松本まりか「悩むことや迷うこと、遠回りするのも悪くない...そう思っていただけるような作品です」

公開: 更新: テレ東プラス

大都会・東京で生きる女性たちの"いま"を描くParaviオリジナルドラマ「東京、愛だの、恋だの」。「結婚する、しない?」「子どもを産む、産まない?」...登場人物が様々な局面で、仕事、恋愛、結婚、友人関係、夫婦関係で迷い、悩み、選択に迫られる。自分の居場所は一体どこにあるのか――。

大都会・東京で懸命に生きようとする女性たちのリアルな実情に迫り、それぞれの日常を優しく描くことで、見る者の共感を誘う恋愛群像劇で、主人公・和田かえを演じるのは、昨年デビュー20周年を迎え、女優として進化し続ける松本まりか。どこか不器用で魅力あふれるキャラクターをリアルな視点と繊細なタッチで活写し、国内外で多くの賞を受賞してきたタナダユキ監督と念願のタッグを組む。

tokyo_20210924_01.jpg
「テレ東プラス」は、新境地に挑んだ彼女に、本作への思い、タイトルにある「東京」「愛」「恋」について聞いた!

tokyo_20210924_02.jpg

自分の中の虚飾を取り去って以降、できることが増えたような気がします

――松本さんは制作発表時のリリースで、「映画の世界から程遠い存在である自分に悶々としていた15年ほど前。タナダ作品の主人公になってみたい、映像の中であんな風に素朴に生きてみたい、という秘めた淡い想いがありました」と熱いメッセージを寄せていました。タナダ監督作品で念願の主演。改めてオファーが届いた際の心境をお聞かせください。

「タナダ監督とご一緒できると聞き、二つ返事で『やります』とお返事しました。"タナダさん"と聞いただけでもうれしかったのに、主演ということで、こんなに幸せなことはないなと思いました。一度はタナダさんの作品の中で生きてみたいと長らく思い続けてきたので、"やる!"という選択肢しかなかったですね」

――タナダ監督からは、どんなオーダーがあったのでしょう。

「監督からは『出てくる登場人物の中で一番普通の感覚を持った人でいてほしい』『今まで見たことがない松本まりかを撮りたい』というオーダーがありました。とはいえ、監督が求める"普通"というのは、いわゆる普通とはまた違うものだと思ったので、私は極力何もしないことを心掛けて...。念願のオファーだとどうしても意気込みがちじゃないですか」

――「普通の感覚を持った人」を演じるのは、簡単そうで一番難しいと聞きます。

「監督やゲストの方々にすべて委ねて、私はそこで起こった出来事や誰かに言われた一言に対して何か感じるだけでいい。あとはタナダ組が上手に撮ってくれる、と信じて演じることにしました。"はじめまして"同士ではあったんですけど、そうとは思えないくらい始めから距離が近かったですし、お互いに信頼し合えたからこそ、できたお芝居だったと思います。『東京、愛だの、恋だの』の撮影以降、これまでの価値観が変わったと言ってもいいくらい、素敵な変化をもたらしてくれました」

――変化とは、どんな?

「タナダ組に委ねてみたら、特に女性スタッフがパワフルで、愛や情熱に溢れていて毎日が楽しかった。タナダさんの発言のすべてに愛やユーモアがあるから、本当に笑い転げてばかりいたんですよ。あと、お芝居を否定しない。すべてを受け入れてくれる。その結果、ゲストの方々もオープンに接してくださったので、"上手くやらなきゃ、ちゃんとやらなくちゃ"という不安のようなものがなくなったように思います。お芝居も日常も楽しく過ごせるようになりました。"全部や~めた!"って、開き直って臨んだことで目の前が晴れました。友達もたくさんできましたし、人生って楽しいな、女子って楽しいなって思える現場でした(笑)」

――リリースでは「これまでお芝居に必要だと思っていたことを一旦やめてみることにしました」とも。

「お芝居で言うと、考えすぎることをやめました。そうする事で、現場で感じることや、発見する事に全力で意識を注ぐことができました。当たり前の事だけど、相手からもらえたリアクションのみで演じる。例えば、驚くではなく驚かされる、とか。タナダ組に委ねたことで自然と相手の話をよく聞くようになって、違和感なく驚けるようになったんです。不安や余計な雑念がなくなった分、常に新鮮なお芝居ができるようになりました。いまの自分にあるもので勝負というのかな? ちょっとした気持ちの変化で驚いたり泣いたり。それでいいんだと思えるようになりました」

――主演女優がその決断をするのは勇気のいる作業だったのでは?

