【この記事の3行まとめ】
・声優の伊瀬茉莉也と黒沢ともよが「行き過ぎた愛情」をテーマにした朗読劇を。
・父から暴力を受けていた息子は、自分を守ってくれた母の願いを叶えたいと思っていた。
・ところが母は、いなくなった父のところに行きたいと言い出し......?
恋は盲目と言うが、恋愛に限らず、強すぎる愛情は人間の感覚を狂わせてしまう。好きな人のためなら、というのは素敵な言葉だが、そのせいで本当に大切なものを失ってしまうかもしれない。あなたは、大丈夫だろうか。
"Mr.都市伝説" 関暁夫がMCを務めるストーリーテリングバラエティ「Mr.都市伝説 関暁夫のゾクッとする怪感話」(毎週金曜深夜0時放送/BSテレ東)。巷でささやかれる都市伝説、人智を超えた超常現象、人間の悪意と狂気......様々なゾクッとする話を人気声優の朗読劇でお届け。
11月19日(金)の放送では、前回に引き続きアニメ「宝石の国」で共演していた伊瀬茉莉也(アンタークチサイト役)と、黒沢ともよ(フォスフォフィライト役)が登場。アニメは総合芸術だと思っているという伊瀬。重要な要素の一つである声の部門を担うにあたって、「役を生きてあげる」ことを大切にしていると語った。
怪感話#46
「お母さんのために」
浮き沈みが激しい母親(黒沢)を持つ、中学生の息子(伊瀬)。他の誰より優しい時もあれば、鬼のように怒る時もある母親だが、幸せになってほしい、支えていきたいと息子は思っていた。
ある日の夕食、母親はラタトゥイユを作った。
「あなたの好きな、ラタトゥイユよ」
息子は、ラタトゥイユが好きだと言ったことは一度もない。ただ、母親はなぜか息子の好物だと思っているので、否定はしなかった。
「あの人も、ラタトゥイユが好きだったな......」
あの人とは、父親のこと。父親は、酔うと息子に暴力を振るった。息子は、自分を守ってくれた母親の叫びを思い出す。
「あんたなんか父親じゃない! この子は私が守る」
「死んじゃえ!! あんたなんか、死んじゃえばいいんだ!!」
だが、父親がいなくなると、母親は浮き沈みが激しくなってしまった。それでも息子は、自分が我慢すれば元に戻ると信じている。そして、自分を守ってくれた母親の願いを叶えたい。そう思っていた。
「ラタトゥイユ......あの人のためにたくさん作ったのに。あの人はどこに行ったの?」
母親は、父親がいなくなったのは息子のせいだと繰り返す。
「あんたなんか産まなきゃよかった。あんたさえいなかったら私は幸せになれたのに」
息子はひたすら「ごめんなさい」と謝り続けていたが、父親に殴られ、死ねと言っていたにもかかわらず「あの人のところに行きたい」「あの人と一緒がいい」と言い出す母親に愕然とする。
なおもあの人はどこに行ったのかと聞く母親に、息子はこう告げた。
「だから、父さんは母さんが......」
「私が殺したの? ねえ、私が殺したって言うの!?」
「死ねって願ったじゃないか!!」
息子を平手打ちした母親は、「私も死にたい」とこぼす。