貯蓄できない原因は脳にあった!無駄遣いをやめる方法

公開: 更新: テレ東プラス

主治医が見つかる診療所」(木曜夜7時58分から)は、医師や病院の選び方のコツや、無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に第一線で活躍する医師たちが答える、知的エンターテイメントバラエティ。

さて、今回WEBオリジナル企画「主治医の小部屋」で取り上げるのは、浪費グセはないはずなのになぜかお金が貯まらないという女性からの相談です。本コーナー初登場、無駄遣いと脳の機能との関係性についての著作もある脳神経外科医の菅原道仁医師にさっそくお聞きしましょう!

脳は「大安売り」や「タイムセール」に弱い

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Q:30代独身女性です。毎月3万円を貯金しようと決めたものの、なかなか実行できずにいます。お酒もタバコも無縁で、使うとしたら洋服とコスメくらい。それも高いものを買っているわけではありません。でも月末になるとなぜか残高が少なく、貯金することができません。テレビで「お金が貯まらない原因は脳にある」という情報を目にしたのですが、本当でしょうか? どうしたら改善できるのか知りたいです。

―― 先生、脳の仕組みとお金の遣い方にはどのような関連性があるのですか?

「そもそも大前提として人間の脳というのは本質的に怠け者なんですね。つねに働いてはいるけれど、エネルギーをなるべく使わないようにしたいというのが人体の基本的な仕組みです。というのも、脳は非常に多くのエネルギーを消費する臓器で、だいたい1日の消費カロリーの20%ぐらいは脳に使われています。体全体の比率から考えると、とても燃費の悪い臓器のひとつなのです。

そこで、エネルギーを効率よく使うために、脳はできるだけ物事を反射的に判断したり、決断を先送りしたり、いつも同じような行動を取ったりすることで "自動的に処理しよう" とします。我々が重大な決断を迫られるときに備えて脳のパワーを温存し、単純化して "習慣化" するのです。通勤のとき定時に家を出て同じ車両に乗るのも、スティーブ・ジョブズが同じ洋服しか着ないことで有名だったのも、皆この脳の特性によって作られる "クセ" によるものです。

たとえば歯磨きも同じで、普段、左上を磨いて左下を磨いて......と考えながら磨きませんよね。だからクセによっては磨き残しがあって虫歯ができやすいところがあるのです」。

―― 日常的なお金の使い方にもクセがあるということですか?

「たとえば、『大安売りです! 最後の1点です!』といわれて、つい衝動的に買ってしまっていませんか? 無駄遣いを防ぐには、習慣化にあらがって1回1回考えなければいけないので、じつは結構大変なのです。

脳は損をすることが嫌いで、どちらかというと得よりも損を多く見積もる思考をします。3割引きの商品があるとすると、割り引きのお得感よりもそれを買えなくて損したことを悔しいと思うので、買わなければいけないという気持ちにさせるのです。

相談者には無駄遣いをしている感覚はないようですが、もしかするとこうした日頃の買い物のクセが何かしらあるのではないかと思います」。

―― 快楽物質と呼ばれるドーパミンの働きもやはり関係しているのでしょうか。

「神経伝達物質のドーパミンとはそもそもモチベーションの源泉です。なぞなぞが解けたときなどに "あっ!(わかった)" という感覚がありますよね。そのときに出ているのがドーパミンです。脳内麻薬と表現する人もいますが、脳内に喜びの物質が出るから我々は努力をして学習するんですね。ギャンブルで勝つ、お酒を飲むといった行為で快楽が得られるのもドーパミンの働きによるものです。

買い物も、これを買って楽しいなと思うと瞬時に多幸感が出るので、それにあらがえなくなります。ただし、その薬理作用は一瞬で、長続きしません。たとえばネットショッピングのタイムセールで得をしたと喜んでも、数日後に配送されてきたときに買ったことを後悔したりするのはそのためです。

大事なのは、買うときは欲しいと思った物に対してストーリーを描けるかどうかで判断するということ。脳の自動処理に任せずによく考えながら物を買うといいのではないかと思います。たとえば喪服など冠婚葬祭に必要な物を買っても無駄遣いをしたとは思わないはずです。ですから本当に必要な物や使い道がはっきりしているものに消費することが大切なのです」。

支出の見直しには電子決済が有効!

doctor_20210818_02.jpg画像素材:PIXTA

―― お金を貯めるには習慣化された無駄遣いをしないようにすればいいのですね。

「貯蓄を増やすには、収入を増やすか支出を減らすかしかありません。支出を見直すなら消費をレコード(記録)したほうがいいですね。人の記憶は曖昧なものなので、使ったことが明細に残るクレジットカードや電子マネーによる決済がおすすめです。現金の場合、割り勘での支払いや小銭で買った物などは記録に残し忘れてしまいがちですが、それを防ぐこともできます。

以前は、物を失うことに対する恐怖心があるぶん、現金払いのほうがいいといわれていましたが、昨今ではクレジットカードなどを使っている人のほうが無駄遣いが少ないというデータもあります。支払い明細があればどこに使っているのか細かい出費も把握できるので、無駄遣いも減るはずです」。

―― 毎月3万円の貯金が実行できるようになるといいですね。

「そうですね。ただひとつ確認しておきたいのは、貯金が本当にあなたにとって必要なことなのか、ということです。貯蓄自体を目的にするのはあまり良いこととは思えません。自分の人生を楽しめていればよいのですが、相談内容からするとむしろそれが苦しみになっているようにも感じます。

無駄遣いは決して悪いことではなく、お金を使って得た体験で自分が成長することは無駄と思わなくてよいということです。

もし貯蓄の目的が老後の資金などであれば、逆にその3万円(あるいは一部)を自分に投資することで収入をアップさせることができるかもしれません。資格を取るためにテキストを買うとか、英会話教室に行くとか何でもいいのです。旅行に行ったことがきっかけで視野が広がり、新たな仕事につながる可能性もあるかもしれません。節約することだけを考えず、収入を増やす努力をしてもいいと思いますよ」。

―― 菅原先生、ありがとうございました!

【参考資料(菅原道仁先生・著)】
・『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)

【菅原道仁医師 プロフィール】
1970年埼玉県生まれ。杏林大学を卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて数多くの救急医療現場を経験。外来診療は月に延べ1500人ほどを診察する時期もあったが、一人ひとり責任をもって診察をするために2015年、東京都の八王子市内で小規模ながら大病院並みの検査機器を備えた菅原脳神経外科クリニックを開業。「病気になる前にとりくむべき医療がある」との信条で、新しい健康管理方法である予想医学を研究・実践している。元・日本健康教育振興協会会長。

※この記事は菅原道仁医師の見解に基づいて作成したものです。

今回お話を伺った秋津先生も出演する主治医が見つかる診療所(8月18日木曜夜7時58分)は【人生激変女性芸能人ガチ検査!お得な食べ方SP】!

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美味しいけれど食べると太ってしまいそうなラーメンやスイーツなどの上手な食べ方をご紹介! 体にお得な最強寿司1人前とは? 美肌寿司や脂肪燃焼寿司など、くら寿司ベスト6皿を取り上げる。さらに、最近人生が激変した3人の女性芸能人の体の不調の原因を、私生活と人間ドックから見つけ出す。果たして不調の原因とは? どうぞお楽しみに!

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