混迷の時代をサバイブするビジネスパーソンに経済動画コンテンツができるすべてを

公開: 更新: テレ東プラス

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テレビ東京の人気経済番組が月額550円(税込)で見放題!という触れ込みで2021年4月よりサービスを開始した『テレ東BIZ』。有料会員数約10万人の「テレビ東京ビジネスオンデマンド」と、YouTubeチャンネル登録者数100万人の「テレ東NEWS」が統合された日本最大級の経済動画プラットフォームです。しかしこのサービス、単にふたつのコンテンツをひとつにまとめただけのものではありません。"ニッポン経済の「現場」を元気にする"をミッションに、独自性の高い限定動画も拡充予定。そのあたりの狙いについて社員YouTuberであり「Newsモーニングサテライト」キャスターでもある豊島キャスターにお話を伺いました。

ビジネスパーソンの朝のルーティンを変える

――これまでのサービスとテレ東BIZの違いは?
人気番組の見逃し配信サービスと最新情報を届けるニュースサイトがひとつになったわけですが、それだけではありません。放送で見ることが出来ない未公開動画、キャスターや記者による解説動画など『テレ東BIZ』限定の動画配信にも力を入れています。

――独自のオリジナルコンテンツも充実させているんですね
すでに5万本以上の経済動画をストックしているので、このジャンルの規模では日本最大級ですね。やはり強みは経済報道の分野。ここである程度の認知を獲得しているので、さらに掘り下げていき他サービスにはない立ち位置を確立しようと考えています。

――サービスリニューアルでターゲットに変化は
さほど大きな変化はありませんが、手応えを感じるのは投資のコンテンツですね。Newsモーニングサテライト(以下モーサテ)はリアルタイム配信もしているんですが、アプリからの視聴がかなり増えています。アプリならテレ東の放送圏外にいる方もいつでもどこでも視聴できますからね。そういう地域の方の「どうしても見たい」という声に応えられているんじゃないかと。

――地方の金融系ビジネスパーソンとか
そうですね、あと地銀の行員さんもですね。そのあたりの層では朝、アプリでモーサテを見てから出勤するというのがルーティンになっているという話も聞いたことがあります。特に資産豊富な富裕層を顧客とする銀行、証券会社の社員の方々の中にはお客様と共通の話題を持つためにモーサテを見ておくべき、みたいな空気があるとか。

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――テレ東BIZがレファレンスになる日は近い?
そうした声に応えるべくオリジナルコンテンツに注力していきます。一例をあげると雇用統計というアメリカの大きな経済指標が発表されるイベントをリアルタイムでお届けするというもの。日本時間の夜9時半発表になのですが、ディーリングルームから僕が中継し、スタジオでは相内キャスターとエコノミストが解説します。

――昨今の投資に対する盛り上がりにジャストフィットしますね
いま書店などをのぞくと投資本のコーナーが賑わっていますよね。日経平均3万を超える前から若い人からベテランまで投資への関心が高まってきていました。そうなるとテレ東、特にモーサテの強みが発揮できる。企業の株価やニューヨーク市場の動きをマニアックかつタイムリーに伝えているのはウチだけですからね。

――他局のサービスに大きく差をつけられるポイントですね
個別銘柄を分析して投資すべきか否かの判断材料を専門家に解説してもらう、なんてこともアプリを通じて可能です。このあたりは他のテレビ局はもちろん、新興のネットサービスや、老舗の経済雑誌メディアさんでもまだ大きく手は出せていない部分です。テレ東のNY拠点はスタジオもあり毎日ライブ中継しています。その機動力をデジタル配信にも活かしていこうと考えています。

――地上波とはコンテンツ自体の考え方が異なる感じですね
やはりアプリの会員だけ見ることができるコンテンツやイベントの拡充は必要不可欠でしょうね。テレ東はほとんどの大手金融機関のエコノミストやアナリストとつながりがあるので、番組ゲストとしてアプリ上で解説してもらうことも可能です。こうしたリッチコンテンツへの投資は将来、マネタイズポイントとしてのリターンも期待できます。

