日本人にはパッションが足りない?子育てと主体性で変わる日本の姿

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幸野健一
幸野健一

サッカーコンサルタントの幸野健一が、3月13日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。サッカーパパ&ママであれば遭遇するであろう「子どもがスパイクを忘れた」「試合後の帰り道、何を話す?」「チーム練習とドリブル塾の掛け持ち」「子どもがサッカーを辞めたがっている」という4つのシチュエーションから、主体性を持たせるための子育て術について考えた。

幸野は17歳でイングランドへ渡り、選手だけでなく指導者としても活動。現在は幼稚園児から高校生までがプレーするFC市川GUNNERSを運営。また、U-16やU-21など年代別日本代表に選ばれた幸野志有人を息子に持つ、まさに育成のスペシャリストだ。

イングランドでは、選手をやりながら小学生年代のコーチをしていたという幸野。選手たちにアドバイスをすると「こういう理由でパスを出したけど、なんか文句あるの?」と必ず自分の意見をぶつけてくるという。一方、日本では「監督の目を見て、その中から答えを探してしまう」と、相手の意見をくみ取りに行きがちだと思考の違いを指摘。「狩猟民族で子どもの頃から自分で考えて行動することが当たり前の彼らが生み出したのがサッカーなのだから、主体性の部分が変わらないと日本は世界に追いつけないと実感しました」と語り、歴史的背景からも、世界と渡り合うには主体性が大切だと説いた。

まず、「子どもがスパイクを忘れた時どうするべきか」がテーマになると、幸野は「子どもの失敗はカバーするな」と提言。監督に「試合で一番大事なスパイクを忘れたのだから試合には出られない」と言われることで、翌週から自分でスパイクを用意するようになると話した。一方で、親も頭ではわかっているが、実際に目の前で起きた時につい助けてしまうもの。「今日は何かあるでしょ?」と助け舟を出すなどして、子どもを信頼して待つ勇気を持つことが、子どもが自立する道を歩んでいくことに繋がると説いた。

続いて、試合で子どもが大活躍や大失敗した時には、サッカーの話はしない方が良いと提言。特にプレーに関する話は指導者に任せるべきだという。もし、失敗した子どもには「俺だって仕事で失敗するんだから、来週頑張れば良いんだよ!」とポジティブな声かけをすれば十分で、自分が言われてイヤな事は子どもにも言うべきではないと伝えた。すると番組アナリストの北澤豪は「サッカー経験者でもあるし、特に失敗した時の理由も原因も分かる。アドバイスしないのもおかしくないですか?」と、経験者ほど言いたくなってしまう心理について質問。しかし幸野は「経験者ほど言ってはダメ。お父さんのサッカーは一時代前のサッカーで、今のサッカーとは違う。だから、サッカーに関する話は指導者側に任せてほしい」と改めて話した。もし、子どもからアドバイスを求められても、ネガティブな方向に行ってはいけないと念を押した。

そして、クラブの練習だけでは足りず、練習後にドリブル塾にも行きたいと言い出した時にどうするべきか。幸野は、「もし週5日など毎日のようにサッカーの練習をしているのであれば、違うことにするか、時間にゆとりを持たせるべきだ」とアドバイス。「驚くようなプレーというのは結局のところクリエイティブなプレーで、芸術が繋がっていることもあると思う。子どもがサッカー以外に好きなことがあるなら、そういった面も大事にしてあげた方が良い」と話した。

これには番組MCの勝村政信も賛同。勝村自身、ずっとサッカーをやってきたが、ある時演劇の道へ。演劇について何も知らなかったので、サッカー的な視点を通して演劇を考えたのだとか。例えば、演劇では相手を見たり感じたりしながら演技をするのが普通だが、サッカーでは見たり感じたりしていないように見せることで有利になることもある。そういった感覚を取り入れることで、周囲の役者たちに「あいつ不思議なことをしている」と言われるようになったと明かし、様々な経験を積むことで違う局面で活きてくることを体感したという。

そして、子どもがサッカーを辞めたがっているときどうするべきかという難題に対して、幸野は「辞めたいなら辞めさせる」とバッサリ。スクールに親に言われているから来ているという子どもがいる場合、保護者に対して「サッカーはスポーツであって、スポーツと言うのは元々ラテン語で“deportare=遊び”という言葉から来ている。だからやりたい人がやればいい」と言って、決して習い事にするべきではないと伝えるのだとか。「日本では学校でスポーツをやることにした瞬間に教育にすり替わってしまった。“楽しい”が最初に来るべきなのに、“忍耐・努力・我慢・礼儀”などが最初にあるから、どこかで限界が来て、多くが高校を卒業する時に辞めてしまう」と問題点を指摘した。

ただし、すべてを子どもに任せてしまうのは無責任で、親には親の役割がある。「選択肢を与えた中で、最後は子どもが決めるということを常に意識してほしい」と言い、もちろん子どもが多くの情報を持っているわけではないので、親も調べるなどした上で子どもに選択肢を提示してあげることが大事だと話した。

最後に幸野は、ヨーロッパのスカウトなどに「日本人選手はテクニックのレベルは高いが、パッションが感じられない。楽しいのか?」と言われると明かし、「自立する中で、それは生まれてくるのだと思うし、パッションに溢れる日本人がもっと出てきたら、必ず日本のサッカーは強くなる。閉塞感あふれる時代を突き抜ける子どもたちが出てくることを信じている」と提言した。

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