AIがSNSの情報をもとに”事故や災害”を可視化。車の走行速度のデータで冠水状況がわかる?

公開: 更新: テレ東プラス

テクノロジーで地球を変える会社を紹介するとともに世界のスタートアップ企業から成功例を学ぶ新番組Earthshot世界を変える起業家たち(BSテレ東 毎週月曜夜10時30分)がスタート!

毎回、テーマごとの起業家や専門家がゲスト出演し、元財務省官僚の山口真由がレギュラー番組ナビゲーターに初挑戦する。

earthshot_20211010_01.jpg▲左から山口氏、武邑氏、村上氏

第1回は、洪水・台風などの自然災害から火災・交通事故まで、あらゆる情報をいち早くキャッチして危機から人々を救う起業家・村上建治郎(株式会社Spectee代表取締役CEO)が登場。コメンテーターに武邑光裕(デジタルライフ研究センター・フェロー)を迎え、「イノベーションで気候変動から人類の危機を守れるか」をテーマにお届け。

「テレ東プラス」では、10月4日(月)に放送されたFILE.01「AIを利用して世界を災害から救う起業家」の内容をプレイバックする!

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シリコンバレーの起業家たちに大きな影響を与えた「ホール・アース・カタログ」。世界を変える様々なアイデアが集まっており、これに触発された一人が、あのスティーブ・ジョブズだ。この本を世に送り出したのは、1938年に米イリノイ州ロックフォードで生まれたスチュアート・ブランド。情報化時代の礎となる発明の多くを間近で見てきたスチュアート・ブランドは、シリコンバレーのイノベーションに大きな影響を与えた。

気候変動の問題について、スチュアート・ブランドは「新型コロナも気候変動も地球規模の問題であり、地球規模でしか解決できない。しかも気候変動にはワクチンがないので、すぐに解決できません。人類が地球上での残りの人生をかけて取り組むべきことだと思います」と語る。

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最近までドイツを拠点にしていた武邑は、2021年にドイツ史上最悪規模の水害が起き、過去59年で最も死者数が多く出たことについて触れ、「地球環境をどう守るかというイノベーションが必要になっている。ヨーロッパ全体で集中豪雨や洪水の被害が広がっているが、日本には災害の知恵のノウハウがある」とコメントした。

自然災害が多い日本では、街の災害などの情報をいち早く見つけるサービスが登場している。火災・大雨洪水など、あらゆる自然災害から社会を守る「危機管理情報ソリューション」を提供しているのが、「株式会社Spectee(以下、スペクティ)」。2011年に設立され、従業員約70名が勤務。幅広い世代の優秀なエンジニアが集まり、フィリピン・香港・シンガポールなど、5カ国の人材が働くインターナショナルな職場だ。

国内で500社以上、世界40カ国以上で展開している「スペクティ」が提供するのは、自然災害などが起きた際、様々なSNS情報をもとに災害状況をリアルタイムに解析し、企業や自治体に配信するサービス。2020年に発生した熊本県集中豪雨でも、災害時に集まる様々な投稿を分析し、自治体に有益な情報を提供した。

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「スペクティ」のシステムに利用されているのが、AIの自然言語処理の技術。SNSに溢れる様々な情報の中から、AIが災害に関するワードをセレクト。さらにAIの画像解析技術を駆使し、SNSにアップされる写真から災害の場所や種類、状況などを分析して情報を精査。最終的に人の目で情報確認・検証をしてから配信する。リアルタイムの情報を活かし、災害・危機管理情報などをより速く正確に知ることができるサービスだ。音声で情報を教えてくれるので、画面をずっと見ていなくても事故や災害を把握することができる。

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「情報をいち早くつかんで、初動に活かすのが大切」と語る村上社長だが、開発に至るまでには苦労も。その一つが、SNSのノイズ(誤情報)の多さ。SNSには日々膨大な情報が上がるが、災害対応として必要な情報はごく一部。ノイズをいかに除去して本当に必要な情報だけを伝えるかが一番の難関だという。

ほかにも、過去に流れたデマ情報を学習データとして保持し、テキスト・画像の解析を使ってデマの可能性を判断。AIだけでなく24時間体制で専門チームがダブルチェックすることにより、正確な情報を配信することができる。

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自然災害や交通事故まで様々な情報を提供する「スペクティ」のサービスは、すでに都道府県庁の防災部門の75%以上が採用。現在は法人や自治体向けのサービスとなっており、官公庁での利用も増加。提供開始以来、様々な賞を受賞し、AP通信やロイター通信とも提携。海外向けにも配信されている。

元々サラリーマンだった村上社長がこのサービスを始めたきっかけは、東日本大震災だった。ボランティアとして東北を訪れていた村上社長は、現地の状況とSNSで流れる情報にギャップを感じ、「SNSの情報を整理することで、マスメディアでは伝えられない細かく正確な情報を届けたい」との思いでサービスを立ち上げた。

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「スペクティ」では、現在、リアルタイムで浸水想定図を出す取り組みを行っている。こちらが新たに開発された洪水の3D浸水推定図。SNSなどにアップされた1枚の画像から、AI解析でデータを抽出。そこに降雨量や地形データを掛け合わせ、エリアや深さなどを予測し、浸水推定図を自動的に作成。リアルタイムで災害情報を深く把握し、より速く的確に避難誘導の指示を出すことを目指している。

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次に村上社長が考えているのは、河川や道路のカメラ、人工衛星を活用すること。これにより、SNSではカバーできない山間部などのエリアについても、より精度が高い災害状況を把握できるようになるという。さらに、災害の可視化だけではなく、予測して避難を促すという計画も。例えば、車の走行速度のデータを読み取ることで道路の冠水状況を把握し、ワイパーの速度で降雨量を測定。自動車の様々なデータを使って未来を予測するシステムの開発も進められている。

10月11日(月)夜10時30分放送! 「Earthshot世界を変える起業家たち」(BSテレ東)のテーマは「遺産相続」。面倒な手続きが簡単に! 利用者急増! 不動産相続の「負」を解消する低価格の名義変更手続きサービスとは? NY州弁護士・山口真由が弁護士の意義を激白する。

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