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視聴率から再生回数へ

――豊島キャスターが感じる地上波とネットの大きな違いは?
地上波のキャスターにとって最大の成果指標はやはり視聴率です。いわゆる「分計」といって1分毎の棒グラフがあるんですが、かつてWBS(ワールドビジネスサテライト)のマーケットキャスターをしていたとき、自分が出演している3-4分で分計が下がり続けると「これは厳しいな、降板させられるかもしれない」っていう思いはありました。とはいえ視聴率はある意味で言い訳ができる。裏番組が強いとか、番組のひとつ前のコーナーが数字を落とした、とか、僕も勝手に心の中で言いワケしていたような気もします。

――スタッフみんなで番組をつくっているわけですしね
そうです。でもYou Tubeだとそうはいかない。面白ければ再生される、そうでなければ再生されない。大御所が登場しようが、有名人が登場しようが、全く再生されないこともありえます。逆に無名のディレクターがいきなりデカい数字を叩き出すことも。番組の実力ではなく、個人の実力が強く出る。下剋上が起こりうる世界なんです。

――めちゃくちゃセルフコンシャスですね
視聴率から再生回数へ大きく軸が変わると同時に、数字に対して一切の言い訳ができなくなりました。いままでの僕の最高記録が360万回再生なんですが、こういう数字が出るともうそれで終わりにしたくなります。もはや傷つかないように静かに引退したい(笑)。実際にはもちろん仕事ですからそんなことは許されるわけなく、やり続けているんですけどね。

YouTubeで360万回再生の動画 2021年6月現在
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/txn/news_txn/post_206559

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――下剋上ということは隠れた才能が発掘されることも
予算や人材が潤沢ではないからでもあるんですが、テレ東はいつも"総力戦"なんですよ。人がいないから、ある意味でオールスタッフでプロジェクトに取り組むことになるんです。その結果、意外な才能があちこちで発掘されることになります。東大理系出身のディレクターが作った半導体などのマニアックな解説コンテンツが何十万回も再生されたり。先日のテレ東BIZ誕生祭では政治部の女性記者が作曲した音楽を使ったりしています。

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――手作り、なおかつ手探りですね
テレ東自体、他局と比べるとどうしてもインフラも人的リソースも小さい。昔から記者だろうがディレクターだろうが否応なしにカメラの前に出なければいけない環境でした。デジタル部隊も同じで絶対数が少ない。ひとりひとりが自発的に動かざるを得ないんです。逆にそれが埋もれていた才能の発掘やメンバーの成長につながっているんだと思います。

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――スピードの面はいかがでしょうか
トピックを選ぶときは旬を意識しますけど、果たしてリアルタイムでアップデートできるかというと正直、どこまで出来るのかという意味で、悩ましいですね。だからタイミング勝負のネタと、長いレンジで再生してもらえるもののバランスですね。あるいは繰り返し見てもらえるもの。ある程度、賞味期限が長いコンテンツを押さえておくことが大事だと思います。

――いわゆる息の長いコンテンツですね
早稲田大学ビジネススクールの入山教授と私で『テレ東経済ニュースアカデミー』という企画を配信しているんですが、企業のM&Aとかをわかりやすく、とっつきやすいトークでお届けしているんですね。自分にとってはそういうのが賞味期限の長いコンテンツのひとつのヒントになるかもしれないと思います。

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――確かに繰り返し見てもらえそうです
そうすることで、あのキーワード出てきたらこの動画、みたいな第一想起されるようになれば本望です。ただしそれには経済の定番みたいな問題についての解説を増やす必要があります。あとは地上波とデジタルの連携をどうするかということも。テレ東BIZ、課題は決して少なくありません。言い換えれば伸びしろがあるということですけどね。

全てのビジネスパーソンにとってなくてはならないツールへ

――目下のライバルは?
現場の目線ではやはりNewsPicksさんですね。勉強させられることが多いですね。動画にも力を入れてきていますし、閲覧数も相当なものだと思います。ベンチマークさせていただいて、学ぶところは学ばないと。あと内容の面では東洋経済さん。我々もしっかりと取材して、ファクトベースで情報発信に磨きをかけていかなければ、といつも気を引き締めています。

