町工場が大ピンチ!?ベンチャー企業が開発した”新システム”で、変わる日本のものづくり:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

10月8日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)では、町工場の再生に尽力するベンチャー企業や金融機関に密着。廃業が加速する町工場の今と、日本のものづくりの原点を救おうとする人たちを追った。

町工場が激減、部品が足りなくなる...

6月中旬。関東を中心に138店舗を展開するスーパー「ベイシア」磐田豊岡店(静岡・磐田市)は、1週間後にリニューアルオープンを控えていた。注力するのは精肉部門。コロナ禍で家食需要が好調で、少し高くてもおいしい肉を買おうとする人が増えているという。

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「ベイシア」が新たに購入したのは、1台数百万円する「食肉スライサー」。店長は「これがないと1日の出来高が全然変わるので、壊れると生命線がなくなったに等しいぐらい大事なパーツ」と話す。

この食肉スライサーを製造販売しているのが「なんつね」(大阪・藤井寺市)。創業1925年の「なんつね」は、日本初の食肉スライサーを開発したパイオニアで、国内シェア1位を誇る。大手牛丼チェーンもお得意様。スーパー向けの食肉スライサーが前年比150%増となり、創業以来、最高の売り上げを記録したのだ。

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しかし、「なんつね」資材調達チーム・長井透さんは「東大阪を中心とした町工場は、半分とは言わないが、それに近い数が減っている」と話す。東大阪市の町工場は、30年で約4割減。長井さんは「今まで当たり前に手に入れられていたものが、もはや当たり前ではない。中長期的にみると、いつそれが手に入らなくなってもおかしくない状況」と危機感を抱く。

「なんつね」の長年の取引先である鋳物工場では、食肉スライサーに欠かせない"肉の塊を支える部品"を昔ながらの製法で作っている。

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砂を固めた型に溶かしたアルミニウムを流し込む作業で、1つ作るのに7時間。大量生産はできない。しかし後継者はおらず、工場の経営者は自分の代で廃業を決めていた。長井さんは「当社が求めるアルミ鋳造品を作れる人がいなくなっているのが現実。そういった時代背景に伴い、当社のスライサーも材料の選定を変えていかないとならない」と話す。

町工場とメーカーをつなぐ新システム

町工場が消えていくという現実...。そこに手を差し伸べたのが「キャディ」加藤勇志郎社長(30)だ。「キャディ」は産業機械などを作るメーカーと、部品を供給する町工場を結びつけるのが仕事。メーカーから「ある部品が欲しい」という発注があると、全国約600あるパートナーの町工場の中から最適なところを見つけて依頼する。

東京・台東区の蔵前に本社を構える「キャディ」は、2017年創業で社員は230人。平均年齢32歳で、「トヨタ」や「ホンダ」、「日産」などからの転職組も。

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加藤さんは2014年に東京大学を卒業し、アメリカに本社を置くコンサルティング会社「マッキンゼー」に入社。史上最年少でマネージャーに昇格した後、26歳で「キャディ」を創業した。「ポテンシャルや実力があるのにそれを発揮できない人、企業、産業はたくさんある。その中で一番大きいのは製造業。それを解決することは自分の人生をかけるだけの意義がある」と話す。

番組は加藤さんに密着し、「キャディ」のパートナーである町工場を巡った。
まず訪れたのは、京都にある工場。強みは極小のネジ穴を作る技術で、高性能の工作機器と職人の熟練の技により、1マイクロメートル(1000分の1ミリ)レベルで手早く金属加工できる。この工場は「キャディ」のパートナーになったことで、半導体や医療関係の部品の製作など、それまで受けたことがなかった仕事の依頼が来るようになった。

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溶接技術が強みという別の工場は、多くの町工場がコロナ不況にあえぐ中、2020年の売り上げが前年を大きく上回った。工場の社長は「売り上げが1億5000万円ぐらいだったが、『キャディ』に仕事をもらい、今はその売り上げの5倍ぐらい」と笑顔を見せる。現在は半導体や医療など、異業種の機械部品も請け負っている。

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「キャディ」は約600社あるパートナーの中から、どうやって最適な町工場を探し出すのか。まずは、メーカーから依頼された部品の図面を、独自のシステムに読み込む。そして、町工場の詳細なデータで、加工などにかかるプロセスを瞬時に解析。すると、その部品をつくることができる最適な工場が浮上するのだ。部品に使う材料費をはじめ、カットや曲げ、溶接などにかかる時間を割り出し、適正な価格まではじき出せるという。

そんな「キャディ」に依頼したのが、「なんつね」だった。食肉スライサーの部品は約1000点。うち120点を「キャディ」が担当することに。果たして、「キャディ」が選んだ凄腕の町工場とは──。工場の選定からパーツ製作、納品までの様子を追う。

技術のスペシャリストが無料でアドバイス

東京・大田区。ここにも地域の町工場のために奮闘する人がいた。東京と神奈川に85店舗を構える「城南信用金庫」は、1945年、東京・城南の地に発足。ものづくりの街を本拠に、長年中小企業を支えてきた。

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「城南」が、今、力を入れている取り組みが「ものづくりコンシェルジュ」だ。自動車・映像機器・電子回路など幅広いジャンルの専門家を揃え、町工場の設備や無駄をなくす方法、どう再編するかなどを無料でアドバイスする。

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「城南」の羽田支店で外回りを担当している山口麗奈さんは、コンシェルジュの一人、企業経営サポート部・佐藤寛一さんを助っ人に呼ぶ。佐藤さんは、元建設機械メーカー「コマツ」のエンジニアで、部品を成形する技術開発などに長年携わってきたスペシャリスト。2人はある金属加工会社に向かう。

小さな町工場の社長は、寺田京子さん(76)。14年前に病気で亡くなった夫・孝さんの跡を継ぎ、会社をやりくりしてきた。創業は1962年で、孝さんが元気な頃は10人以上の職人を抱え、工場はいつも活気にあふれていたという。しかし、町から徐々に工場が消え、跡地にはマンションが建てられた。

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大田区の町工場は東大阪よりも減少が激しく、ピーク時の半分以下にまで落ち込んでいる。寺田さんも「目先でいうと、なんとか今は(仕事を)確保しているが、コロナの影響があって注文が減った。お金が足りません」とため息をつく。
山口さんと佐藤さんは、経営を立て直すヒントを探るため、工場へ。30年前から稼働している工場は、寺田さんの長男・誠さんが責任者を務め、金属を削って穴を空けるフライス加工を得意としている。

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60センチもある細長いドリルを専用の機械にセットし、金属のブロックに横から穴を開けていく......。一見、単純な加工のように見えるが、コンシェルジュの佐藤さんは「これだけ長いドリルを付けて深い穴を開けるのは難しい。普通の機械でやると両サイドから"トンボ加工"をしなければならない」と話す。佐藤さんは誠さんに、この技術を武器に営業することを勧めた。

しかし、工場には誠さんの他、年配の職人1人しかいない。営業に出かける余裕がないのだ。誠さんは「できれば人材募集や銀行との折衝など、経営に関わる仕事をやっていきたいが、現場の方に追われてなかなか大事な仕事ができない」と話す。山口さんと佐藤さんは、深刻な親子の悩みをどう解決するのか。

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