「正直、勇気のいる決断でしたが、信頼できる監督、タナダ組でやれてよかったと思います。ちょっとした出来事や言葉で、驚いたり泣いたり。そんなお芝居の根本を思い出すことができましたし、演じる喜びに改めて気づかされました。やっぱり楽しいな、って。今回の撮影が終わって気づいたんですけど、自分の中の虚飾を取り去って以降、できることが増えたような気がします。いま、お芝居が楽しくて楽しくて仕方がないです」

tokyo_20210924_03.jpg

いいことをしたら貯金になると信じて...少しずつ自信を得ることで自分を開放できるようになるんじゃないかな

――そんな大きな変化をもたらした『東京、愛だの、恋だの』。今回はタイトルにかこつけて「東京」「愛」ついてもお話を伺いたのですが、東京出身の松本さんにとって、大都会・東京はどんなイメージですか?

「かえの男友達・芦屋くん(毎熊克哉)もそうですが、東京に対して憧れがないんですよね。東京ってホーム感がないんですよ。学区とか路線とか小さなところでのホーム感というのはありますけど。どうやって電車を乗り換えれば最短で目的地に行ける...とかはわかっても、本質的な東京の魅力をなかなか伝えられないんです。大都会で何でもあるけど、何もないような気もしますし...」

tokyo_20210924_04.jpg
――タナダさんは福岡県、脚本の向井康介さんは徳島県、ペヤンヌマキさんは長崎県出身ということで、地方出身者から見た東京も描かれています。

「みなさんの思いや経験が反映されていることで、台本を読みながら"へ~"と思うことがたくさんありましたし、東京もやるじゃん!と思いました(笑) もっとちゃんと東京もみてみたいなって」

――大都会で生きてきたかえにも、日常の出会いの中で素敵な変化が起きますね。

「私が今回"何もしない"という勇気を出せたことで、本来の自分を取り戻せたように、観てくださるみなさんの日常にも、そんな素敵な変化の可能性って常に備わっている。いつでも変われるんだ、ということを感じてもらえるドラマになったらいいなと思います」

――さらに「愛」について。本作には「自分のためにすることが相手のことになるって信じていた(夫の目線)」、「相手のために思ってすることが、自分のためになるのが共同生活(妻の目線)」など、夫婦や恋人同士ならば思わずうなずく金言・格言がたくさん登場します。悩める女性たちと接することで、何か感じたことはありましたか?

「これはめちゃくちゃありました! 私はこれがしたい、したくない。欲しい、欲しくない。好き、嫌い。30歳を過ぎるまでは、その軸が全然定まらなくて...。東京で懸命に生きる女性たちの姿を見て、私自身、20代の頃は仕事をしていても恋愛をしていてもどこかふわふわしていたなと思いました。ずっとグレーの雲の中をさまよっているようで...。その瞬間、瞬間は"これ楽しい""この人といると楽しい"と思うことはあっても、いま思うと、ただピースを見つけていただけだったなって」

――年齢やキャリアを重ねることで何か変化は?

「ここ最近...35歳を前にした頃から、溜まったピースがガチガチガチッとハマってきたんですね。私は30歳を過ぎて急に注目されたものですから、足りない自分を補うかのように必死でピースを集めて、パズルを組み立てようとしていたんですけど、その時は全然ハマらなくて...。ふと力を抜いて本来の自分を出してみたら不思議とハマって。人生そんなものなんだなと思いました。まだまだ未熟ですし、キラキラした人にはなれないけれど、自分を信じて人を信じて、すべてを開くことが大事なんだなって」

――自分を開放する上で心掛けていることはありますか?

「当たり前のことですけど、笑顔でいたり、勉強したり、人に対して優しく接したり、お掃除をしたり...(笑)。徳を積む、じゃないですけど、普段から良き考え、良き行動をすることを心掛けることが大事です。いいことをしたら貯金になると信じて...。少しずつ自信を得ることで自分を開放できるようになるんじゃないかなと思います。ゆくゆくは、自分のすべてを見せられる、くらい自信を持った生き方ができる大人の女性になりたいなって。」

――本作に登場する女性たちは、嫉妬や孤独、承認欲求などに苛まれますが、松本さんの中でそういう感情が起きたことは?

