森崎和幸&浩司が「心の病」に苦しむ中、森保一監督がかけた言葉

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森崎和幸、森崎浩司
森崎和幸、森崎浩司

サンフレッチェ広島の顔として20年近くもクラブを支えてきた森崎和幸と森崎浩司が、12月12日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。現役時代に「心の病」を抱えながらどのようにして乗り越えてきたのか。その経験を明かした。

森崎兄弟は現役引退後に書籍「うつ白 ~そんな自分も好きになる~」を出版。「うつ」と「告白」を合わせた造語で、和幸は「世間一般のイメージを払拭して、気軽にカミングアウトできるようにしたい」とタイトルに込めた思いを伝えた。

2015年に行われたWHOの調査によると、世界中でうつに苦しむ人は推計で約3億2200万人、日本でも約506万人にのぼる。そして「プロサッカーにおける心の健康問題の調査」(2015年 国際サッカー選手会)によると、現役選手の38%がうつや不安障害に苦しんだ経験を持つという。

森崎兄弟が苦しめられた心の病。2人の身に何が起きたのだろうか? 幼いころからプロを目指し切磋琢磨し揃ってJリーガーに。それぞれが和幸は新人王獲得、浩司は2004年のアテネ五輪出場を果たすなど、順風満帆なサッカー人生を歩んでいた。

そんな折、アテネのメンバーに選ばれなかった和幸は、翌年2005年に広島のキャプテンに就任。キャプテンへの責任感とアテネ落選の悔しさから一層練習に打ち込んでいた。しかし、実のところ2003年から不調を感じていた。「年代別代表とクラブチームを行ったり来たりをしていた。そこで日々変わる環境に対する切り替えがうまくいかなかったのだと思う。サッカーをしていても焦点が合わなくなり、睡眠にも影響するなど悪循環に陥っていった」と振り返った。十分な睡眠がとれず思考力も低下。平常心が保てなくなり、パニックでボールが蹴られなくなったこともあったという。

一方、アテネ五輪出場を果たした浩司も「A代表に入りたいという思いと、チームにも色々な選手が加入してきて、日々<体を>追い込まなければいけないと考えていた」と明かし、自分にプレッシャーをかけ続けた結果、疲れが取れないままトレーニングを重ねて<心が>追い込まれていった。

結果を残そうと焦るほど自分を追い詰めていく日々。和幸と同じように眠れなくなり、目の不調や疲労の蓄積など、悪循環は続いた。そして、2人はプレーすることが困難になり、チームに症状を告白。病院で診察を受けるとオーバートレーニング症候群だと診断。精神科の医師は「負荷に対して回復が足りない状態が続いていくと、疲労が溜まった元気のない状態になり、頭も働かないし、プレーの意欲も無くなってしまう。スタメンで出たのに5分で走れなくなったと訴える選手もいる」と病状を解説。アスリートの方がなりやすい理由の1つに「追い込む才能」をあげ「無茶をして耐える力が強いことは、裏返せばリスクになる」と話した。

更に2005年シーズンの終盤。心身の不調に加え、浩司は左足首ひ骨骨折の大怪我。全治3か月を告げられ「病院のベッドで、これで今シーズン戦わなくてすむ」と純粋に思ってしまったと告白。その後、復帰を果たすもコンディションを維持するのは困難で、出場できても途中でベンチに退くことが増えた。

そんな状態でどのようにして2人は心の病と付き合ってきたのか? 和幸は「妻が勉強して、どう僕と接したらいいとか、とにかくいつもそばにいてくれた」と明かし、前向きで献身的なサポートに支えられたという。また、チームメイトも定期的に連絡をくれたが、体調に波があって返信できないこともありプレッシャーになることも。そんな中で「返信しなくても良いよ」という一言で気が楽になることもあったという。

身近な人が心の病に苦しんでいたら、どう接するのが良いのだろうか。医師は「ミスがあまりに多くなるなど変化に気づいたら“力になるよ”ということを伝えてあげること」と相手の気持ちに寄り添うことがまずは大事だという。

その点、2人にとってはミハイロ・ペトロヴィッチ監督と森保一監督の存在も大きく、ペトロヴィッチ監督は「休みたかったらいくらでも休んでいい。ただオレはずっと待っているから」という言葉をかけられ、森保監督には「そんな自分も好きになってみたら?」と声を掛けられたという。「確かに辛いので自分のことがめちゃくちゃ嫌いになるんですよ。自分に“自分のことが好き”と言い聞かせると少し気持ちが楽になった。それは今でも残っている言葉です」と明かした。決して焦らせず、寄り添い続けてくれたことでプレッシャーからも解き放たれていった。そしてピッチに戻るとスタンドのサポーターからは盛大なチャントで受け入れられた。

森崎兄弟が心の病を抱えた経験から伝えたい事。浩司は「頑張りすぎないこと」と言い、趣味など没頭して無心になれるものを見つけることの大切さを伝えた。和幸は「僕らが何か力になれることがあればどんどん発信していきたい。ちょっと体調悪くても色んな人に打ち明けられるようになってほしい。僕らも打ち明けたことで気がとても楽になったので、そういう相手を見つけてほしい」と伝えた。

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