女子サッカー界のパイオニア・本田美登里の「6つのルール」

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本田美登里
本田美登里

静岡SSUアスレジーナの本田美登里監督が、2月13日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。現役時代は選手として活躍し、引退後は監督として女子サッカーの未来を切り拓いてきた名将の「自分ルール」に迫っていく。

現役時代、本田は皇后杯4連覇、初めて女子日本代表を設立した際には、高校2年生にしてメンバー入り。引退後は、クラブチームの監督や女子日本代表の世代別監督を歴任し、2007年には番組アナリストの福田正博と同期で女性初のS級コーチライセンスを取得した。2011年の女子ワールドカップ優勝メンバー21人のうち14人が教え子にあたる。まさに女子サッカー界のパイオニアだ。

今回、番組では6つのルールを紹介。まず1つ目が「同じことはやりたくない」。監督としてのキャリアをスタートさせたのは岡山湯郷ベル。「当時は日本サッカー協会に勤めていて、協会の人から行けと言われて“ええー?”と思ったけど、“絶対、本田さん1年で戻ってくるよ”と言われていたのが耳に入っていたので、“絶対に頑張ろう”って。皆と同じことをするのがあまり好きじゃないので、そこで自分の色を出していきたくなる」と笑いながら明かした。

そして、2つ目のルールは「とにかく前へ」。女子サッカーは男子サッカーと比べてつまらないと思われるかもしれない……。それを打破するために、得点に特化した戦術を採用。「3点取られても4点取ることを少し意識しました」と明かし、ポゼッションを上げながらゴールを目指すのではなく、まずはFWを見てゴールを目指すサッカーを志向した。「ワクワク感がすごくあって、失点もするからハラハラ感もすごくあった」と岡山湯郷ベル時代のサッカースタイルを紹介した。

3つ目は「高い目標に挑め」。実は、本田はアスレジーナと静岡産業大学サッカー部の両方の監督を務めており、両チームは大学のグラウンドで共同練習をしている。さらに、学生の上手な選手たちはなでしこリーグにも、大学のリーグにも出られる。両方の試合に出ている選手は、社会人と対戦することでクオリティの違いを体感。ある選手は「学生だけだとインカレが目標になりますが、なでしこリーグなどに出場する機会があることで幅広い目標が持てる」と話していた。このように、高いレベルを経験することで成長速度も加速。その結果、静岡産業大学は、インカレで過去最高ベスト8から準優勝へ躍進を果たした。

続く4つ目のルールは「涙はほっとけ」。選手たちに本田の印象を聞くと「厳しい」という評価が多数。本田も自分の厳しさを認識しており「男性よりも女性として女性を見るので厳しいと思う」とキッパリ。さらに「男性は試合に負けて涙する女性を見ると、優しい言葉をかけがち」と指摘すると、勝村と福田は「言ってしまう」と同意。すると本田は「女の涙がどういう意味かを理解しているので“なに泣いてるの?”と平気で言える」と語り、竹崎由佳アナウンサーも「涙が嘘ではないですが、自分でわかっているから、何も声をかけられなくていいときは正直あります」とコメント。さらに本田は、女性はある意味でずる賢く振る舞えるため「男性が女子チームの監督を長くできないと思います。選手にコントロールされてしまう」と言い、女子ワールドカップを制した佐々木則夫監督については「彼はそれをわかってやっている部分が流石だった」と話した。

5つ目は、そんな女子チームを上手く回すためのルール「1日1回は話す」。選手たちは自分を見てもらいたいという気持ちがとても強いので、人数が多くても1日1回は声をかけて「いつもあなたたちを見ているし、気にかけているというのを伝えてあげないといけない」と話した。選手たちも「厳しいだけじゃなくて、褒めるところは褒めてくれる。練習外でも優しいし、冗談も言って話しやすい監督」と語り、厳しさの裏でしっかりとしたコミュニケーションがとられていることがわかった。

そして最後は社会人リーグならではのルール「しっかり働け」。仕事をしっかりとこなし、職場で戦力になることで、会社の人たちからも「頑張ってるね」「今度応援しに行きたい」と言ってもらえると語り、「働く事の大切さを知った中で、サッカーをやれることに感謝してほしい」と話した。

実際、プロ化する女子サッカーにとって観客動員は大きな課題。2019年の平均観客数を比べるとJ1が約20700人に対してなでしこ1部は約1200人。17倍以上の差がある。この現状を打破するために、AC長野パルセイロ・レディース時代には年間50回以上も地域のイベントに参加。このようにファンやスポンサーを大事にしてきたことで、1部昇格を果たした際には平均観客数リーグ1位を記録した。

最後に本田は「オール静岡のチーム作り」という未来の夢を紹介。「すべての選手が静岡県人ということではなくて、色々なところに静岡の人が関わって、もう1回サッカー王国と胸を張って言えるようなものが女子サッカーから発信したい」と述べ、「今、静岡の高校を卒業した選手たちは、関東の大学に行ってしまい、静岡産業大学が目標となるチームになっていないので、まずは目標になるチームにしたい」とコメント。「3年後、4年後にWEリーグに手を上げられたら。地元の選手が多い、だから地元の人が応援してくれる。みんな静岡弁で“らーらー”言いながら試合を観る(笑)。そんなチームが1つくらいあっても良いと思います」と夢を語っていた。

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