<コロナ禍”スナックママのリアル”を取材>「孤独を感じた...もうダメかもしれない...」営業をあきらめた瞬間も

公開: 更新: テレ東プラス

10月1日。今年4月に発出された緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が解除され、夜の街も少しずつ日常を取り戻しつつある。そんな中、ドラマ「スナック キズツキ」(主演:原田知世 テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0時12分放送)を観た編集部・Hはふと気になった。ラジオ時代(前々職はラジオのADをしていた)の先輩がママを勤めるあのスナックは、今どうしているのか...。

思い立って連絡してみると、「お店再開したよー。休みすぎて、料理のやり方がわからなくなって困ってるけど(笑)」とママからの返事。「取材? 私は自分の城でやりたいようにやってるだけだから参考になるかわからないけどそれでもよければ...遊びに来て」とのこと。そこで10月11日、早速ママの店「Cheek&Cheeks」(東京・国分寺市)へ。

kizutsuki_20211021_01.jpg
それにしても、スナックで飲むのはどれぐらいぶりだろう...。道に迷って15分遅れで到着するも、ママは「遅~い!」と優しい笑顔で迎えてくれた。店内はというと...。

kizutsuki_20211021_02.jpg

kizutsuki_20211021_03.jpg

kizutsuki_20211021_04.jpg

kizutsuki_20211021_05.jpg▲感染対策もバッチリ! カウンターだけでなく、隣席との間にもしっかりパーテーションが設置されている

棚には、ママのコレクションであるアナログレコードがズラリと並ぶ。'70~'80年代のソウルミュージックやJPOPを、ママとともに楽しみながら酒を酌み交わすのがこの店の醍醐味。「接客というか、一緒に音楽を楽しむって感じかな? レコードはこれだけ揃ってるけど、最近は"アナログで聴きたい"という人もあんまりね...。大方YouTubeでまかなえちゃうから」。

とはいえ「"あの曲はある?"と聞かれたら、必ず"あるよ!"と返したい。それが信条」とママ。リクエストには100%応えたいと話し、時には客のリクエストで「孤独のグルメ」をエンドレスで観ることもあるという。

そもそもママは、某有名局にて、長きに渡りラジオディレクターをしていた。音楽番組も担当していたが、ある日プロデューサーから「選曲に趣味が入りすぎている。たくさんの人が知っている曲をかければそれでいい」と言われたことを機に、やりがいを見失ってしまったそう。「もっともっといい曲がたくさんあるのに...。自分が好きな曲、素敵な曲を紹介できる空間が欲しい」そんな一念でこの店をオープンさせた。

撮影もそこそこに、まずは一杯!(※いい仕事だ)

kizutsuki_20211021_06.jpg
瓶ビールは、大好きなサッポロ! 真空断熱タンブラーとともに登場する。タンブラーの大きさが、飲んべぇにはありがたい!

kizutsuki_20211021_07.jpg
本日のお通し。千葉産の落花生は直径5cmと超巨大! この時期しか味わえない逸品だそうで、ゆで落花生でいただく。濃厚なうまみにビールが進む進む。そのお隣は鮭の西京漬け。絶妙な塩加減でおろしと合う。この後、ほっかほかのゆでたて枝豆、カズチープレッツェルなど、ママが抜群のタイミングでいいつまみを出してくれる。ちびちび食べながらぐいっと飲む...スナックのつまみ、やっぱ最高! 別メニューで「シャウエッセン」「おでん」「ピクルス」「エシャレット」などもオーダー可能。

「つまみはその日に来そうな常連さんの好みを考えて作ることが多いかな? "あの人はキュウリが苦手"とか、そういう好みはだいたい覚えてるかも。"スナックにしては手がかかってるね"と言ってもらえるような、ちょっとだけ感動してもらえるメニューを目指すようにしている」とのこと。

kizutsuki_20211021_08.jpg▲ママはシャイなので、後ろ姿(しかも半身)のみでお許しを。会いたい方は、ぜひ現地へ!

