風間太樹監督とエスムラルダ

エスム:画作りにもこだわっていらっしゃいますよね。全体的にフィルムっぽい質感で、照明なども、キャストが美しく見えるように計算されているなと感じます。

風間監督:主人公が“能力者”であるという非現実的な設定を、できるだけ日常になじませたいという思いがあったのですが、だからといって、生っぽく撮るのは違うかな、と。撮影や美術など、緻密に作り込んだ世界の中で、求心力のある画作りを目指しました。仰って頂いた質感・色合いは、撮影が始まる前に作っていて、現場中は皆んなが共有出来るようにしていました。ノスタルジックでありつつ、ただ柔らかいだけではない力強さがあるトーン。キャストとの相性もとても良くて、その美しさに唸るシーンが何度もありました。また、個人的には程よい湿度をまとった画が好みなのですが、第1話のマフラー巻きのシーンではそれに成功しています。ド派手ではないけど魅力的な画になっていると思いますし、あたたかい印象をもっていただけていたら嬉しいですね。

エスム:全体の色調があたたかくて、少しずつ寒くなっていくこれからの季節にピッタリだな、その辺も、きっとみなさんこだわって作りこまれているんだろうな、と思いました。

風間監督:トーンだけではなく、動きや、切り取り方ひとつにしても、終始作品を彩っていると思います。スケジュール的にタイトな現場で、理想を継続させるのは難しかったと思いますが、撮影の飯田さん、照明の谷本さんをはじめスタッフが粘り強く頑張ってくださいました。

エスム:ほかに、監督が特に画作りにこだわったシーンはありますか?

風間監督:第7話で、視点ががらりと変わり、黒沢の語りで「安達に恋をしたきっかけ」「歩み寄り始めたきっかけ」が描かれるんです。そのきっかけのシーンはとても重要なので、画の印象にもこだわりたくて。夜の公園で、安達が黒沢を介抱しながら、黒沢のコンプレックスを肯定してくれるシーン。その時から、黒沢の気持ちが安達に向かっていき、黒沢の世界が輝き出したという表現をラストカットで示しました。それまで見せなかった公園の風景を思いきり引いて写し出し、池の水面にライトが反射してキラキラ輝いている……心情の表れと、黒沢の恋が始まったんだ、という心の鮮やかさを印象的に伝えるために、風景となじませながら、こだわって撮りましたね。

第7話のシーンより 安達と黒沢
第7話のシーンより 安達と黒沢

また、「冴えない同期の1人」と思っていた頃、夜の公園、安達の告白からのハグ、そしてその後の帰り道と、2人の距離を意識した2ショットにもこだわっています。

ついにハグするまで近づいたのに、帰り道では、2人がまたちょっと距離を置いて歩いている。それがこの作品のオリジナリティだと思っているのですが、お互いに気持ちを伝え合ったからと言って、そこがゴールではなく、一気に心が縮まるわけでもない。今後、2人なりにどうやって心を通わせていくのか、という余白を残しながらの帰り道なんです。そのあたりの距離感にも注目していただけたら、と思います。

構図の話をする機会なんて、あまりないんですが(笑)、第7話は、2人の距離が近づいていく過程の表現を随所に入れているので、ぜひ見返してみてください!

エスム:もし間に合えばTVerで(笑)。今のお話にもありましたが、チェリまほは全体的に、キャラクターたちの心象風景と映像が心地よくリンクしていて、そこも引き込まれる理由の一つなのかな、と思います。

風間監督:映像としての遊びも随所に入れていきたいという思いはありますね。ただ綺麗に流れていくのではなく、何かひっかかるものがあったり、「この表現にはどういう意味があるんだろう」とみなさんに考えてもらえたほうが面白いと思いますし。今までに散りばめてきた伏線も、この先ちゃんと回収していくので、そのあたりの面白みも感じていただけたらいいな、と思っています。

この記事のライター

エスムラルダ

1994年よりドラァグクイーンとしての活動を開始し、各種イベント、メディア等に出演。2002年8月、東京都の『ヘブンアーティスト』ライセンスを取得。ライター、脚本家としても活動中。2018年、及川眠子・中崎英也のプロデュースにより、ドラァグクイーンディーヴァユニット「八方不美人」を結成し、CDデビューを果たす。

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