カップヌードルを超えるか 日清食品の新分野への挑戦<大浜見聞録>

公開: 更新: テレ東プラス

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日清食品の安藤徳隆社長

日清食品が即席めんと並ぶ事業の柱を新たに構築しようと動き出しています。5月に発表した中長期成長戦略では、即席めん事業に続く第2の柱として、普段食べる食事に足りない栄養素を入れ、栄養バランスの取れた食事ができる「未来の食」事業へ乗り出しました。

日清食品の安藤徳隆社長は「ずっとカップヌードルにおんぶに抱っこでは駄目。カップヌードルを超える事業を作らなければいけない。カップヌードルを倒すために、今回"完全栄養食"をぶつけていく」と強調します。

日清食品が目指しているのは、食事本来の美味しさを求めるとともに、厚労省がまとめた日本人の食事摂取基準のうち、必要なビタミンやミネラルなど33種類の栄養素をバランスよく摂取できるようにするものです。

「私自身、40歳を過ぎ、健康診断でいろいろと数字が引っかかるようになってきましたので、食べ物に気をつけなくてはいけない。そういうことをずっと考えていると、食本来の楽しみがだんだんなくなってくる。そこで、好きな物を、好きな時に、好きなだけ食べてもよい世界を自分で作ってしまおうと考えたのが一つの背景です」(安藤社長)

日清食品は即席めんで、塩分やカロリーを減らす技術を培ってきましたが、その技術を今回活用します。

たとえば、ミストシャワーのように油をかけ、熱風乾燥することで油分をカットしながら揚げたような風味を整えたり、世界の170種類の塩を研究し、調合の具合により減塩しても味が変わらないようにしたりする技術を開発しました。さらには、栄養素本来のえぐみや苦みを隠す技術や、調理しているときに栄養素を失わない工夫が施されています。

安藤社長は、開発中の食は世界規模の健康リスクにも対応できるのではないかと見ています。

「欧米においては、地域的に十分な栄養が届かない、カロリーなどは十分に足りているが、どうしても生鮮食料品などは手に入らない。それによって栄養の偏り、カロリーだけを取ってしまい肥満になり、健康リスクが増大する社会的な問題が、世界中に存在する。"完全栄養食化"していけば、フードデザート問題を解決する一つの手だてになるのではと考えています」(安藤社長)

栄養素を高めることで、味はどのように変化するのでしょうか。とんかつ定食を試食した大浜平太郎キャスターは「見た目は普通のとんかつです。サクッとさっぱり揚がっていて、(普通のとんかつとの)違いを何か見つけたいなと思っているんですけれど、むしろおいしい。さっぱりしてて衣も軽い感じがします」とその味に満足した様子です。

おいしさを感じる秘密は、ビタミンやミネラルなどの栄養素の入った液体です。試飲した大浜キャスターによれば「ウワーッと広がる独特のおいしくなさというか、不快感があります」という栄養素の味を隠すことに日清食品では成功しました。また一般的なとんかつ定食が約670kcalであるのに対し、試食したとんかつ定食は約470kcalまでカロリーを抑えています。さらにソースやご飯、みそ汁にも工夫を凝らしています。

利益の5~10%ぐらいを毎年投資

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日清食品の技術が使われたとんかつ定食。必要な栄養素を摂取できる上にカロリーも抑えられている。

日清食品ホールディングスの2021年3月期の純利益は、1年前と比べ39.3%増の408億円と過去最高益を更新しました。ただ、株価は低迷。昨年8月の上場来高値から3000円弱下落しています。昨年は巣ごもり需要を背景に即席めんが大きく伸びましたが、そこが業績のピークではないかと市場が見ているためです。

こうした中、日清食品は個人へのアプローチを強化しています。弁当宅配の事業化に向け、実証実験を始めたのです。栄養素を高めたヨーロッパ風のカレーや肉と野菜の回鍋肉、さらに黒酢酢豚などメニューも整いつつあります。

企業のデータ解析などを行うIT企業を運営する渡辺真洋さんは、弁当宅配の利用を1ヶ月前から始めました。最近は締め切りを控える仕事が続いたことで、不摂生な生活となり、栄養の偏りに悩んでいたためです。

「いつも罪悪感を抱えながら、おいしいくて、こってりしたものを食べているところがあるので、罪悪感を感じずに食べられるのはすごくいいなと思っています」(渡辺さん)

さらに食事の栄養価はスマートフォンのアプリにすぐに反映されます。今、不足しがちな栄養がすぐにわかり、渡辺さんは食事を抜くことがなくなったといいます。日清食品は多くのデータを集めた上で、社員食堂などにも販路を拡大させる計画です。

新しい事業の投資計画について、安藤社長は「これから数年間においては利益の5~10%ぐらいを毎年投資に充て、新事業のビジネス化を目指す」と話しています。

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