プラセンタ注射は更年期や美容に効く?知っておきたいメリットとデメリット

公開: 更新: テレ東プラス

10月から月曜よる8時に放送時間を変更してお届けする「主治医が見つかる診療所」。第一線で活躍する医師たちが、病院選びのコツや最新の健康法など、医療に関するさまざまな疑問に答える知的エンターテイメントバラエティです。

今回のWEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは、更年期障害に悩む女性からのプラセンタ注射の効果についての相談です。さっそく、レギュラー医師として同番組に出演中の姫野友美医師に、更年期症状の緩和についてお聞きしましょう!

更年期障害を緩和する効果には個人差がある

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Q: 50歳・会社員です。更年期の症状や肩こりがひどく、友人に相談したところ「プラセンタ注射がおすすめだよ!」とアドバイスされました。彼女は月に2回打っているそうですが、頭痛や肩こりが軽減されたと言います。また、年齢よりもだいぶ若く見え、「肌のたるみに効果があるような気がする」とも話していたのですが、更年期の症状を軽くするだけでなく、美容効果もあるのでしょうか?
注射を受ける間隔や頻度、乳がんや子宮がんを誘発するリスクなどについてアドバイスをもらえればと思います。また、飲むタイプでプラセンタエキスを摂取しても同じような効果があるのかも知りたいです。

―― 先生、「プラセンタ」とはホルモン剤のようなものですか? プラセンタという名称は知っている人も多いと思いますが、更年期の症状の改善に効果的なのでしょうか?

「まず、プラセンタの注射薬はホルモン剤ではありません。プラセンタはヒトの胎盤から抽出したエキスを原料とした特定生物由来製品ですが、製造過程で血液やホルモンをすべて除去するため、ホルモンは含まれていないのです。

プラセンタの主な成分はアミノ酸やタンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、核酸、酵素といった、いわゆる生理活性物質です。細胞の新陳代謝を促す成長因子などを豊富に含んでいることから、疲労回復や健康維持などさまざまな効果が期待できます。

更年期障害に対する効果については、女性ホルモン(エストロゲン)を補充して更年期障害を治療する方法とは異なり、ホルモン的な作用はまったくないので、人によって緩和効果には差があると思います。

ちなみに、プラセンタにはホルモンが含まれていないので、投与によってがんを誘発することはありません」。

―― 相談者は友人にすすめられているようですが、受けてみる価値はありそうですか?

「プラセンタ注射には大きな副作用がないので、やってみてもいいかもしれませんね。コラーゲン合成なども促進するので、美肌やハリなど美容面での効果が期待できますし、肩こりなどが緩和されたのも、おそらくビタミンやミネラルによってミトコンドリアの機能が少し回復したからなのだろうと思います。

現在、医療用に使われている注射薬には、"ラエンネック" と "メルスモン" の2つがあります。費用(治療費)に関していうと、ラエンネックは肝機能障害、メルスモンは更年期障害・乳汁分泌不全の治療薬として保険適用がありますが、美容目的で受診する場合は保険が使えず自由診療になります。

回数は、最初は週に1回、徐々に月に2回、月に1回......とするなどそれぞれですが、毎週1回通院するのは結構大変ですよね。

今は他にも効果の高い治療法がたくさんあります。受ける前に以下のように、自分なりのメリット・デメリットを考えてみるといいかもしれませんね。

1.人によって効果に差がある。
2.注射のたびに医療機関に出向かなくてはならない。
3.高額とまではいかないが、美容目的の場合は自費扱いになる(1アンプル[2mL]1,000〜2,000円くらい)」。

輸血や献血ができなくなる点には留意を

doctor_20211018_02.jpg画像素材:PIXTA

―― 飲むタイプのプラセンタエキスもありますが、効果的にはどうなのでしょう。

「そこはやはり注射のほうが効くと思います。通常の薬と同じで、内服するよりも注射で投与したほうが体内に直接送り込まれるので吸収率がよく、即効性があります。飲むタイプは消化管で一度分解されてしまうため、そもそも吸収がうまくできているかどうかわからない部分もあります」。

―― 注射後に気をつけることはありますか。

「輸血や献血はできなくなります。プラセンタは化学合成した医薬品ではなく、ヒトの胎盤から作られたもので、ウイルスを不活化し、HIVやB型肝炎、C型肝炎などの感染症がないことは確認されていますが、それでも今の技術で存在を確認できないウイルスがある可能性はあります。どんなに対策を頑張っても感染リスクをゼロにすることはできないので、日本赤十字社としては輸血や献血による感染を抑える必要があるわけです。いまだかつて、プラセンタによって感染症になった人はいないといわれていますが、症状が出ていないだけで何らかのウイルスに感染している可能性はゼロとは言い切れませんね」。

―― 更年期障害プラス美容に効果があると考えずに、それぞれ別の方法で治療やケアをしたほうがいいのでしょうか。

「更年期障害の症状がひどい場合にはホルモン補充療法をするのが一番だと思います。ホルモン補充療法は乳がんや子宮体がんのリスクが高まると不安視されていましたが、量や期間などをしっかりと管理したうえで行えば問題はないといわれています。今はさまざまなホルモン剤が出てきていますので、婦人科の医師と相談しながらきっちりとホルモン剤を使っていくほうが症状は早く治まります。

美容効果についても、一石二鳥で更年期症状の緩和と併せて狙うのではなく、別々に考えたほうが即効性があり、より効果は高いと思いますよ。今は外用薬でも美容効果の高いものがたくさん出ています。良い方法はいくらでもありますから、注射で痛い思いをしなくてもいいように思えますね(笑)」。

―― 姫野先生、ありがとうございました!

【姫野友美医師 プロフィール】
1954年 静岡県生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。
九州大学医学部付属病院心療内科、Mayo clinic Emergency Room (U.S.A)Visiting Clinician、都立広尾病院、東邦大学大橋病院麻酔科、木原病院、テーオーシービル診療所などを経て、2005年ひめのともみクリニック開設、2006年日本薬科大学漢方薬学科教授就任。「女の取扱説明書」(SBクリエイティブ)、「心療内科に行く前に食事を変えなさい」(青春出版社)、「心療内科医が教える 疲れとストレスからの回復ごはん」(大和書房)など著書多数。近著に「認知症になりたくなければラーメンをやめなさい」(講談社)。

※この記事は姫野友美医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った姫野先生も出演する主治医が見つかる診療所(10月18日月曜夜8時)は「秋の味覚を食べまくって健康になろうSP」!

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食欲の秋に知っておきたい、番組主治医が教えるサンマ、キノコやカボチャなど秋の味覚を上手に取り入れる裏ワザをクイズで出題! また、「くら寿司」最強の5皿を選ぶ人気企画では、季節の変わり目の秋の不調を遠ざけるメニューを決定。さらに、大都会を離れて田舎暮らしをする芸能人は健康なのかを検証。田中律子と林マヤの生活に密着し、血管年齢と肌年齢を計測する。果たしてその結果は?

どうぞお楽しみに!

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