佐藤寿人「感覚でやっていない」天性の才能だけではない!ストライカー育成法

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佐藤寿人
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Jリーグ最多得点記録保持者の佐藤寿人が、2月27日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。稀代の点取り屋が、自身の経験からくるストライカーの育成方法について語った。

過去番組では幾度となくストライカーについて議論し、例えば中村憲剛は、ストライカーが持つ独特の感性を引き合いに出し「点取り屋は作れない。才能や感覚だと思う」と発言するなど育成の難しさに触れてきた。しかし、J屈指のゴールゲッターの佐藤は「僕は感覚でやってきていない」と断言。指導者による指導があって、身体的に恵まれていなくても点を取り続けることができたと振り返り、「世界で通用するストライカーは生まれてくると思っている」と語った。また、ガンバ大阪アカデミーのストライカーコーチに就いた大黒将志も「感覚とかで偶然うまく行くのもいいけど、計算してやってほしい」と、ストライカー育成に可能性を見出していた。

欧州のクラブや代表では、ストライカーはゴールキーパー同様に専門職と考えられ、専門のコーチが指導にあたっている。2018年のロシアワールドカップで3位になったベルギー代表も、元フランス代表のティエリ・アンリをコーチとして招聘し、選手たちにその知識と技術を伝え、結果に結びつけた。実は近年、“ストライカーコーチ”と呼ばれる役職が日本サッカー界でも広がっている。

日本でいち早くストライカーコーチを導入したのが、番組アナリストの都並敏史が監督を務めるブリオベッカ浦安(関東1部リーグ)。決定力不足解消のため2017年から長谷川太郎をストライカーコーチとして招いた。長谷川は、現役時代は柏レイソルやヴァンフォーレ甲府でプレー。2005年にはJ2の日本人選手最多得点を記録。引退後は子供たちを対象としたサッカースクールを設立し指導にあたっている。都並は「プレーを見せるだけでなく、言葉で伝えることで明らかに選手は変わってきている」と手応えを感じている様子。

そんな長谷川がストライカー育成に必要な3つのポイント「引き出しを増やす」「駆け引きを制する」「ゴールへの意志」を紹介。長谷川は「練習で意識することは大事だが、意識する前に大事なのが知識。どうしたら正確にできるか知識を蓄え、それを意識し、無意識に動けるようにトレーニングを積んでいく。これを整理することがストライカーコーチとして大事」だと話した。大黒も、イタリアで学んだFWの動き方には衝撃を受けたと明かし、「プロになってから知ったが、それを15歳~17歳で知るのとでは全く違う」とコメント。感覚やイメージではなく、どのようにプレーするのかを言語化して示すことで、引き出しが増えると話した。

そして、ゴールシーンを分析すると、データ的にもワンタッチゴールが世界的に多く、いかにマークを外してゴールにたどり着けるかが鍵。そのためにボールを受ける際の「駆け引き」が大事になっていくという。佐藤は「どの位置でシュートを打てているかデータを抽出してイメージすることが大切」と語り、自身が得意なゾーンへ行くために、ボールを持っている選手とストライカーがトレーニングで擦り合わせて、その成功体験を積み重ねイメージを共有することで、試合で結果を残せるようになると話した。

3つ目のポイントとなる「ゴールへの意志」。長谷川は「日本人ならではの慎重さを捨てるべき。ボールを大切にしてシュートを打たないのではなく、躊躇なくゴール前で足を振ることが大事」と言って、シュートを打って良いという雰囲気や環境作りをすることの重要性を説いた。佐藤も「海外の選手の方がミスを気にしない印象」と語り、「自分もシュートミスやゴールを奪えなかったときは、そのミスに対してダメージを受けていた。海外でプレーしている選手の多くは何回も何回もチャレンジしてゴールを奪う。そこの精神的な違いもある」と語り、メンタリティを変えるためにも環境の改善は必要なようだ。

さらに佐藤は、ポジション争いから来る危機感も成長を促したと現役時代を振り返った。Jリーグでは、助っ人の外国籍選手が補強されやすいFWのポジション。「生き残るためには点を取り続けなければならない」と考え、例えゴールしたとしても、もし相手ディフェンスが自分を上回る動きをしていたら、どうするべきなのかをシミュレーションしていたと明かし、どれだけ自分の中で引き出しを多く持てるかを考え続けたという。

去年12月、U-14ストライカーキャンプで日本代表の森保一監督は佐藤の言葉を用いて激励。「ただシュートを打って入ったとか入らなかったということで練習を終わらせている。何で決められたのか、何で決められなかったのかというのを、一つ一つ分析することをしないから、結局は試合の中で活かせない、と言っていた。自分が成功するために、分析能力を持ちながらやってほしい」と言って、選手たちにやるだけでなく考えることの大切さを伝えた。

最後に佐藤は「上手い選手はたくさんボール触りたいので、ストライカーではなく2列目のポジションでやる選手が増えている印象がある。よりゴール前で得点を奪うことに向き合って勝負し続ける、生粋のストライカーを育てていかなければいけない。逆にその中で競争していけば、活躍できるストライカーが生まれてくると思う」と提言した。

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