厄介者の軽石を有効活用しコーヒー畑が生まれ変わる!?<WBS>

公開: 更新: テレ東プラス

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AIが自動で衛星画像を解析し、軽石を赤く表示している

沖縄などに漂着した大量の軽石が地元の漁業や観光に大きな被害をもたらしています。今後、関東の沿岸部に接近する可能性も指摘されている中、「海の厄介者」となっている軽石を早期に発見したり、有効活用する動きが始まっています。

沖縄や奄美地方の沿岸で被害をもたらした軽石は今後、四国や本州などにも広がっていくとみられています。そんな軽石の動きをいち早く捉えるシステムの開発が進んでいます。AIによる画像解析を手がけるIT企業「リッジアイ」が開発したのは、軽石ビューアというサイトです。

「軽石がどれぐらい増えたか、どれぐらい減ったかを簡単に可視化できるアプリケーションです」(リッジアイの畠山湧さん)

10月31日に撮影された沖縄県名護市の沖合の衛星画像には、軽石はほとんど確認できません。一方、今月7日の衛星画像を見てみると、筋上の軽石が多く確認できます。軽石ビューアは、こうした異なる2枚の衛星画像を重ね合わせ、変化を確認できます。

またAIが自動で衛星画像を解析し、軽石を赤く表示するシステムも開発しました。今後、軽石がいつ、どこに漂着するのか予測するシステムの開発を検討しています。

「より高精度でモニタリングしたいという依頼も来ているので、カスタムしたモデルを提供して、被害の予測などにつなげてほしい」(畠山さん)

今後、軽石はどこまで広がるのか。東京海洋大学の長井健容准教授は「直近で北東に流れている軽石は、黒潮に沿って(今月)20日から30日にかけて伊豆半島から関東近海に接近する見込みです」と話します。

関東地方に近づくころには、沖縄地方に流れ着いた量の10分の1程度になるとみられていますが、長井准教授によれば油断できないと言います。

「偶然が重なって低気圧による風と高波が南から来て、まとまった量が漂着すると漁船が航行できなくなる」(長井准教授)

軽石を再利用するケースも

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漂着した軽石はコーヒー農園の土壌改良剤として活用されるケースも。

一方、厄介者の軽石を有効活用する動きも出ています。

鹿児島県・徳之島でコーヒー農園を営む宮出博史さん。漂着した軽石を袋に詰め、水につけ塩分を抜いて乾かしています。一体何に使うのでしょうか?

「コーヒー農園の土壌改良剤として使っています」(宮出さん)

軽石を土に混ぜることで、水はけが良くなり、健康的な木に育つといいます。今回、軽石が海に流れ着いたと聞いて、活用方法を思いついたそうです。

「(もともとは)購入して使っていたので、自然と流れてくるとは思っていませんでした」(宮出さん)

地元の中学生も授業の一環として、宮出さんの作業を手伝っています。現在は農園で栽培している2000本のうち100本ほどに軽石を使用。1〜2年で改良の効果がわかる見通しです。

「捨ててしまえば、産業廃棄物になるが、生かせば地域資源になるので、決して邪魔な存在ではありません」(宮出さん)

軽石を資源として活用する研究も進められています。先月、神奈川県立産業技術総合研究所と鹿児島県工業技術センターが共同で開発したのが、ゼオライトと呼ばれる物質で覆われた軽石「ゼオライト軽石」です。見た目は普通の軽石とあまり変わりませんが、電子顕微鏡で見てみると、表面に丸い物質がびっしりついています。これがゼオライトです。

ゼオライトには、髪の毛の20万分の1という小さな穴が開いているため、分子レベルの小さな物質を吸着できる特徴があります。このゼオライト軽石、どんなことに活用できるのでしょうか?

「赤潮の原因物質とされているアンモニウムイオンを吸着できると考えています。セシウムイオンを吸着すると言われているゼオライト軽石ができたので、原発の汚染水処理にも使えると考えています」(神奈川県立産業技術総合研究所の小野洋介主任研究員)

作り方は簡単で、水酸化ナトリウム水溶液に軽石を入れて100度以下で加熱するだけです。製造コストもあまりかからないため、今漂流している軽石も活用できるのではと期待を寄せています。

「同じ軽石ですので、この技術を工夫しながら活用できるんじゃないかと考えています。天然資源を活用するという意味で、この技術が使っていただければありがたいと思います」(小野主任研究員)

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