あっという間に瓶ビールを2本空け、お次はハイボールへ。話題は「緊急事態宣言の期間中、どうしてました?」。

「私は一緒に暮らしている人もいないし、お店を開くことができなくなって、やっぱり孤独は感じたよね。"どうしてる?"と気にかけてくれるお客さんはいたけど、人に会えないつらさというのは初めて感じたかもしれない」。

ママはこの店をオープンさせる際、貯金をすべてつぎ込んで改装した。防音設備や音響にもこだわり、自分好みの空間に。ママにとって、店は城なのだ。

「宣言期間中、お客さんはいなくても、やっぱり1人で来ちゃうのね(笑)。ずーっと好きな音楽だけを聴いて...。それはそれで楽しいけど、お客さんがいればもっともっと楽しいのになって。コロナ禍になって大変なことは多かったけど、人と繋がることのありがたさ? 初心を思い出せたことは良かったのかもしれない」

酔いも手伝って、単刀直入に聞いてみた。「お店を閉めようと思ったこともありました?」。

「......あった。正直言うと、元々この店、黒字が出る日ばかりじゃなくて、やっとやっていけてるかな? って感じだったし、持続化給付金が出るまでは、家賃やら経費やらで営業しなくても出ていくばかり。"あーもうダメかもしれない!"と思った時があって、YouTubeで『お金が貯まる行動』なんていう動画を見ちゃったりしてね(笑)。いよいよもうお金がない! となった時、大家さんに『閉めようかな』と相談したら、持続化給付金の存在を教えてもらったの。こういう情報って、私のように情報に疎かったり受け身な人間にはなかなか届かないからどうなのかな? と思っちゃう」

「本当に良かったですね!」月並みだが、私にはそれ以外かける言葉が見つからなかった。核心に迫ったところでホッとしたのか、そこからは自分のコロナ禍での日常、テレワークでモチベーションを上げるための苦悩、唯一の趣味だった飲み会ができないこと、一緒にいすぎることで生じる家庭内での軋轢など、気がつけば、思う存分話を聞いてもらっていた。翌日声が枯れてしまったほどだ。しかもあろうことか、最後はシクシクと泣いていたのである(笑)。こんな姿、会社の同僚はもちろんのこと家族にも友達にも見せられない。

「人間って、どんなに幸せそうに見えても、みんなどこかしらにつらいことを抱えていると思うのね。私は言いたいことを言うし、お客さんを怒ることもある。私が正解なんて出せるわけがないし、言えるわけないけど、このお店にいる間だけ"幸せ"とか"素敵な時間を過ごした"と思ってもらえたらいいかな」

そんな話をしているうちに、ボトルが1本空いてしまったのは言うまでもない。

kizutsuki_20211021_09.jpg▲中途半端なハイボールの写真ですみません...(汗)

まだまだ以前のように飲み会やスナックを楽しめないのが現状だが、こういう素敵な空間を、私たち飲んべぇは決してなくしてはならない...。

誰かに騙されたわけじゃない、誰かに裏切られたわけでもない、泣きたいほどひどい目に遭ったわけではないけれど、ほんの些細な出来事に心が傷つくことがある...何でもないような顔してやり過ごしても、少しずつストレスはたまっていく...まるで箪笥の裏の綿埃みたいに...(「スナック キズツキ」より)

心に綿埃がたまったら、またママに会いに来よう。改めて感じさせられた夜だった。

【お店情報】スナック「Cheek&Cheeks」
〒185-0012 東京都国分寺市本町2丁目7−3 川本ビル102
※営業時間はhttps://twitter.com/cheekandcheeksでご確認ください。

(取材・文/蓮池由美子)

10月22日(金)深夜0時12分からは、ドラマ「スナック キズツキ」第3話を放送!

kizutsuki_20211021_10.jpg
原田知世主演! スナック キズツキは傷ついた人だけがたどり着く不思議なお店。店主トウコの美味しい料理と癒しのおもてなし。傷ついた客も歌って踊ってストレス解消!?

今回スナック キズツキを訪れる傷ついた客はサラリーマンの佐藤悟志(塚地武雅)。会社では後輩(小関裕太)の態度が気になるが口に出せず、自宅では母親(丘みつ子)との地味な二人暮らし...。スナック店主のトウコ(原田知世)が佐藤に勧めるのは、なんとエアギター!『人生の成功ってなんだ!?』今までためこんでいた不満をシャウトする。

PICK UP