「とりあえず、自分の見た目と声だけ信じとけ」片桐はいりの”心に残る金言”

公開: 更新: テレ東プラス

毎週水曜深夜1時10分から、水ドラ25「東京放置食堂」を放送中! テレビ東京の十八番でもあるグルメドラマに、新風を巻き起こす期待作だ。
舞台は、東京から120キロ離れた太平洋に浮かぶ「大島」。主演は、女優として数多くの作品に出演し、独特の存在感を放つ片桐はいり。曲がったことが大嫌いな元裁判官・真野日出子を演じている。

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人を裁くことに疲れ、裁判官を辞めて伊豆大島に流れ着いた日出子は、島で生まれ育った小宮山渚(工藤綾乃)と出会い、渚が祖父から受け継いだ居酒屋『風待屋』を手伝うことに。人生に悩みを抱える客との交流を通して、日出子の第二の物語が始まる。
すでに放送された第1話では、IT企業CEOの言動に腹を立てた日出子が、厳しくも温かく説教するシーンが話題に。SNS上では「片桐さん、超ハマリ役」「言葉がズバッとささる!」といったコメントが寄せられている。
今後、この食堂にどんな悩みを抱えた人がやってくるのか。大自然に溢れた大島だからこそ育まれる魅力的な人間模様と、島グルメをどうぞお楽しみに!

「テレ東プラス」は、本作が連続ドラマ初主演となる片桐はいりを直撃! 大島の魅力や自身のリフレッシュ法などを語ってもらった。

定年前に「もう限界だ!」と辞めてしまう日出子に、共感を覚えました

――まずは台本を読んで、主人公・日出子にどんな印象を持ちましたか?

「日出子同様、50代で仕事に一途に生きてきた女として、定年前に"もう限界だよ!"となってしまう気持ちがなんとなく分かるような気がして、共感を覚えました。1960年代に生まれた人間って、世の中が右肩上がりにいくものだと信じて生きてきたところがあるんですよ。上がっていくのが当たり前だと思って生きてきた日出子にも、"あれ?"と立ち止まる瞬間が訪れたのではないかと思いました。

今まで、"この人はこういう人だろう"と考えて役作りをしたことはあまりなかったのですが、最近になって、"演じる役の弱点や欠点を見つけた時、自分の中で俄然やる気が出る"ということに気づきました(笑)。裁判官は、おそらく想像を絶するぐらいの仕事量だと思いますし、エリートなわけじゃないですか。その道を進んできた人を演じるというのが私にとっては雲をつかむような話だったので、"あの人は魚を触れないんじゃないか""虫が苦手なんじゃないか"とか、そういう弱点を見つけていくことで、少しずつ役に共感できるようになりました」

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――大島のロケで印象に残っていることを教えてください。

「島で最初に撮影したのが、"裏砂漠と"いう黒い砂が広がる場所だったんです。その時は霧と強風で立っているのも難しいくらい大変でしたが、こんなにも原始的な島があるんだなと。"ハリウッド映画のロケに使ったらいいんじゃないか"と思うような自然がある場所なので、もう芝居をどうこうしようという小手先の気持ちは最初の段階で失いました(笑)」

――1話で、日出子が「ヤッホーッ!」と言いながら坂道を自転車で下っていくシーンがとても気持ち良さそうでした!

「あのシーンは最高に楽しかったです。"自転車で走りたい!"と思うような道が、たくさんあるんですよ。車があまり走っていないので対向車にもほとんど出合いませんし、いいですよね。このご時世だからかもしれませんが、大島は人の少なさが魅力でもあり、すごく素敵なところでした」

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――食堂が舞台になりますが、片桐さんは、どこか行きつけのお店はありますか?

「コロナ禍以前は、家で夜ご飯を食べることがほとんどないような暮らしでした。近所に和洋中を取り揃えた行きつけの食堂もありますが、私にとっての"行きつけ"は、やっぱり映画館になりますね。"行きつけ"って、そのお店の方やそこにいる誰かと共通の会話をする場所、というイメージ。私は映画館に作品を観に行きますが、そこのスタッフや支配人、色々な人たちと共通の話をしに行くという場所でもあるので」

――日出子のお説教も本作の見どころの一つだ思いますが、片桐さんがこれまで誰かに言われて心に残っている"金言"はありますか?

「たくさんありますが、この作品をやるにあたってふと思い出したのは、俳優でもあり劇作家でもある岩松了さんの舞台に出演させていただいた時のことです。"とりあえず自分の見た目と声だけ信じとけ"みたいなことを言われまして...。たしかに、見た目と声はもう変えられない。なかなか信じ難い時もありますけど、"自分を信じてやります"と思って作品に取り組むようにしています」

――裁判官の職に疲れて大島にやってくる日出子ですが、片桐さんが疲れた時にすることや、リフレッシュ法などあれば教えてください。

「昨年の自粛期間中に自転車を買ったんです。パーッと風を切って自転車で走っていると、何かを飛ばしていける感じがして、ものすごく気持ちがいいです。なので最近は、自転車がストレス解消の第一手段です。偶然ですが、このドラマでも、自転車で走るシーンが使われています。"電動自転車じゃないとちょっと辛いかな"というシーンもありましたが、森を抜けて、いきなり海がバーっと見えるようなところばかりなので、皆さんにもその開放感を味わっていただけたらいいなと思っています」

――片桐さんはどんなセカンドライフを送りたいですか?

「急に俳優を辞めてどうの、というのはあまり考えたことはありませんが、かつて"このまま俳優を続けるのかな"と思っていた時、旅行をして文章を書く"トラベルライター"に魅力を感じたことがあります。風待屋のロケで使わせていただいているカフェのオーナーさんが、偶然世界100カ国以上旅しているトラベルライターさんで、"大島がいい!"と移住してセカンドライフを送っているんですよ。楽しく暮らしていらっしゃるのを見ると、ちょっとうらやましいですね。田舎暮らしに憧れますが、セミが本当にダメなので(笑)」

――最後に、読者へのメッセージをお願いします!

「大島は東京都内ですが、都会から約2時間で見たこともないような日本の景色が広がります。週の半ば、"今週もあとちょっと"という時に、大島の風景や空気を、皆様にぜひご覧いただきたいです。私もまた東京に戻って仕事を始めますが、"ちょっと休みがあればあそこに行けるんだ..."そう思える場所があるということが大切な気がするんですよね。なのでこのドラマも、皆さんの心の中にそっと置いていただけるような存在になるといいなと思っています」

(取材・文/根津香菜子)

【片桐はいり プロフィール】
1963年年1月18日生まれ。東京都出身。大学在学中に劇団で舞台デビュー。その後、CM、映画、テレビドラマなどで幅広く活躍。主な出演作品は、舞台『キレイ~神様と待ち合わせした女』『小野寺の弟、小野寺の姉』、映画『かもめ食堂』、ドラマ『あまちゃん』『すいか』など。

9月29日(水)深夜1時10分放送! 水ドラ25「東京放置食堂」第3話の内容は...。

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六法全書を読む日出子(片桐はいり)に男の子が近づいてくる。日出子は、男の子に「裁判官だったから、悪いヤツに恨まれてない?」と尋ねられる。その言葉を聞いたせいか、夕方、渚(工藤綾乃)と歩いているときに、背後にだれかつけてきていないか気になってしまう。
そんな予想が的中したのか、大島に山中正平(竹中直人)がやってくる。「女にケジメをつけに来た」という正平。その女とは、まさかの日出子...!? はたして、二人の間に一体何があったのか...。

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