――紙メディアも競合として意識するんですね
経済の現場の息づかいを、どうやって映像で切り取るか。事実やストーリーといった目線で考えると、どうしても紙メディアに分があります。たとえば社長が役員会でどなった、という状況をテキストなら再現できますが動画では不可能ですし。それにグラフや図解を使った分析も本当に凄いなと。じゃあどうするか。それを考えるのが僕らの役割ですし......今後も紙メディアから学ぶことは多いと思います。

――ずっとカメラを回しっぱなしにするとか
そうそう。『ガイアの夜明け』なんかはカメラで追いかけて撮りまくるんですが、40-50本あるいは100本近くテープを回すのに、本放送で1本分の尺しか使わない。だけどカットされた箇所にこそ社長の人間味が出ていたりする。Webなら尺の縛りから開放されますから、テープまるごと流すというような取り組みはやっていきます。『カンブリア宮殿』なんかも面白いコンテンツになりそうですよね。

――もし取引先の社長が出ていたらアイスブレイクに最適ですね
営業の方は訪問前にその会社のことを調べると思うんですよね。このアプリをDLしておけば、取引先に向かうタクシーの中などでチェックできます。で、冒頭に「こないだ見ましたよ」みたいなトークで商談をスタートさせる。そんなビジネスの現場を温めるサービスになりたいと思っています。

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――先方との距離が一気に縮まりそうです
やっぱりどの会社の社員さんも自分の会社や代表がテレビに出ると見てほしい気持ちが湧いてくる面はあるのかなと。そのマインドをくすぐるようなインフラになればいいな、と思っています。社長が同席していたら一緒に見るのもいいですよね。「社長、この一言がいいですね!」とか。

――ビジネスの飛び道具ですね
ぜひ武器として使ってほしいですね。日々の取引先との情報共有や、投資家なら今日買うべき株の情報とか。経済と投資、その両方で必要不可欠な映像アプリになる。失われた30年などとも言われますが、日本はもうずいぶん長いこと"冴えない"時代を送ってきました。そんな先行き不透明な日々を送るビジネスパーソンに、自分をアップデートするきっかけを提供したいんです。

――最後に、今後の展望をお聞かせください
『テレ東BIZ』をWBS、ガイアの夜明け、カンブリア宮殿、モーサテに次ぐ第5の柱に育てたいと考えています。WBSで経済ニュースのメインストリームを。ガイアではより長いレンジのドキュメンタリーで苦境と戦う企業や人を追う。カンブリアでは注目の経営者にフォーカス。そしてモーサテで最新の全ての投資家にマーケット情報を提供する。これら4つの柱を統合し、5つ目の柱としてまとめるだけでなくオリジナルなコンテンツを配信していく。

――テレ東地上波四天王プラスアルファの魅力ですね
この先行き不透明な時代をサバイブするビジネスパーソンのスキルアップやキャリアアップを応援したい。たとえばですけどMBAって取得するのにお金も時間もかかるじゃないですか。でもテレ東BIZなら月額550円でほぼ近しいエッセンスの情報や知識を得られる。それが結果として『ニッポン経済の「現場」を元気にする。』というミッションの達成につながれば、と思っているんです。

――本日はありがとうございました!

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豊島晋作
「Newsモーニングサテライト」解説メインキャスター・ディレクター兼クロスメディア部デジタル副編集長。
2005年入社。政治部記者として首相官邸、国会を担当。2011年からは福島第一原発をはじめ東日本大震災の各被災地を取材した後「ワールドビジネスサテライト」ディレクターを経てマーケットキャスターとして株・為替・債券市場を担当。世界各国の資産家、経済学者、政治家、著名人に単独インタビューを敢行。2016年からはロンドン支局長兼モスクワ支局長としてヨーロッパ、ロシア、アフリカ、中東を担当し、約140ヶ所でVTR取材や中継レポートを行なった。2021年からは現職。

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