韓国の民主主義が揺らぐ⁉︎ メディア”懲罰” 法案に波紋<WBS>

公開: 更新: テレ東プラス

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頭を刈り上げて抗議の意思を示したKBSテレビの労働組合

韓国の文在寅大統領は、民主化運動にも携わった人権派弁護士として知られますが、この文大統領を支える与党が、民主主義の根幹である「言論の自由」を揺るがしかねない法案を提出し、波紋を広げています。

韓国の国会前で8月30日、声を張り上げていたのが最大野党「国民の力」の金起炫院内代表。「韓国の自由民主主義を守り、世界から尊重される言論の自由が保障される国となるよう最善を尽くす」と訴えました。

批判の先は、与党「共に民主党」が提出した「言論仲裁法」の改正案です。この法律は故意、または重大な過失による虚偽の報道や歪曲された報道で、個人や団体が損害を受けた場合、裁判所が最大で損害額の5倍の賠償を報道機関に命じることができるというものです。今回の法改正は国民の被害救済が目的とされていますが、虚偽や歪曲かどうかの基準も曖昧だなどとして反発する声も上がっています。

与党が「フェイクニュース対策」と強調する一方、野党は懲罰的な内容で「言論の自由を萎縮させる」として猛反発し、国会で激しい攻防を繰り広げてきました。韓国国民に取材すると「言論統制ではなく、報道によって被害を受ける人がいてはならない。(メディアへの)規制はすべき」「国民は(新聞などの)自由な報道を見て、社会や政治を判断するのにそれが難しくなる」と賛成、反対それぞれの声が上がりました。

韓国では、軍事独裁政権時代に新聞などの報道を統制。その後、民主化を果たした歴史があり、韓国メディアも強い懸念を示しています。国会前では、韓国の公共放送KBSテレビの労働組合が、その場で頭を刈り上げて抗議の意思を示し、「(法改正が)現実化されれば国民の知る権利は予告なく奪われる」と訴えました。
そうした中でも与党が法案の成立を急ぐ背景とも指摘されるのが、来年3月の大統領選挙です。文政権では曺国元法相の家族をめぐるスキャンダルなどに対する報道が過熱。与党や支持者の間には、特に政権に批判的な保守系の大手メディアに対する不満が根強く残っているのです。

与党側は31日までに法案を成立させたい考えでしたが、野党などの強い反発を受け、9月以降に先送りされることになりました。

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