加速する顧客体験DX!リッチコンテンツが生み出す次のビジネスモデル~コロナ禍で注目されるDX、その裏側にあるUX革命に迫る~

公開: 更新: テレ東プラス

デジタルの力によってビジネスのプロセスを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)は、ここ数年企業のビジネス戦略、マーケティング領域の大きなキーワードだったが、新型コロナウイルス感染拡大によるビジネス環境、顧客環境の変化によってその動きが加速している。
このセッションでは、DXによってどのような新たな顧客体験(UX)が生み出されているのかについて、「Kaizen Platform」代表取締役・須藤憲司氏が「大日本印刷」情報イノベーション事業部・嶋岡立行氏と共に語り合った。

reversible_20210721_01.jpg▲左から嶋岡氏、須藤氏

須藤氏が代表を務める「Kaizen Platform」は、デジタルソリューションやリッチメディアなどを活用して顧客体験の改善・変革を支援するスタートアップ企業で、「大日本印刷」ともパートナーシップを組んでいる。「大日本印刷」も顧客体験向上にDXを活用する「DX for CX」をキーワードにDXを推進しており、「Kaizen Platform」とは2019年3月に資本・業務提携を結んでいる。

今ある顧客接点をデジタル化することで、"わかりやすさ"を生み出す

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まず語り合ったのは、「DXを始めるにはどうしたらいいのか」というポイントだ。須藤氏は「DXと聞くと"難しいことを考えなければならない""全く新しいことを考えなくてはならない"と考えがちだが」と前置きした上で、ふたつのアプローチを提示した。

1)いまあるもの、いま行っていることをどうやってデジタルを使って改善するか
2)デジタルが当たり前の世の中からどうやって顧客体験を考えるか

その上で、今回は「現在のビジネスをどのように変革するか」というアプローチを中心に考えていくこととした。

現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ビジネスにおいても消費者の生活においても「非対面・非接触」が当たり前の前提になりつつある。「私たちの働き方も、生活者として情報を受け取るシーンでも変わってきている。大日本印刷でも出社率が最大で7割か8割削減するなど大きな変化が起きた」と嶋岡氏は振り返りながら、その影響としてデジタルツールの急速な普及加速を挙げた。

「社内業務のデジタル化などは一気に加速した。稟議・決裁などを含めてほとんどの業務はデジタルを活用して非対面・非接触で完結するようになっている」と嶋岡氏。須藤氏も「今まで紙などを使って生み出していたチラシ、パンフレット、マニュアルなどのコミュニケーションツールが、非対面・非接触をきっかけにデジタル化し始めた」とし、チラシの動画コンテンツ化など両社で実際に行われた事例について紹介した。

「かつてチラシは新聞に折り込んで消費者に届けていたが、消費者のメディア接点がPC・スマホに移行する=ターゲティングする環境が変化するなかで、チラシを動画化=チラシのDXは必然だった」(嶋岡氏)。

このようなアナログなツールを動画化する効果について、須藤氏は「わかりやすさ」をキーワードに挙げている。つまり、紙に細かくまとめるのではなく、動画で観てわかるコンテンツにすることにより、消費者がその中身を受け取りやすくなるのだ。「複雑な内容をわかりやすくすることでコンバージョンレートが上がることが期待できる。顧客のクレーム減少も期待できる」(須藤氏)。

旧来から続くアナログな形での販売促進手法は「ゆるやかに減少傾向だが、デジタル化が進んでも実際に手に取れるツールとして従来の手法も残り続けるだろう」(嶋岡氏)としながらも、DXに市場性のポテンシャルがあると指摘。須藤氏も紙を流通させるプロモーションメディアが1兆2,484億円規模という巨大市場であることを挙げた上で、「この巨大市場がどうやってデジタルにシフトしていくべきかを考えなければならない」と今後の課題を指摘した。

DXによってもたらされる効果について、須藤氏は「データの活用」を挙げた。
店頭販促の接触履歴や購買履歴といった顧客情報を活かして顧客のセグメンテーションとターゲティングを行い、それに応じてスマートフォンなどのデジタル接点におけるコミュニケーションを最適化。店内の顧客接点をデジタル化することで顧客コミュニケーションを豊かにする...。データを活用し、循環させることで顧客体験を向上できるというのだ。

「デジタル化とデータ活用によって(店頭など)決済判断をしたところだけでなく、来店・購入にいたるプロセスの全体像を可視化・最適化することができる」(嶋岡氏)。

DXで企業の営業活動も変わる 何を変えて、何を残すか

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須藤氏によると、新型コロナウイルス感染拡大によるビジネス環境の変化により、イベントのオンライン化、コールセンターの負担軽減のためのマニュアル・FAQなどの動画化、店頭での非接触対策としてカタログやパンフレットの動画化、営業活動のリモート化に伴う企業紹介、事業説明の動画化といった領域で、企業のニーズが大きく伸びているという。セッションの後半では、こうした動画コンテンツからDXが始まった様々な事例が紹介された。

特に話題に挙げたのが、BtoBの領域だ。現在は非対面でどのように新たな商談を生み出すか、リモート営業でクロージングまで行うかという2つのトレンドが生まれているという。「大型の展示会、イベントがオンライン化したことにより、プレゼンの仕方も変わった。事前にイベント内容=資料を配布することで興味のある視聴者を事前に絞り込むことができるようになり、プレゼンで何を伝えるのかという点で効率が高まった」(嶋岡氏)。

一方、営業活動については「コロナ禍になる以前から営業の難易度が高まっている」(須藤氏)とした上で、売り物や売り方が多様化する中において、それらを属人化させることなくデジタルで網羅的に活用できる環境を整え「営業相手の興味関心に対するマッチングを事前に行ってからアプローチしていく手法に変わっていくだろう」(嶋岡氏)と指摘した。

須藤氏によると、こうしたビジネス環境の変化により、「Kaizen Platform」でも自社の紹介を3分で行うプレゼンテーション動画を制作し、顧客企業からも好評だという。動画活動するメリットについて、須藤氏は情報量の豊富さによる訴求力の向上、高いクオリティによるアウトプットの標準化、視聴ログなどのデータ活用などを挙げている。

こうした動きに対して、「誰でも簡単にネットで調べられる時代、相手は我々に"ネタバレ"を期待している。事前に情報を把握して納得した上で(商談などの)話がしたいというのが、顧客のニーズだ」と須藤氏は語る。つまり、情報を提供してニーズとのマッチングを図るという営業の第一段階はオンラインで完結しており、ニーズと価値のマッチングを済ませた上で建設的な商談をするというスタイルが、これからのトレンドになるのだ。

では、こうした動画を活用した営業活動のDX化がどのような効果をもたらすのか。須藤氏は商談・プレゼンスキルの平準化や商談の時間や手間の削減などの成果を挙げ、短時間でビジネス、サービスをわかりやすく説明し、営業活動の効率化を実現している点を紹介した。

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「クロージングの場面などでは人と人のコミュニケーションが生み出す良さもあるので、必ずしも全てをデジタル化することがいいとは言い切れない。しかし、これまで属人化していたスキルやノウハウがオープンになることが大きな効果になるのではないか」(嶋岡氏)。

嶋岡氏の言葉を受けて、セッションの最後に、須藤氏は「DXの盛り上がりは、今あるものをどうのようにデジタル化するか、そしてその上で何をリアルな体験として残すかを含め"顧客体験全体をどのようにデザインするか"というふたつの課題の接点にあるのではないか」とまとめた。

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