就任直後にコロナ禍で窮地に。他校に先駆けオンライン化に踏み切った東京・青稜校、若き3代目校長の挑戦と素顔

公開: 更新: テレ東プラス

歴史や校風、卒業生のネットワークまで、名門校の知られざる姿を通してその秘密に迫る「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

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今回の主人公は、東京都品川区にある青稜中学校・高等学校(以下、青稜)の青田泰明校長(42歳)。青稜はかつて商業女学校から進学校に変貌を遂げた、東京都で注目の私立進学校。青田校長は青田家の校長としては3代目にあたる。しかし、なぜ曾祖父が設立した学校を継がなければならなかったのか? そこには決して抗えない一族の事情があった。

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1938年(昭和13年)、青田校長の曾祖父・青田瀧藏が「将来、女性の活躍が必要になる」と考え、青蘭商業女学校を創立。2代目の大伯父・青田幸夫が1995年(平成7年)に男女共学化に舵を切り、青稜中学校高等学校に改称して進学校を目指した。その大伯父が亡くなった時、青田校長はまだ10歳。当時、青田家には後継者がなく、青田校長が継ぐまでの31年間、外部から8人の校長を登用して進学校への道筋をつけた。
現在の全校生徒は約1,600人。ここ10年で偏差値が急上昇し、2021年春の大学合格者は国公立大学53人、早慶上智48人と高い進学実績を誇る。青稜ではいつでも好きな教師に勉強の相談ができる。教師が常駐する自習室もあり、放課後は午後9時まで使用可能だ。

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生まれた時から校長になる運命を背負っていた青田校長。じつは2代目の大伯父夫婦に子どもがなく、姪子の息子である泰明さんを校長にすることが親族間で決められていた。自分の人生を選べないと気づいたのは中学生の時だったという。

将来の夢を家族に話したところ厳しく怒られ、「なんで夢を言っただけで怒られるんだろう。これだけ怒られるということは、もう無理なんだな」と悟った泰明さん。その後、慶應義塾大学で法学部政治学科を専攻し、大学院では社会研究科で心理学などを学んだのち、昨年の春、校長に就任。そんな青田校長を支えるのは、理事長である母の和世さんだ。違う夢があると聞いた時は、「困ったと思ったが、自分の道を自覚したのか言わなくなった」と当時の正直な心境を明かしてくれた。

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朝7時半、Tシャツに短パン姿で颯爽と登校する青田校長。とても校長先生には見えない出で立ちだが、学校では誰もが知っているおなじみの登校スタイルだという。朝食は学校でとるのがルーティン。生徒との距離感を大切にし、時間があれば校内を歩く。売店に並ぶ生徒に声をかけるなど、積極的にコミュニケーションを図る青田校長だが、そこには「親の次に近い大人でありたい」という思いがあった。

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夕食も校長室で済ませ、夜な夜な行う作業に取りかかった。巨大なホワイトボードに向き合い、生徒に何をどう伝えれば響くのか、新たなプロジェクトの狙いなどを練る。「校長になる人生だとわかったからでしょうね。何になってもいいと言われたら、絶対にこんなものは作っていない」と語りつつ、この作業に深夜11時まで没頭。奥様と暮らすマンションに帰宅したのは真夜中だった。自宅で過ごす時間はわずかだが、唯一気を抜けるひと時だ。

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校長に就任したのは、新型コロナウイルスの感染拡大真っ只中という最悪のタイミングだった。2020年3月、政府からの臨時休校の要請を受け、青稜も約4カ月間の休校を余儀なくされた。「自分が校長になったらこうしたいと思い描いていたことがすべてできなくなり、いきなりスタートダッシュに失敗した」と感じた。

しかし「コロナ禍でできることをしなければいけない」と思い立ち、他校に先駆けていち早くオンライン授業を導入。当初はトラブルも多く、生徒たちから「青稜使えねぇ」とTwitterで呟かれたことも。それでも動きを止めることなく、同年4月にはオンラインによる入学説明会を開始。オンラインでできることはすべてやろうと、授業の他にも朝礼やホームルーム、自習室の管理、宿題の提出、面談、テストまで、さまざまなことに挑戦した。外部に頼むことはせず、すべて青田校長と教職員が手分けして担当している。

この日、オンライン入学説明会開催に向け、照明を調整していたのは勤続25年の生物の先生で、「まったく経験したことのないような大惨事の中、校長が方向を示してくれた。我々に何ができるのか、どうやっていくのかを一緒に模索し、ワンチームで動けた」という。青田校長のリーダーシップが、青稜のオンライン・コミュニケーションを一気に加速させた。

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校長就任から1年半。オンラインのハード面は整ってきたが、通常の学校生活が戻ったわけではなく、「本当はできるはずのことができないのは恵まれていない」と感じる生徒も多い。そこで青田校長は、中学生が楽しみにしている「合唱コンクール」を開催することを決断。さらに文化祭も中止せず、緊急事態宣言解除後の10月下旬に開催することに。

青稜の合唱コンクールは、中1・中2の2年間だけ行われる貴重な行事。密を避けるため、会場は1000人以上収容できる大ホールを借りた。入学してから一度も学校行事ができず、悔しがっていた中学2年生の合唱。クラスが初めて1つになった瞬間に立ち会い、青田校長は客席で涙を流した。そして最後に「世界中見渡してもどこにもない学校にいつかなりたい」と今後の夢を語った。

番組では他にも、福祉施設とのコラボやオンライン入学説明会の模様、生徒たちが語る青田校長や交流の様子などを紹介する。

10月18日(月)夜10時放送! 「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「都立新宿高校...野球部員と熱血監督との絆」と題して送る。

今回の主人公は創立100年を迎えた都立新宿高等学校で野球部員を率いる熱血教師とキャプテンそして女子マネージャー。一度野球部を辞めたものの、再びグランドに戻ってきたキャプテン。彼の心を突き動かしたものとは? OBでもある監督との絆に密着した。

どうぞお楽しみに!

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