こだわりの商品が人気!脱100円「Standard Products」が挑む”新時代の商品づくり”:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

11月26日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「"100円ショップ"新時代~いま求められるモノとは?~」。コロナ禍にありながら過去最高の売り上げを達成した100円ショップ業界。持続可能社会の実現に向け、新たな挑戦をする人々を追った。

薄利多売からの脱却?!高価値商品の開発の舞台裏!

「大創産業」が運営する100円ショップ「DAISO(ダイソー)」は、現在世界で5892店舗を展開し、年間約5300億円の売り上げを誇る。そんな100円ショップ業界でシェアトップを走る「大創産業」が、新たな戦略を打ち出している。それは、サステイナブルや環境配慮の注目に合わせ、長く使える商品を消費者に提案すること。

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今年3月、東京・渋谷に300円(税抜き)を中心にした新業態「Standard Products(スタンダードプロダクツ)」1号店をオープンさせた。流行に左右されない誰でも使えるシンプルなデザインの商品を揃え、中には500円(税抜き)や1000円(税抜き)のものも。「ダイソー」の商品力や物流力、店舗力を生かし、価格を抑えながら高い品質を求めていくという。

10月には、「新宿アルタ」(東京・新宿区)1階に、2号店がオープン。広さは渋谷店の約1.5倍以上で家賃も高く、かなりの売り上げが必要だ。店づくりを任された「大創産業」店舗運営本部・安部亜弓さん(31)は、「楽しみでありながら大丈夫かなという不安もある」と話す。

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一方、「大創産業」商品本部次長の田中茂さん(47)は岐阜・関市にいた。「スタンダードプロダクツ」は日本各地の産業とコラボレーションしており、田中さんが2号店の目玉にと考えている商品が包丁だった。800年の伝統を誇る刃物の町・関市の包丁は、世界が認めるブランドで高いものは3万円以上する。これを目標価格1000円(税抜き)という破格の安さで売るため、刃の厚さを通常より約0.7mm薄い約1.5mmにする、閑散期に発注するなどし、コストダウンを図る工夫を重ねてきた。

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商品開発一筋16年の田中さんがもう一つ力を入れているのが、日本の木材を使った商品だ。1号店では、すでに福井県産のヒノキでできた箸や西東京・檜原村産のスギで作ったスマホスタンドを販売しているが、そこに間伐材を表紙に使ったメモ帳を加えようと考えていた。

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伐採された間伐材を有効利用することは、森林を守ることにも繋がる。問題は値段だ。国産の間伐材を使うと価格は300円(税抜き)がギリギリになる。「ダイソー」のメモ帳は4冊セットで100円(税抜き)。1冊で300円(税抜き)の価値があることを伝えるのは容易ではない。
どうすれば値段を下げられるのか、220円に抑えられないか...木製品メーカーの橋本翔吾さんとの商談。

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「あまり安く売り出したくない。うちで安くすればするほど『国産材って安いんだ』と林業の人にお金が入らなくなってしまう」

林業の現実を知った田中さんは、上司に「300円で勝負したい」と伝え、メモ帳の価格は300円(税抜き)に決定した。与えられた課題と向き合いながら年内発売を目指す。

そんな中、「スタンダードプロダクツ」2号店の店づくりを任された安倍さんは、開店の準備に追われていた。入社して10年、売り場一筋で「ダイソー」の店づくりを叩き込まれてきた。これまで培ってきた陳列技術は、商品をいかに多く並べて客の目に止まらせるかというもの。しかし「スタンダードプロダクツ」では、その商品を買うと生活がどう変わるのか、客がイメージできる店づくりが求められる。

新店オープンまで1週間に迫った10月中旬、店員に指示をする安倍さんの姿があった。力を入れている日本の木材、間伐材を使ったグッズは、中央部の広いスペースを贅沢に使ってレイアウト。田中さんが岐阜・関市の職人とつくった包丁も、入口近くの目立つ場所に置いた。人気の食器も揃え、身近な生活用品も充実させた。

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だが、新宿店オープン当日の10月22日、開店まであと1時間というその時、商品本部本部長に1通のメールが届く。「棚間の陳列方法を議論しろ」──。送り主は社長だった。店舗の写真を見て、入口付近の陳列を変えるようにとの指示。「間に合う? あと1時間しかない...」開店時間は刻一刻と迫るが、安部さんはどう対応するのか。

廃棄を減らしたい...100円ショップ業界に挑むベンチャー企業

安さに加え、豊富な品揃えが人気を呼ぶ100円ショップの商品は、店のオリジナルもあるが、メーカーが企画・生産を請け負っているものも。その全国に約100社ある「100円グッズメーカー」の中に、これまでとは違う形で商品づくりに挑んでいる企業がある。

助っ人役を担うベンチャー企業「みん100」(京都市)は、「こんな100円グッズがあったら欲しい」という消費者のアイデアをもとに、メーカーと商品開発をしている。社名は「みんなで100円商品を作ろう」という意味だ。

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社員は20〜40代の4人。プログラマーやライターが集まっている会社で、一般消費者から100円グッズのアイデアを募るサイトを運営し、1万4000人以上の会員から投稿されたアイデアの中から「これぞ」というものを商品化する。これまで出たアイデアは1万7000以上で、約100アイテムを生み出してきた。代表作はカーテンの隙間を止めるマグネットクリップや、パソコンのショートカットキーが描かれたマウスパッドで、累計売り上げは約1300万個に達する。

「みん100」誕生の背景には、100円ショップが抱えてきた大きな課題がある。100円均一は大量生産・大量販売が前提の世界だ。客の支持が得られない商品は、廃棄の道をたどることになる。廃棄を減らすには、本当に消費者が求めているものを世に送り出すしかない。「みん100」はそんな思いから生まれた。

社長の池田大介さんは「ただ使い捨てるだけでなく、消費者がものをつくるプロセスに関わることで、環境問題などに意識を持つということは意外とある」と狙いを話す。

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10月下旬、「みん100」の吉見友絵さんは100円グッズメーカー「スバル」(大阪・岸和田市)を訪れた。今回一緒に作ろうとしているのは、ベビーカーの車輪カバーだ。「みん100」のアンケートでは「雨上がりだとタイヤに砂や藁が付く」「電車の中で折りたたむと車輪が上になり、周りの迷惑になる」など、ベビーカーに関する切実な声が上がっていた。

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試作品は車輪を1つずつカバーするタイプや4つの車輪を1枚で包む大きなものまで、全部で4パターン。この試作品をネットで一般公開し、再びアンケートで意見を募る。色や素材、形や大きさなどを細かく聞き、本当に求められる商品まで近づけていく。

「スバル」商品開発部長の青木孝司さんは、「『みん100』は我々ができないことをやってくれる。数百人のアンケートを取ってくれる。それを根拠にし、ものを作っていくとき『これがいいのか』『こっちがいいのか』と判断できる」そう話す。

青木さんは、かつて、ある雑貨メーカーの経営者だった。しかしこだわりの商品が年々売れなくなり、5年前に倒産。その後「スバル」にスカウトされた。「その時は高いものを作っていた。逆に100均にまねされていた。100均をよくは思っていなかった」と話すが、今は100円商品の開発に挑んでいる。

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1週間後、アンケートの結果が届く。一番人気は車輪を一つずつはめる4個セットのタイプで、素材はレインコートほどの厚手のものが選ばれた。問題は両方を採用すると予算オーバーしてしまうこと。素材を薄くするか、大きさを変えるか、青木さんの判断は......。

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