イギリス 人手不足で大混乱!クリスマスもピンチ<WBS>

公開: 更新: テレ東プラス

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人手不足の影響でスーパーマーケットの野菜や果物の棚が空に。

イギリスでは9月、ガソリンの奪い合いで客同士が殴り合いになる一幕がありました。この騒動はガソリンをスタンドまで届けるドライバーがいない「人手不足」が原因でした。いま「人手不足」は世界各国で問題となっていますが、イギリスではクリスマスにも危機が忍び寄っています。

現在は平常を取り戻しているイギリスのガソリンスタンド。イギリス国内で50のスタンドを運営する「パークガレージグループ」のへマント・タンドンさんは9月の騒動について「この燃料危機の前から10万人も長距離ドライバーが不足していた。需要が膨れ上がり、燃料会社は対応できなくなったんだ」と話します。

イギリスではもともとドライバー不足でしたが、コロナ禍での需要回復が世界的に起きたことで、それが一気に顕在化。慌てたイギリス政府は軍を投入し、各地のスタンドにガソリンを輸送し、騒動は一旦収まりました。しかしタンドンさんは「この問題はまたどこかで起きる。正常化しても人手不足は解決していない」といいます。

さらに人手不足による新たな問題も起きています。スーパーマーケットを訪ねると野菜や果物の棚が空です。一体なにが起きているのか。ロンドン近郊の農家を訪ねました。

フルーツ農家のスティーブン・テイラーさんは「1ヵ月前に収穫の時期が終わったが、人手が足りず作業が終えられなかった」と肩を落としていました。テイラーさんの畑では、人手不足のために収穫できなかったフルーツが腐っていました。

「東欧の労働者は18〜25歳で夏休みにイギリスへ来て、収穫の仕事をする。それが終われば国に帰る。Win-Winの形だったのに」(テイラーさん)

例年雇っていた東ヨーロッパからの季節労働者が、イギリスのEU離脱、ブレグジットによるビザの厳格化で激減したのです。

「イギリスの失業者が求めるのは、フルタイムの仕事。果物の収穫は年に数ヵ月の季節労働なのでイギリス人はやりたがらない」(テイラーさん)

もともとブレグジットは「イギリスの雇用が移民に奪われている」と、ジョンソン首相らが主張し、国民投票の末に決定されたもの。そのため政府は農家の窮状を知りつつも、動きは鈍いままでした。しかし、そのイギリス政府も追い込まれていました。イギリス国民が一年で最も楽しみにしている、クリスマスが危機だというのです。

クリスマスの定番料理が食べられない?

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思うように出荷できず農場は成長した豚であふれている。

クリスマス危機とはどういうことなのか。イギリス・シェフィールドの畜産農家を訪ねました。2000頭の豚を育てる農家のスティーブン・トンプソンさんは、このままではクリスマスが台無しになると話します。

「『ピッグスインブランケット』がなければクリスマスはキャンセルだ」(トンプソンさん)

イギリスのクリスマスの定番料理が、ソーセージをベーコンで包んだ「ピッグスインブランケット」。今のままでは食材が食卓に届かないというのです。

ブレグジットによるビザの厳格化で、食肉処理施設でも主力を担っていた東ヨーロッパ出身の人たちが激減しています。食肉処理場に思うように出荷できないため、農場は成長した豚であふれていました。この状態が続くと「普段は肉にするために殺される豚を、理由なく殺し焼くことになる」(トンプソンさん)といいます。

10月初め、トンプソンさんら養豚業者は、ジョンソン首相率いる与党・保守党の党大会の会場に集まり、抗議活動を展開しました。プラカードには「われわれがクリスマスに求めるのはピッグスインブランケットだ」と書かれ、クリスマスの定番料理が食べられない危機を訴えました。

そのかいもあってか、イギリス政府は食肉技術を持つ外国人800人に半年間の短期ビザを発行することを決めました。

クリスマスは間近。トンプソンさんは「追加のビザはすぐに発行してほしい。そうでないと数週間で厳しい状況になる」と訴えています。

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