「山崎18年」が12万5000円! “家に眠る” ウイスキーの価格が高騰、そのワケは?

公開: 更新: テレ東プラス

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海外人気もあり高値で取引される国産ウイスキー

昨年、香港のオークションで日本のウイスキーの最高値記録を更新したのが、サントリーのシングルモルトウイスキー「山崎55年」です。落札価格は約8500万円。世界で日本のウイスキーへの評価は年々高まっていますが、皆さんの家に眠っているかもしれない国産ウイスキーも今、意外な高値で取引されています。

神奈川県厚木市。家庭の酒を出張買取する「ファイブニーズ」の椚春佑さんは、大量のウイスキーを売りたいとの連絡があり飛んできました。出てきたのは品薄状態が続く「山崎12年」、さらに世界的に評価の高い「イチローズ モルト」です。すべて箱に入っていて、非常によい状態で保管されていました。

ウイスキー9本で買い取り価格は18万円。買ったときの価格の2.6倍で売れました。原酒が不足し、買取価格が年々高騰。椚さんは「1年後には現状から1.5倍ぐらいまでは余裕で伸びていくんじゃないのか」と話します。

では、買い取ったウイスキーは一体いくらで売られているのでしょうか。一番値が上がっているのは「山崎18年」。希望小売価格は2万5000円ですが、「ファイブニーズ」の店頭価格は5倍の12万5000円。それでもすぐに売れるといいます。椚さんによれば「エンドユーザーは中国の富裕層です。『山崎18年』を飲めることがステータスという人が購入しています」といいます。世界的な評価の高まりで、国産ウイスキーの輸出額は約271億円とここ10年で約16倍になりました。そのため、国内では手に入りにくくなり、価格の高騰が起きていたのです。

増える国内のウイスキーの蒸留所

6年前、国内21ヶ所だったウイスキーの蒸溜所は現在37ヶ所。新たな蒸溜所が続々と開設されています。

その一つが、世界有数のスキーリゾート、北海道・ニセコ町にある、今年3月に稼働を始めたニセコ蒸溜所です。日本酒「八海山」で知られる新潟県にある八海醸造のグループ会社が運営。ニセコ町から誘致を受け、本格的にウイスキー事業に乗り出したのです。

八海醸造の南雲真仁副社長は「スキーリゾートとして世界的に注目を浴びる土地でもあるので、日本酒を製造する中で培った発酵の技術を生かしながら、品質の良いものを作っていきたい」と意欲を語ります。日本酒の輸出に力を入れる八海醸造は、国産ウイスキーの海外展開で、さらなる成長を目指します。

埼玉県利根川のほとりで、国産ウイスキーをいち早く確保しようという新たなビジネスが動き出していました。仕掛け人は上海生まれの「レシカ」のクリス・ダイ社長。訪ねたのは、今年2月に稼働を始めた東亜酒造の羽生蒸留所です。20年ほど前、国内市場の縮小で蒸溜所の操業を停止しましたが、今回、クリス社長の後押しもあって再開することができました。東亜酒造の仲田恭久社長は「すぐ販売いただけるという話があったのは大きな力になった」と話します。

通常、ウイスキーはボトルにするまで、最低でも3年、樽で熟成させる必要がありますが、クリス社長は樽の状態で、ヨーロッパの投資家に数億円で売ったというのです。

「繊細な味わいが、日本の精密な管理の下で作られているのはグローバルに知られている。海外の投資家も愛好家もバイヤーも非常に期待をしています」(クリス社長)

クリス社長が始めたのは、樽の状態でウイスキーを購入できる「ユニカスク」という新たなサービス。客がこのサービスを通して蒸溜所の樽を買うと証明書が発行され、3年後に客は出来上がったウイスキーをボトルで受け取ることができます。さらに熟成させて価値を高めてから、樽の権利を第三者に売ることもできるのです。

客はスマホで樽の温度や湿度をいつでも確認でき、取引の記録もブロックチェーンの技術で安全に管理しているといいます。

投資は熟成し始めたばかりの樽にまで。国産ウイスキーのブームが過熱しています。

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