『チェリまほ』風間太樹監督をエスムラルダが深堀り!「恋愛や他者との向き合い方を“彼らなりのカタチ”として描いていくことを大切にしました」

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黒沢(町田啓太)と安達(赤楚衛二)
黒沢(町田啓太)と安達(赤楚衛二)

エスム:後半に向けて、楽しみが増えました! では、あらためて、各キャストの印象やエピソードをお聞かせいただけますでしょうか。まずは、主人公の赤楚さん。

安達役の赤楚衛二さん
安達役の赤楚衛二さん

風間監督:赤楚くんは、天然なんですよ(笑)。でも、それが安達を演じるうえで、いい具合に作用している部分がたくさんあって。自然体のかわいらしさがサマになっているな、と思います。第1話の撮影から、かなり無茶ぶりもしたのですが、赤楚くんはコケるお芝居がとても上手で(笑)。リアリティがあって、「本当にそういう奴なのかも?」という画を作ることができました。あと、表情がとても豊かで、目線一つで語れる役者さんだなと思います。

エスム:赤楚さん、他の作品に出ていらっしゃるときと、かなり印象が違うのですが、ふだんは安達っぽさがある方なのですか?

風間監督:不思議なもので、現場にいるとそう思ってしまいますが、それはきっと、赤楚くんのごく一部なんですよね。でも、赤楚くんが演じたからこそ、安達がとても魅力的になったのは、間違いないです。スタッフやキャストのみんなも、視聴者のみなさんも、“赤楚安達”が大好きなんじゃないかなと。

エスム:あの仔犬感はすごい!

風間監督:事前に、「赤楚くんは、上目遣いがとっても素敵だ」と聞いていたので、それは随所に入れています(笑)。実際撮っていても、すごくかわいかったですね。

エスム:まさにこの表情! というシーンがたくさんありましたよね。一方の町田さんはいかがですか?

黒沢役の町田啓太さん
黒沢役の町田啓太さん

風間監督:町田さんは、丁寧で努力家で、探求心がすごい。「ここまででいい」というのが、町田さんの中にまったくない気がします。「もっと良くするにはどうしたらいいか」を常に考えている人なんじゃないかな。もちろん、ほかのみなさんもそうだと思いますが、町田さんには特にそれを感じたし、黒沢の描き方については、2人でよく話し合いました。「黒沢は、本当はガツガツいきたいけど、安達の許容なしには前に進めない人だよね」とか、「自分たちなりに咀嚼しながら、愛される黒沢をつくっていきたいね」とか。コミカルなシーンのレベルの振り切り方も相談し合ったし、「今、演じた黒沢は、監督的には大丈夫か?」と、よく訊かれました。そういった向き合いが良い方向に作用していると思います。

それから、僕は町田さんに「黒沢に関しては、完璧すぎる人として撮るよりも、安達への想いから生じる情けない表情や、ちょっとくだけたような表情を撮っていきたい」と話していたんですが、後半では、そういった本心から出てきた素直な表情が、どんどん見えてきます。すごくいいお芝居をしてくださっていますので、そこはぜひ注意して見ていただきたいですね。「完璧じゃない黒沢」がポイントです!(笑)

エスム:そういえば町田さん、以前他のインタビューで、“もし誰かの心が読めたら誰の心が読みたいですか?”という質問に対して、“監督の心が読みたい”とおっしゃっていましたよ(笑)。

風間監督:えー! 僕なら怖くて聞けない(笑)。

エスム:監督が感じていらっしゃったとおり、町田さんの役作りへの高い志の表れでもあるのかな、と思いました。では、安達の親友で小説家・柘植将人役の浅香航大さんはいかがですか?

安達(赤楚)と柘植将人(浅香航大)
安達(赤楚)と柘植将人(浅香航大)

風間監督:浅香くんとは、映画『チア男子!!』でもご一緒したんですが、やはり彼も、今作ならではの味を出そうと、いろいろなことを考えて現場に来てくれていました。僕、柘植が発する心の声はとっても魅力的だと思っていて。浅香くんには、早い段階で「柘植は自分の理解できない事象一つひとつに対して、納得できるまで考え言葉にしていく人だ」と伝えました。第2話の、居酒屋で安達と対峙するシーンでは、「う~ん」と考えている仕草一つとっても、かなり僕好みのキャラクターになっています(笑)。あと、柘植に関しては、「今はすごくスランプ状態で、思い悩みながら小説を書こうとしているけれど、まったく書けない」という裏設定も作っています。だから、第2話に出てくる柘植の部屋で、背景の本棚に並ぶ本たちは、彼を心理的に圧迫する役割を果たしているんです(笑)。

