「伝統芸能×日本人の武器」勝村政信が感じた「能」の凄み

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左から、片渕茜、勝村政信、杉浦豊彦、北澤豪
左から、片渕茜、勝村政信、杉浦豊彦、北澤豪

観世流の能楽師で、重要無形文化財総合認定保持者の杉浦豊彦が、5月1日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。番組MCの勝村政信と番組アナリストの北澤豪が、能の基本「すり足」を体験し、その凄みに触れた。

サッカー界では、ブラジルのサンバ、アルゼンチンのタンゴ、スペインのフラメンコなど、特有のダンスが根付き、そのリズムや姿勢がプレーに反映されていると言われている。そして、昨年3月、番組ではEXILEのTETSUYAを招いて「スポーツ×リズム」を特集。ダンスのリズム感からサッカーを考えた。

今回のテーマとなる能は、およそ600年前に誕生し、武士のたしなみとして発展。歌や音楽、踊りにストーリーを加えた、いわば世界初のミュージカルといえる存在だ。華麗に見える能だが、実は体に大きな負荷を与えているそうで、それを裏付ける驚きのデータがある。

能楽師・津村禮次郎は、79歳にして現役で能の舞台に立つ重要無形文化財保持者。8年前、研究の為に大腰筋(背骨の下部と股関節の内側を繋ぐ筋肉で、足の持ち上げや姿勢を保つ役割がある)のMRI検査を行うと、医師は「30~40代並み。姿勢を保持するのにかなりの大腰筋を使っていて、小刻みに大腰筋を鍛えていると考えられる」と診断。津村本人も「能は体に負荷のかかる芸能。稽古で、それに耐えられる筋肉や呼吸を身に着けることが重要」と話した。

そしてスタジオでは、杉浦が能の舞を披露。以前、番組でTETSUYAは「日本の舞は腰の位置が低い。その体勢で動くのが意外と得意なのかもしれない」と語っており、まさにそれを体現したような舞を見せる。

続いて勝村と北澤が、能の基本動作「すり足」を体験することに。杉浦は「上半身は頭の先を天に引っ張られるように。そして、下半身は大地に根を下ろすように。お腹のあたりで上半身と下半身がちぎれるような気持ちで構える。そうすると押されても崩れない強さと美しさが得られる」と説明。いざ実践してみると、勝村と北澤は「腰が痛くなる」と訴え、普段使われていない筋肉が刺激された様子。さらに勝村は「日本の強さってこれだと思う」と話した。

そこで杉浦に「姿勢が美しい日本人選手」を聞くと長友佑都と回答。長友のプレーを見ると、下半身はどっしりし、背筋が伸びているため、走っていても頭がぶれない。まさにすり足の姿勢と共通している。「能は肩と腰の4点が常に四角で、ひし形にならない。1枚板のようになっている方が良い。後ろに背負われても四角形が崩れないから強いのだと思う」と話した。

また、番組では、日本は、一歩一歩丁寧に歩くような「表拍子」が染みついているのに対して、海外では、軽快なリズムで前へ前へと進んでいくような印象の「裏拍子」が重視されていると説明。体にしみ込んだリズムがピッチで差となって表れているのではないかと考えた。

能の基本は、表拍子が中心の8拍子となっている。ただし、盛り上がったところで使われることの多い太鼓は、右バチが表拍子、左バチが裏拍子でリズムが刻まれる。実は、能においても裏拍子を強く打つことでテンポを良く見せていると説明。

実は、日本も昔から裏拍子を取り入れ、効果的に使っていることが明らかになった。勝村は「伝統芸能の良さ、リズムの凄さ、このあたりをもう一度思い出していきたい。もともと遺伝子に組み込まれているものをもう一回呼び覚まして繋げていければ」と語り、伝統から得られるものの大切さを伝えていた。

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