、新しい美味しいものをつくっている」と話す。

神恵内村では、陸上だけでなく海でもウニを養殖している。育てているのはキタムラサキウニ。エゾバフンウニと並ぶ、国産ウニの代表格だ。
ウニは水温が高くなると食欲が増し、温暖化によって海草を食べ尽くす"磯焼け"と呼ばれる現象が起きている。磯焼けしたウニは中身が少なく、売り物にならない。そこで、身が小さいウニを採り、エサを与えて養殖することにしたのだ。

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勝負は去年11月、名店のシェフを招いて行われた試食会。果たして、養殖ウニにどんな評価が下されるのか?

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