人気車種ヴェゼルはタイプによっては納車が1年以上先に。
6日に発表された車名別の新車販売台数(11月)で、普通乗用車はトヨタの「カローラ」、軽自動車はホンダの「N-BOX」が首位となりました。世界的に半導体などが不足し納車遅れが深刻になっていて、カローラの場合、トヨタは出荷に3~4ヵ月程度かかる可能性があるとしています。納車に向けた調整などでさらに時間がかかる懸念も。こうした中、販売店の売り方にも変化が起きています。
愛知・東海市にある「ホンダカーズ東海」名和店でも、新車不足でさまざまな影響が出ています。同店の中島亮一店長は「どうしても展示車が準備できない状態。現状1台の展示という形になっている」と話します。通常屋内に2、3台の展示車を置いていますが、現在は1台のみ。外にある展示スペースには中古車が展示してある状況です。
「外から見ても営業しているのかなと見られがち。影響は出ています」(中島店長)
納車も通常の2〜3ヵ月遅れが出ています。ホンダの中でフィットに次ぐ人気の車種ヴェゼルは、海外の工場がロックダウンの影響を受け部品が生産できなくなったため、タイプによっては1年待たないと納車できない状況だといいます。
「納車までの期間、お客様の気持ちが変わらないかどうか。そこを維持していくのが非常に気をつかうところでもあります」(中島店長)
10万円を超えることもある車検の前に新車を手に入れたい人が多い中、納車の遅れでそれができない人が続出。「ホンダカーズ東海」名和店では、そうした客の不安を解消するために、客が負担した車検代を下取り価格に上乗せするサービスを始めました。
「いままでのやり方は通用しなくなってくる。お客様を守りながら販売していく。新たな販売戦略を構築していきたい」(中島店長)
ただSNSには車検が切れることへ不安の声が上がっています。
福島県在住で車検が切れてしまった男性は「(注文は)8月20日前後くらい。車検が11月26日で切れることになっていて、車検が切れる話はディーラーの人にもして『3ヵ月あれば11月上旬くらいには納車できそうなんでギリギリ間に合うと思いますよ』みたいな感じで(買った)」と語ります。
しかし、11月に入っても納車されず、車検が切れた車は廃車に。現在は代車でやりくりしていますが、いまだ納車日はまだ決まっていません。
納車の遅れで中古車を選ぶ人も出ています。最大手の中古車オークション運営会社「USS」によれば、11月の平均落札価格が93万8000円とこの10年で最高値となりました。
新車への買い替えが進まず、オークションに流れる中古車の数は減り、価格の高騰が止まらないといいます。東京都中古自動車販売商工組合の萩田典雄理事長は「まだ2〜3ヵ月は全然先が見えない状況にある」と話します。
韓国では"マイナスオプション"も登場
韓国では"マイナスオプション"の提案も。
納車の遅れによる影響は海外でも問題になっています。韓国でも納車まで半年は当たり前という状況で、納期は伸び続けているといいます。
韓国有数の自動車メーカー、キア自動車の販売店では今人気の車種が展示されていましたが、販売店担当者は「納期が非常に長くなっていて、ハイブリッド車で10ヵ月以上かかる」と話します。
キア自動車ではほとんどの車種がこうした状況で、納車まで1年以上かかるものも出てきています。
そこで販売店が購入客に提案するのが、搭載機能の一部を外す"マイナスオプション"です。最近の車両にはセンサーなど半導体部品が多用される最先端の運転アシスト機能が搭載されていますが、"マイナスオプション"ではこうした機能を搭載しないことで、納期を2〜3ヵ月短縮。価格も5万円ほどの値引きになります。
ただこの機能は購入後に追加することは難しく、苦渋の選択だったといいます。
「今どれだけ多く契約しても納車できなければ(販売店に)販売手数料が支給されない。相当大変な状況になっている」(キア自動車の販売店担当者)