“変わらない”ところに価値を見出す「来世ちゃん」と国民的アニメの共通点:来世ではちゃんとします2

公開: 更新: テレ東プラス

ジャングルジム緊縛に、5人のセフレがいる桃ちゃんの婚活!? 第1話から早くも話題沸騰のドラマParavi「来世ではちゃんとします2」(毎週水曜深夜0時40分放送/テレビ東京ほか)。性依存系女子・桃江(内田理央)をはじめ、BLオタクの梅(太田莉菜)、魔性のタラシ・松田(小関裕太)、処女厨の林(後藤剛範)、風俗ガチ恋の檜山(飛永翼)ら恋愛と性をこじらせたイマドキ男女が、さらにディープにこじらせまくっています。

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前作同様、桃ちゃん役の内田さんはじめキャスト陣の体当たり演技は、さすが! キワドイシーンも多いけど、どんな風に演出しているの? 原作のいつまちゃんの4コマ漫画を、どうやって30分のドラマにしているの? 「来世ちゃん2」の知られざる裏側を、三木康一郎監督と、テレビ東京の祖父江里奈プロデューサーにうかがいました。

女性人気の秘密

raisechan_20210818_02.jpg「来世ではちゃんとします2」第1話より 話題のジャングルジム緊縛!

――「来世ちゃん」待望のシーズン2! 2020年1月クールに放送した前作は、局内でも"来世ちゃん現象"と言われるほどの大反響だったそうですね。

祖父江P「放送の反響もいただきましたが、特にParavi(動画配信サービス)での配信の数字が良くて。最初の1週間で未だかつてない程加入者が増え、"来世ちゃん現象"と言われました。20、30代の女性が多く見てくださっていることも話題になりましたね」

――女性視聴者が多いのは意外でしたか?

三木監督「女性に見てもらえるように狙って作っていたので、カッコよく言うと当然の結果だったかな」

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――狙って作ったというのは、どんな点ですか?

三木監督「"かわいい"ことが大前提。原作を読んだら、いい意味で"クズ"しかいない(笑)。ドラマだと漫画では笑える描写も生々しくなってしまうので、クズをリアルに描くと嫌われてしまうんですよ。だから、(桃江らスタジオデルタのメンバー)5人とも"かわいくて、なんか憎めない"雰囲気を出し、その上で人間の裏にある本当の部分を表に出すことを考えました」

祖父江P「"クズ"じゃなくて"こじらせ"です」

三木監督「"こじらせ"をリアルに描くと"クズ"になる(笑)。なるべくリアルにはしないけど共感は得たい。そのバランスは役者さんたちを含めてすごく考えました」

ほのぼのアニメのような雰囲気を目指した

raisechan_20210818_04.jpg「来世ではちゃんとします2」第1話より

――その感覚を、俳優のみなさんにはどのように伝えたのですか?

三木監督「内田さんには、この物語は『ちびまる子ちゃん』のようなものと伝えました。内田理央さん演じる桃ちゃんは、たまちゃん。まる子は結構毒を吐きますが、その横にいる友達のたまちゃんは優しくていい子」

祖父江P「桃ちゃんは他人を攻撃したり否定をしたりしないキャラなので、本当にたまちゃんっぽいんですよ。まる子が何をしてもいつも横に寄り添ってくれていますからね」

三木監督「桃ちゃんがたまちゃんなら、太田莉菜さん演じる梅ちゃんはまる子。まる子は毒を吐いてもそんなに憎めない」

――そういえば、つぶやきシローさんによる「来世ちゃん」のナレーションも「ちびまる子ちゃん」っぽいですよね。

祖父江P「そうですね、物語にツッコんだりもして。あれはつぶやきさんのアレンジなんですよ」

三木監督「シーズン1の♯1を撮るときに、つぶやきさんが『ちょっとやってみてもいいですか?』と勝手にしゃべりだして(笑)」

祖父江P「その声が視聴者の声とリンクしていて。それも良かったと思います」

三木監督「各話のタイトルも『○○の巻』だったり、ちょっとアニメの雰囲気があるドラマになっています」

――原作は4コマ漫画ですが、そこから1話30分のドラマにするのは難しくないですか?