エスム:あの本棚、かなり気になっていました。そういう意味が込められていたんですね。

風間監督:美術さんには、“柘植が、その本の海の中で、今ちょっとおぼれそうになっている”という感じにしたいとお願いしました。思ったことやわからないことを、思わず口に出してしまうところとか、素直すぎる心の声とか、黒沢とはまた違ったコミカルさを、浅香くんが器用に演じてくれて。キャスティングがとてもよかったと思います。あそこまで大胆にやって、「面白いな」とみなさんに思ってもらえるのはすごいですね。

あと、シナリオ上だと「キュン」とか「グワァー」みたいなことが書いてあるんですが、文字で見た段階では、僕も「どう演じてもらったらいいんだろう?」「これを大げさにやったら、見ている側が圧を感じてしまうかな」と不安でした(笑)。でも、いざ浅香くんに演じてもらったら、とても面白くて、「キャラクターの中で生きた叫びになっているな」「これは、柘植もイケるな」と思いました。

湊役のゆうたろうさんと猫の“うどん”
湊役のゆうたろうさんと猫の“うどん”

エスム:湊役のゆうたろうさんはいかがですか?

風間監督:僕の監督回では、湊の登場シーンは少ないのですが、だからこそ多くを話し合いました。湊は、ただ柘植に思いを馳せるだけの存在ではなく、ダンスで芽が出ないことについても均等に悩んでいて、ヒリヒリしている状態を自分の中に持っていてほしいとか、ダンスの話をするときや踊っているときに、ただカッコいい、可愛い、というだけでなく、その葛藤の背景が見えるようなお芝居をしてほしい、と伝えました。

第8話(11月26日放送)で、湊が自分のプライドみたいなものと向き合うシーンがあります。そのときのお芝居は、玄関先での柘植とのコミカルなシーンとはまったく違って、湊の新たな一面が見えるので、ぜひ注目してほしいですね。あと、ゆうたろうくん、金髪がとても似合っていると思います。

エスム:どのキャラクターも本当に愛しいですね。

風間監督:このドラマの登場人物は、自分の好きなもの、自分の世界をちゃんと持った人たちがそろっていると思うんですよ。

安達は文具や漫画が好きだったり、黒沢も安達と同じ漫画が好きだったり。藤崎さんは、恋愛には興味がないけど、自分の好きなものをたくさん持っていて、安達の先輩・浦部(鈴之助)は奥さんのことをとても愛している。そういったバックボーン(裏設定)をしっかり話し合ってから現場に入っているので、キャラクターがきちんと生きているのかなと思います。そして、自分の軸を持っている人たちと向き合うことで、いろいろなエッセンスをもらって、安達の世界が広がっていく、鮮やかになっていく感じも、より深く出てきているんじゃないか、とも思います。

エスム:恋愛の進展だけでなく、安達が成長していくさまを見るのも、視聴者としてはわくわくするし、感動します。ところで、YouTubeなどには、海外の方がチェリまほを楽しんでいる動画などもアップされていますが、こういったファン層の広がりについては、どう感じていらっしゃいますか?

風間監督:素直に嬉しいですね。初回が放送されるまでは、受け入れてもらえるかどうかわからないという不安もあったので、そこから瞬く間に広まって、今では海外の方からも反応をいただけているという状況に驚いています。俳優陣にとっても、自信につながるのではないでしょうか。これから後半戦に入りますが、内容的にもさらに盛り上がっていきますし、みなさんに楽しんでいただけている実感も十分に得られているので、編集作業に、より気合いが入りますね(笑)。

エスム:このドラマは監督にとって、どのような作品になりそうですか?

風間監督:初めての連続ドラマということもあって、発見も多かったですし、キャスト・スタッフと向き合った時間には充実感がありました。対話を重ねながら、一つひとつ手作りした温もりがちゃんと詰まった作品になると思っていますし、たくさんの方に愛して頂けている現状も含めて、とても大切な作品になると確信しています。

また、チェリまほには、一種の能力モノで、ストーリーもやや特殊で……という難しさがありましたが、その中で自分らしさも出せたと思いますし、さまざまなジャンルに挑戦できる自信がつきました。今後は、オリジナル作品にも挑戦していきたいですね。

エスム:監督のオリジナル作品、とても楽しみです! では、最後に、後半に向けての見どころをお願いします!

風間監督:前半、安達は能力によって聞こえてくる他者の本心に向き合うことで、たくさんの発見と、理解を深め、少しずつ自信を獲得してきました。後半は、その能力に頼らず、人と向き合うには? という課題と、自己肯定への道のりがより色濃く描かれます。また、黒沢は黒沢で、本当の気持ちを、心の声ではなく、実際の声として出していくようになりますが、そうした「言葉」に対面した時、安達がどう動くかが、大きな見どころになると思います。彼らなりの心の寄り添いを、ぜひ引き続きご覧頂けたら幸いです。

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