「すべて経験済みですが、嫉妬はまず意味がないことだと思ったので、いつしかすることをやめました。孤独は、一人で寂しいというより、足りない自分がイヤで埋めたかったという意味での孤独...それでピースばかり集めていたように思います。承認欲求は...どんな人にもあるものだから、まずは自分で自分に承認される人に。他人から承認されるのはその後だと思ってここまでやってきました。面白いと思われる女優、使いたいと思われる女優にならないと人は認めてくれない。そのためにはどうすればいいか? デビューから十数年そればかり考えてきましたが、最近ようやく、これまでバラバラだったピースがハマってきたところです」

――作品についてタナダさんは、「子どもの頃に思い描いていたすてきな大人になれなかったすべての人に捧ぐ、魂の鎮魂歌...に、少しでもなりますよう」とおっしゃっていました。松本さんからも視聴者にメッセージをお願いします。

「『東京、愛だの、恋だの』は、仕事や恋愛、結婚、友人関係、夫婦関係など、いろんな悩みが描かれていますが、悩むことや迷うこと、遠回りするのも悪くないなって思っていただければうれしいです」

――インパクトのある役が続き、今年は「最高のオバハン 中島ハルコ」や「向こうの果て」などで新たな一面を見せています。今後の展望はどう考えていますでしょうか。

「何か爪痕を残そうと意気込んでやってきたわけじゃないんですけど、そういう役が自然と増えてきて...ここ何年かは、期待に応えるためにとにかくがんばっている状況でした。テレビから程遠い自分が、『ホリデイラブ』から注目していただけて、お話(オファー)もたくさんいただけるようになって。これまでとはちょっと違う役をいただいての挑戦です。今後も変化を楽しみながら成長していきたいと思っています」

tokyo_20210924_05.jpg
JULIETシャツ ¥46,750/BIRD & KNOLL、ベルト付パンツ¥76,000/PALMA MARTÎN、ピアス¥14,850/GEMMA ALUS、スウェードパンプス¥29,700/O'RIC

(取材・文/橋本達典)

【松本まりか プロフィール】
1984年9月12日生まれ。東京都出身。B型。2000年デビュー。主な出演作にドラマ『ホリデイラブ』『竜の道 二つの顔を持つ復讐者』『妖怪シェアハウス』『先生を消す方程式。』『教場Ⅱ』など多数。主演ドラマ『それでも愛を誓いますか?』が、10月2日よりスタート。

Paraviオリジナルドラマ「東京、愛だの、恋だの」【あらすじ】

和田かえ(松本まりか)、35歳。10年間付き合っている恋人との結婚を考えつつも、大学からの男友だちとの関係に安心感を覚えていて...。そんな彼女の下へ現れるのは何らかの事情で住まいを探そうとする女性たちや、悩みを抱える知人たち。
結婚に自信をなくすプレ花嫁、孤独を抱えるバリキャリ、人生設計を見つめ直す弁護士、家庭と仕事、それぞれの幸せを手にしているはずの友人同士、将来の不安を実感するフリーランス等々。それぞれ懸命に生きようとする彼女たちにとっての"東京"とは? 幸せの形とは? そして、かえの恋愛の結末は...?

【配信情報】
[タイトル]Paravi オリジナルドラマ「東京、愛だの、恋だの」
[配信日時]
第1話、第2話配信中!
9月18日(土)昼12時第3話配信
9月25日(土)昼12時第4話配信
10月2日(土)昼12時第5話配信
10月9日(土)昼12時第6話配信
10月16日(土)昼12時最終話配信

[出演者]
和田かえ 松本まりか

芦谷勇作 毎熊克哉
橋本達也 梶裕貴
松島はじめ 一ノ瀬颯
古沢恭子 清水葉月

■第1話ゲスト
大原櫻子・古川雄輝・江口のり子/大倉孝二・板谷由夏

■第2話ゲスト
剛力彩芽・三浦貴大・田中俊介

■第3話ゲスト
MEGUMI・小関裕太/田中要次

■第4話ゲスト
趣里・安藤聖・忍成修吾/安藤玉恵

■第5話ゲスト
臼田あさ美・市川由衣・尾上寛之

■第6話ゲスト
ファーストサマーウイカ/⻑谷川朝晴

[スタッフ]
監督 タナダユキ
脚本 向井康介
ペヤンヌマキ
タナダユキ
製作 白石徹太郎
柳内啓司

PICK UP