祖父江P「大変ですね。脚本はペヤンヌマキさんにお願いしていますが、まず最初に私が漫画から取り上げたい内容をピックアップして箇条書きにして、それをキャラクターごとに振って、どれとどれを組み合わせるかを話し合います。この作業が膨大で」

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――では、ドラマで取り上げる内容には、祖父江さんの嗜好が反映されていたりも?(笑)

祖父江P「あるかもしれないですね(笑)。原作のいつまちゃん先生も協力的で、まだ漫画になっていない構想段階のことも教えてくださったりして、本当にありがたいです。それを基にしてシーズン2に盛り込まれる梅ちゃんの物語は、原作よりドラマ先行になる可能性がありますね」

三木監督「今回も最終話を作るのに悩んでいたでしょ?」

祖父江P「そうなんですよ。まだ原作も終わっていないので、どういうラストがいいかと悩んで。三木監督に『このドラマは永遠に続く物語だから「ちびまる子ちゃん」や「サザエさん」のような話にしないとダメだ。最終回らしいオチをつくるより、変わらない日常を描くことを考えた方がいいんじゃない?』と言われて、ハッと気づきましたね」

三木監督「最初は、"現世でちゃんとしました"みたいな脚本になっていたんですよ。それは違うんじゃないって」

祖父江P「すごくハッピーな脚本になって。でも、どこかで心がザワザワしていて......。書き直したら良くなりました。やっぱり桃ちゃんたちは、その時々の悩みは違うかも知れないけど悩んでいる方が面白いなと思いました」

三木監督「最近のテレビドラマは、何かが起きて、一波乱あって......と起承転結の"展開"を大事にしている。でも、そうじゃないドラマがあってもいいんじゃないかな、と。『サザエさん』のように何十年たっても同じことをしている、そういう"変わらない"ところに価値を見出していくドラマがあっても面白いはず。"変わらない"というのは、作品作りにおいて恐怖でもあるんですが」

祖父江Pの嗜好が盛り込まれている(!?)ことが判明しましたが、この後、実はラブシーンの演出には三木監督の嗜好が反映されている!......かもしれない!?という展開に。気になる三木監督×祖父江Pの対談、後編は来週8月24日(火)公開!

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8月18日(水)放送のドラマParavi「来世ではちゃんとします2」第2話は、松田が監禁されてしまう!?

第2話
目を覚ますと手を縛られていた松田(小関裕太)。寝ている間、亜子(小島藤子)にスマホを見られ、他の女の子との遊びがバレてしまった。さらに本命の存在!?原因を知った松田は、休みが終わるまでの1週間、亜子の要望になんでも応えると約束する。しかし、その引き換えに別れを告げるのだった。亜子の要望は「お別れまでの1週間、彼女になること」。そうして始まった期間限定の恋人生活の結果は、果たして!?

【プロフィール】
三木康一郎(みき・こういちろう)
映画監督・演出家。1970年12月7日生まれ。富山県出身。バラエティ番組のディレクターとして数々の番組を担当。1998年以降はドラマも演出し、「トリハダ 劇場版」(2012年)で映画監督デビュー。映画「劇場版ポルノグラファー〜プレイバック〜」(2021年 ※ドラマ版も監督)、ドラマ「ラブラブエイリアン」(フジテレビ系)、「東京ラブストーリー」(フジテレビオンデマンド、Amazonプライム・ビデオ)などを手掛ける。

祖父江里奈(そぶえ・りな)
ドラマプロデューサー。2008年、テレビ東京入社。「おしゃべりオジサンと怒れる女」「モヤモヤさまぁ~ず2」などバラエティを担当した後、ドラマ制作へ。「生きるとか死ぬとか父親とか」「声優探偵」「だから私はメイクする」「共演NG」「38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記」などを手掛ける。2020年7月「テレ東無観客フェス2020」で上演を配信した演劇「女のみち特別編~アンダーコロナの女たち」も話題に。

(取材・文/玉置晴子)

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